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四話
兄ちゃんボンバー!
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ルーンの剣技は見事なものであった。襲いかかってくる騎士を相手にしながら、しっかりとオーズを守り近付けないようにしている。
オーズは何も出来ないのでその戦闘を観戦に徹していた。ルーンの剣技を見るたびに自分と差が明らかにあるのが分かる。
――そりゃ皆んな怒るよな
オーズは特例で護衛騎士になった。しかしこの選抜試験に挑む者達の多くは幼少より戦闘訓練をして、己の体に鍛え技を磨いてきた。ぽっと出のオーズがその事情を無視して護衛騎士に抜擢されれば反感を買うのは無理もない。
オーズがそんな事を考えていると戦闘の決着がついた。ルーンは相手の騎士を転ばせて試験官に一撃与えたのだ。これが実戦ならフレイルは死んだ事になる。護衛騎士失格は仕方ない結果である。
敗れた騎士は試験官に連れられて森の外に向かった。ソニアの試験終了の笛の音は聞こえてこないのでまだまだ生き残りがいる筈である。
ルーンは周囲を警戒している。今の戦闘で誰かがルーン達に気付いたかもしれないからだ。
耳を澄ますと草をかき分ける音が聞こえてくる。ルーンは音をする方向を向き剣と盾を構えた。
木々の合間から出てきたのは一人だけである。それは騎士の格好をしていない、黒いローブの男であった。
「誰だ!この敷地は騎士団のものだぞ!直ぐに立ち去れ!」
ルーンは大声を上げて警告した。しかし男はニタニタ笑っている。オーズは直ぐに非常事態用の笛を取り出して鳴らした。甲高い笛の音が森に響き渡る。
「何をしてる!男一人に笛を吹いて!」
「あれはただの男じゃない!」
オーズは叫ぶと直ぐに土下座の態勢になった。
「オーズの言う通りだ嬢ちゃん。もし油断したまま俺が近付いてたら危なかったぜ?」
男はニタニタ笑いながら話しかけてきた。
「お前は誰だ!名を名乗れ!」
ルーンは剣を男に向けながら叫んだ。
「俺の名前はジュリアス・ジェニアスJr.だ。邪竜教の幹部の一人だ。まあ最近どんどん幹部は捕まっちまって減ってるがな」
ジュリアスは剣を向けられているが全く動じない。ルーンは話しが終わるや否やジュリアスに斬りかかった。
ジュリアスの肩から振り下ろされた剣は体を切り裂いた。
「ぐは!」
「油断をしているのどっちだ」
オーズはルーンの行動の速さに驚いた。全く人を斬るのを躊躇わない。これはオーズには出来ない事である。
しかし斬られて地面に倒れ込んだジュリアスは消えてしまった。そして木の影から斬られたはずのジュリアスが現れた。
「怖い怖い」
そんな事を言ってるがその表情は余裕そのものだ。
「何かのスキルか?」
「そうだよお嬢ちゃん」
その声は目の前にいるジュリアスからではなく真逆の方向から聞こえてきた。そちらを見るとジュリアスが立っている。この場に二人のジュリアスがいるではないか。
「二人もいる!」
オーズは土下座をしながら驚いた。
「俺のスキルは分身。こうやって俺を幾らでも増やせるんだよ。それと助けは期待しない方がいい」
ジュリアスが喋り終わると森の向こうから笛の音が聞こえた。これは試験終了の笛の音ではなく非常事態が起きた時に鳴らされるソニアの笛である。
「俺の分身はここだけじゃなく、お前らのお姫様の所にも行ってんだよ」
その言葉を聞いてオーズは動揺した。
――どうする!でもここで土下座を止めたらまずい。向こうの状況が分からない以上土下座を止めるの危険だ。だとしたらルーンがジュリアス・ジェニアスJr.を倒さないといけない。そんなこと出来るのか?
オーズは答えが出ないまま無意味な問答をするばかりである。
ルーンはジュリアスの一人を斬った。全く迷いが無い。
「こいつらを倒して直ぐに姫様の下に戻ります!」
「させるわけないよね」
ジュリアスの身体が黒いオーラに包まれた。そしていつもの如く化け物の姿になって現れた。
「これが噂の!」
それでもルーンは果敢にジュリアスに斬りかかる。しかし化け物に変身したジュリアスの体に刃は通らない。
「無駄無駄!お嬢ちゃんの力で俺には勝てねーよ!そして!」
化け物になったジュリアスは二人に分身した。
「この状況でも分身が出来るんだよ!」
ルーンは二人のジュリアスに挟まれる形になってしまった。
「貴方も戦いなさい!何を命乞いしてるんですか!」
ルーンはオーズを見て怒鳴ったがオーズは土下座を止めることができない。
「おや?知らないのか?そいつのスキルを?」
「スキル?」
「こいつはよ、なんでか知らねーけどよ、土下座をしてるとお姫様が傷付かなくなるんだよ。だから護衛騎士になってんだよ。そして向こうの状況が分からない以上こいつは土下座を止めることが出来ねーんだよ」
「そんなスキルが……」
「だから俺達の相手はお嬢ちゃん一人で頑張りな。俺はサマンサ・マサマーやドナルドル・ルドルドルフと違って手は抜かねーぜ」
そう言うとジュリアスは二人同時にルーンに巨大な爪を振り下ろした。ルーンは間一髪避けたが直ぐに追撃が来る。剣と盾で何とか攻撃を凌いでいるがあまりにも劣勢である。ルーンの勝機は全くと言っていいほど無かった。
一方的な攻防は直ぐに決着がついた。ルーンの剣が折れ、巨大な爪がルーンを引き裂いた。
しかしルーンは無傷であった。オーズの土下座スキルは新たに妹となったルーンにも適用されていた。
「あ?なんで喰らわねーんだ?まさかまたお前か?」
ジュリアスはオーズを睨みつけた。
「まあいいや、それならお前ら二人を攫えばいいだけの話しだ」
「何で俺たちを攫おうとする!」
オーズは土下座しながら質問をした。時間稼ぎでもあるが少しでも相手から情報が欲しかった。
「言う訳ないだろ」
ジュリアスは完全に死んだと思っていたが生きており状況が飲み込めないルーンを掴んだ。
「じゃあ二人を抱えてさっさと退散するか」
「離せ!」
「嫌だね、そんなに離して欲しければお嬢ちゃんが持つスキルでも使えばいいだろ?使えるならな?」
「そうだ!ルーンちゃんスキルを使うんだ!どうにかなるかもしれない!」
オーズはルーンのスキルについて何も知らなかったが状況を打破するために懇願した。
「おっと今度はお前が何も知らないか?仲間同士の情報共有は大切だぜ?」
「知らないって何を?」
「じゃあ教えてやるよ。さっきの質問を答えられなかったお詫びにな。お嬢ちゃんのスキルは爆破。その手の周りで爆発を引き起こせる強力なスキルだ」
「なら今こそ使うんだ!」
「それが出来ないんだよなー。お嬢ちゃんはスキルを暴発させて火傷をしちまったらしい。それ以来怖くてスキルが使えねーんだとよ。馬鹿だよな自分のスキルで傷付くなんて」
「そんな事が……」
ルーンは何も言わないが悔しそうに噛み締めている。
「こんな小さなお嬢ちゃんが騎士になれたのも強力なスキルありきなのに、それを使えないなんてよ。スキルが使えないお嬢ちゃんに何の価値もないのによ!」
「ふざけるな!」
ジュリアスの言葉にオーズは激昂した。
「ルーンちゃんは強い!さっきだって一人で騎士を相手にしてた!スキルが使えなくたって立派な騎士だ!お前こそスキルと邪竜の力に頼っているだけじゃないか!お前にルーンちゃんを馬鹿にする資格はない!」
オーズは思いの丈を全てジュリアスにぶつけた。
「ルーンちゃん!こんな奴の言う事なんて聞く必要はないんだ!今のルーンちゃんは誰にも傷付けることは出来ない!勿論自分自身もだ!大丈夫!俺を信じて!スキルを使って!そしてそのジュルジュルJr.をぶっ飛ばしてやれ!」
「ジュリアス・ジェニアスJr.だ!そして人を説教する時は土下座をやめてから言え!」
ルーンを捕まえていないジュリアスがオーズの下へ来ると何度もオーズを踏みつけた。しかしオーズは全く意に介さない。
「大丈夫!ほら全然痛くないから!だから安心して!こんな奴にルーンちゃんは負けちゃいけないんだ!」
「うるせえ!」
ジュリアスは何度も何度もオーズを踏みつけるが全く効いていない。
「だから効かないってバーカ!バーカ!」
「土下座しか出来ない能無しが!」
ジュリアスは腕を大きく振りかぶった。すると背後からとてつもない爆発音が聞こえ、爆風がジュリアスを襲った。
振り返ると爆発による土煙が舞っており、どうなっているか分からなかった。そして徐々に土煙が晴れるとそこには手から煙が上がって出ているルーンと腕を吹き飛ばされたジュリアスがいた。
「な!爆発させただと!」
生き残っているジュリアスは明らかに動揺している。
「その人はレッドグレイブ家の人間だ。その人を馬鹿にする事は許さない」
ルーンの動きは素早かった。剣と盾を置き素手になった事で動きが格段に速くなっていた。
その動きにジュリアスは反応出来ていない。一気に距離を詰められるとルーンは右手をジュリアスに伸ばした。
ジュリアスの目の前で爆発が起きた。爆発によりジュリアスの身体は吹き飛ばされて、ゴロゴロと地面に転がっていく。
ジュリアスはヨロヨロと立ち上がるとニヤリと笑った。
「まあいいさ、お姫様の所にも俺はいるからな。どうせお前はその態勢から動けないんだろ?ひひっ」
そう言うとジュリアスの体は消えてしまった。
ジュリアスの言い分は正しかった。オーズは直ぐにフレイルの下へ行きたかったが、向こうの状況が分からない為土下座をやめられない。そして土下座をしていると動けない。
オーズが悩んでいるとルーンが口を開いた。
「一つだけ方法があります」
どんな方法か分からないがオーズはそれに賭けるしかなかった。
森の外では戦いが続いていた。化け物となったジュリアスの分身がフレイル達を襲っていたのだ。フレイルは自慢のハンマーを持ってきておらず戦いに参加出来ていない。他の騎士達が必死になって戦っているが化け物となったジュリアス達に決定打を与える事が出来ず、ジリジリと劣勢になっていた。
「フレイル様!お逃げ下さい!」
「逃げるって言ったって!」
周りの騎士は必死にフレイルを逃がそうとするがジュリアス達に囲まれてどうにも出来ない。
ソニアもこの危機的状況を打開するにはどうするべきか考えていた。
――どうする……このままでは危ない。倒しても倒しても分身してくる。手数が圧倒的に足りない……幸いにもオーズは土下座をしてくれてる様だが、姿が見えない限り安心は出来ない
ソニアは戦いながらも必死に考えていた。
その時森の中から爆発音が聞こえた。
「何ですかこの音は?」
アーティは怯えながら森の方を見た。この場にいる全員が何の音か分からなかった。ただ一人ソニアを除いては。
「これはルーンのスキルです!姫様!もしかしたら勝機があるかもしれません!」
「本当なのね!」
二人は喜び、目を合わせると爆発音以外の音も聞こえてきた。何処か遠くからまるで何かの叫び声の様なものだ。爆発音は徐々にこちらに近付いてくるのが分かる。何かを爆破させながらこちらに向かって来ている。そして爆発が起きるたびに何者かの叫び声が大きくなったり小さくなったりと響き渡る。
「何の音だ?それより誰の声だ?」
ジュリアス達も森の方を見た。よく見ると木のてっぺんの方で何かが爆発と共に上がって、そして落下しているのが見えた。それはどんどんとこちらに近付いて来ている。
その正体が何なのか一番早く気付いたのはフレイルであった。
「兄ちゃん!」
そうオーズが土下座の態勢で爆破されて宙を飛び、こちらに向かっているのだ。
近くで爆発音がした。すると、「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」オーズの悲鳴がこだまする。そしてオーズは森の上から現れて、森の中に落ちていく。そして爆発すると悲鳴と共にオーズが木々の上から飛び出して落ちていく。その繰り返しである。
誰もが、そして敵であるジュリアスでさえその光景に顔が引き攣っている。およそ人間にやっていい移動方法ではない。拷問である。
呆然とする集団で唯一フレイルだけがアーティに指示を出した。
「アーティ!次にオーズが見えたら直ぐに引き寄せて!」
「あっ!はい!」
爆破されている兄を呆然と見ていたアーティが返事をした。そして爆発と共にオーズが叫びながら飛び上がって来た。
「お兄ちゃん!来て!」
すると煙を纏いながらオーズがアーティの下へ飛んできた。その顔は恐怖でやつれていた。
飛んでくるオーズをフレイルは空中で掴み、振り回し、そして構えた。武器を手にしたフレイルの顔は自信に満ち溢れていた。無敵な体、壊れない武器、怖いものなしである。
「よく戻ってきたわね!褒めて遣わす」
「どうもです……」
オーズは疲れ果てていた。それでも土下座はやめない。
森の中からルーンが走りながら出て来た。
「姫様!ソニア姉様!ご無事でしたか!」
「ルーン!加勢を頼む!」
「はい!姉様!」
そこからは地獄絵図である。オーズを振り回すフレイルと両手を爆発させて吹き飛ばすルーンがジュリアス達相手に暴れ回った。
凄まじい爆発音で声が掻き消されるのをいい事にフレイルは好き勝手に叫びながらオーズを振り回す。
「ほら!ほら!ほら!分身してみろよ!何度だって叩き潰してやるからよ!モグラ叩きみたいで痛快だよ!ジュリアスさんよー!ほら、ほらペース落ちてるぞ!本気出せよ!さっきまでの威勢は何処に行ったんだ?」
唯一フレイルの声が届くオーズは何も聞こえないふりをしていた。
ルーンはルーンで久しぶりに使う爆発スキルをこれでもかと堪能していた。
「気持ちいいー!やっぱり縮こまってるのは性に合わないわ!敵は爆発させて倒すのが一番!どんどんジャンジャン分身してきな!」
こちらもソニアは聞こえないふりをしていた。我が妹ながら恥ずかしかったのだ。
先程まで必死に戦っていた騎士達もこの暴れ回る二人の中に割って入ることは出来ず、周囲で呆然としているだけである。
一人また一人とジュリアスが虐殺され、そしてついに最後の一人が倒されて消えてしまった。
「これでお終い?本体は?」
「どうやら逃げた様です」
フレイルとルーンは不満気であった。フレイルはようやくオーズを地面に置いた。オーズはフラフラになりながら立ち上がった。
「ルーン!」
「はい!何でしょう!姫様!」
「此度の活躍は見事でした。悪しき邪竜教徒を撃退したその力、私の為に使ってくれますか?」
明らかに護衛騎士の誘いである。選抜試験はジュリアスの襲撃で有耶無耶になったが先程の活躍を見ればルーンが相応しいの明らかであった。
「はい!この身朽ち果てるその日までフレイル様に仕えることを誓います」
ルーンは膝をつき忠誠を誓った。誰からも文句は出ない。と言うよりあの虐殺を目の当たりにして自分こそが相応しいなど言えるはず無く、巻き込まれるのも御免であった。
フレイルとルーンの間だけにいい感じの雰囲気が漂っていた。ソニアも頭を抱えて何も言えなかった。
ルーンが正式に護衛騎士になった事により改めてマルテを交えてお茶会をする事になった。
マルテは嬉しそうにルーンについて喋っている。
「本当にルーンちゃんが護衛騎士になってくれて嬉しいわ。それに前みたいに明るくなったし」
「はい!今まで心配をかけましたマルテお姉様!」
ルーンは初めてのお茶会と違い緊張も解けて、明るく話してくれている。
「それもこれもオーズさんのおかげです」
「いえ、自分は土下座をしていただけです」
「それでもです、爆発で火傷をしてからルーンちゃんは塞ぎ込んじゃって、姉として本当に心配だったんです。オーズさんが自信を取り戻してくれたんです」
マルテは心からオーズに感謝した。
「えっと、ソニア姉様から事情を全部聴きました。これまでの失礼な態度申し訳ありませんでした」
「いいんだよ、怪しかったのは本当のことだし。それに俺もレッドグレイブの人間になったからそんな他人行儀にならなくても」
オーズは人から頭を下げられ事が苦手であり、必死にルーンを宥めている。
「ルーンのスキルは強力です。私としても大変心強い護衛騎士が側にいてくれて嬉しい限りです」
フレイルもルーンの護衛騎士就任を喜んでいる。
「はい!このスキルがあれば姫様に迫る不届ものを一人残らず爆破させる所存であります!見て下さいこの爆発を!」
ルーンは手のひらで爆発させた。しかし今はオーズは土下座をしていないのでルーンの爆発は自らの手を焼いた。ルーンは椅子から転げ落ちてのたうちまわった。
「あっつい!あっつい!土下座!はやく土下座!」
オーズは慌ててその場で土下座をした。土下座によりルーンの痛みは引いて落ち着きを取り戻した。
「あらあら、ルーンちゃんったら、はしゃいじゃって」
マルテは微笑んでいるがソニアは呆れている。
ソニアはオーズに近付くとそっと小声で語りかけた。
「すまない、オーズ。ルーンは……その、なんだ、少しドジなのだ。だから……何と言うか、これからもよろしく頼む。本当に頼む」
「え?ドジ?ドジが爆発させてんの?大丈夫それ?」
「いや、大丈夫じゃなかったからスキルを使わない様にしてたんだ」
オーズはルーンが爆発で火傷したのも、もしかしてドジなのだろうかと思ってしまった。すると暗く重いトラウマも、ただのドジっ子エピソードに思えてきた。
向こうで涙目になりながら己の手を見ているルーンを眺めオーズは確信した。
――この子、俺がいないとダメなんじゃ……守らなきゃ
オーズはルーンも守る事を決意した。ここに来てオーズはおっちょこちょいの義妹ができたのだ。
オーズは何も出来ないのでその戦闘を観戦に徹していた。ルーンの剣技を見るたびに自分と差が明らかにあるのが分かる。
――そりゃ皆んな怒るよな
オーズは特例で護衛騎士になった。しかしこの選抜試験に挑む者達の多くは幼少より戦闘訓練をして、己の体に鍛え技を磨いてきた。ぽっと出のオーズがその事情を無視して護衛騎士に抜擢されれば反感を買うのは無理もない。
オーズがそんな事を考えていると戦闘の決着がついた。ルーンは相手の騎士を転ばせて試験官に一撃与えたのだ。これが実戦ならフレイルは死んだ事になる。護衛騎士失格は仕方ない結果である。
敗れた騎士は試験官に連れられて森の外に向かった。ソニアの試験終了の笛の音は聞こえてこないのでまだまだ生き残りがいる筈である。
ルーンは周囲を警戒している。今の戦闘で誰かがルーン達に気付いたかもしれないからだ。
耳を澄ますと草をかき分ける音が聞こえてくる。ルーンは音をする方向を向き剣と盾を構えた。
木々の合間から出てきたのは一人だけである。それは騎士の格好をしていない、黒いローブの男であった。
「誰だ!この敷地は騎士団のものだぞ!直ぐに立ち去れ!」
ルーンは大声を上げて警告した。しかし男はニタニタ笑っている。オーズは直ぐに非常事態用の笛を取り出して鳴らした。甲高い笛の音が森に響き渡る。
「何をしてる!男一人に笛を吹いて!」
「あれはただの男じゃない!」
オーズは叫ぶと直ぐに土下座の態勢になった。
「オーズの言う通りだ嬢ちゃん。もし油断したまま俺が近付いてたら危なかったぜ?」
男はニタニタ笑いながら話しかけてきた。
「お前は誰だ!名を名乗れ!」
ルーンは剣を男に向けながら叫んだ。
「俺の名前はジュリアス・ジェニアスJr.だ。邪竜教の幹部の一人だ。まあ最近どんどん幹部は捕まっちまって減ってるがな」
ジュリアスは剣を向けられているが全く動じない。ルーンは話しが終わるや否やジュリアスに斬りかかった。
ジュリアスの肩から振り下ろされた剣は体を切り裂いた。
「ぐは!」
「油断をしているのどっちだ」
オーズはルーンの行動の速さに驚いた。全く人を斬るのを躊躇わない。これはオーズには出来ない事である。
しかし斬られて地面に倒れ込んだジュリアスは消えてしまった。そして木の影から斬られたはずのジュリアスが現れた。
「怖い怖い」
そんな事を言ってるがその表情は余裕そのものだ。
「何かのスキルか?」
「そうだよお嬢ちゃん」
その声は目の前にいるジュリアスからではなく真逆の方向から聞こえてきた。そちらを見るとジュリアスが立っている。この場に二人のジュリアスがいるではないか。
「二人もいる!」
オーズは土下座をしながら驚いた。
「俺のスキルは分身。こうやって俺を幾らでも増やせるんだよ。それと助けは期待しない方がいい」
ジュリアスが喋り終わると森の向こうから笛の音が聞こえた。これは試験終了の笛の音ではなく非常事態が起きた時に鳴らされるソニアの笛である。
「俺の分身はここだけじゃなく、お前らのお姫様の所にも行ってんだよ」
その言葉を聞いてオーズは動揺した。
――どうする!でもここで土下座を止めたらまずい。向こうの状況が分からない以上土下座を止めるの危険だ。だとしたらルーンがジュリアス・ジェニアスJr.を倒さないといけない。そんなこと出来るのか?
オーズは答えが出ないまま無意味な問答をするばかりである。
ルーンはジュリアスの一人を斬った。全く迷いが無い。
「こいつらを倒して直ぐに姫様の下に戻ります!」
「させるわけないよね」
ジュリアスの身体が黒いオーラに包まれた。そしていつもの如く化け物の姿になって現れた。
「これが噂の!」
それでもルーンは果敢にジュリアスに斬りかかる。しかし化け物に変身したジュリアスの体に刃は通らない。
「無駄無駄!お嬢ちゃんの力で俺には勝てねーよ!そして!」
化け物になったジュリアスは二人に分身した。
「この状況でも分身が出来るんだよ!」
ルーンは二人のジュリアスに挟まれる形になってしまった。
「貴方も戦いなさい!何を命乞いしてるんですか!」
ルーンはオーズを見て怒鳴ったがオーズは土下座を止めることができない。
「おや?知らないのか?そいつのスキルを?」
「スキル?」
「こいつはよ、なんでか知らねーけどよ、土下座をしてるとお姫様が傷付かなくなるんだよ。だから護衛騎士になってんだよ。そして向こうの状況が分からない以上こいつは土下座を止めることが出来ねーんだよ」
「そんなスキルが……」
「だから俺達の相手はお嬢ちゃん一人で頑張りな。俺はサマンサ・マサマーやドナルドル・ルドルドルフと違って手は抜かねーぜ」
そう言うとジュリアスは二人同時にルーンに巨大な爪を振り下ろした。ルーンは間一髪避けたが直ぐに追撃が来る。剣と盾で何とか攻撃を凌いでいるがあまりにも劣勢である。ルーンの勝機は全くと言っていいほど無かった。
一方的な攻防は直ぐに決着がついた。ルーンの剣が折れ、巨大な爪がルーンを引き裂いた。
しかしルーンは無傷であった。オーズの土下座スキルは新たに妹となったルーンにも適用されていた。
「あ?なんで喰らわねーんだ?まさかまたお前か?」
ジュリアスはオーズを睨みつけた。
「まあいいや、それならお前ら二人を攫えばいいだけの話しだ」
「何で俺たちを攫おうとする!」
オーズは土下座しながら質問をした。時間稼ぎでもあるが少しでも相手から情報が欲しかった。
「言う訳ないだろ」
ジュリアスは完全に死んだと思っていたが生きており状況が飲み込めないルーンを掴んだ。
「じゃあ二人を抱えてさっさと退散するか」
「離せ!」
「嫌だね、そんなに離して欲しければお嬢ちゃんが持つスキルでも使えばいいだろ?使えるならな?」
「そうだ!ルーンちゃんスキルを使うんだ!どうにかなるかもしれない!」
オーズはルーンのスキルについて何も知らなかったが状況を打破するために懇願した。
「おっと今度はお前が何も知らないか?仲間同士の情報共有は大切だぜ?」
「知らないって何を?」
「じゃあ教えてやるよ。さっきの質問を答えられなかったお詫びにな。お嬢ちゃんのスキルは爆破。その手の周りで爆発を引き起こせる強力なスキルだ」
「なら今こそ使うんだ!」
「それが出来ないんだよなー。お嬢ちゃんはスキルを暴発させて火傷をしちまったらしい。それ以来怖くてスキルが使えねーんだとよ。馬鹿だよな自分のスキルで傷付くなんて」
「そんな事が……」
ルーンは何も言わないが悔しそうに噛み締めている。
「こんな小さなお嬢ちゃんが騎士になれたのも強力なスキルありきなのに、それを使えないなんてよ。スキルが使えないお嬢ちゃんに何の価値もないのによ!」
「ふざけるな!」
ジュリアスの言葉にオーズは激昂した。
「ルーンちゃんは強い!さっきだって一人で騎士を相手にしてた!スキルが使えなくたって立派な騎士だ!お前こそスキルと邪竜の力に頼っているだけじゃないか!お前にルーンちゃんを馬鹿にする資格はない!」
オーズは思いの丈を全てジュリアスにぶつけた。
「ルーンちゃん!こんな奴の言う事なんて聞く必要はないんだ!今のルーンちゃんは誰にも傷付けることは出来ない!勿論自分自身もだ!大丈夫!俺を信じて!スキルを使って!そしてそのジュルジュルJr.をぶっ飛ばしてやれ!」
「ジュリアス・ジェニアスJr.だ!そして人を説教する時は土下座をやめてから言え!」
ルーンを捕まえていないジュリアスがオーズの下へ来ると何度もオーズを踏みつけた。しかしオーズは全く意に介さない。
「大丈夫!ほら全然痛くないから!だから安心して!こんな奴にルーンちゃんは負けちゃいけないんだ!」
「うるせえ!」
ジュリアスは何度も何度もオーズを踏みつけるが全く効いていない。
「だから効かないってバーカ!バーカ!」
「土下座しか出来ない能無しが!」
ジュリアスは腕を大きく振りかぶった。すると背後からとてつもない爆発音が聞こえ、爆風がジュリアスを襲った。
振り返ると爆発による土煙が舞っており、どうなっているか分からなかった。そして徐々に土煙が晴れるとそこには手から煙が上がって出ているルーンと腕を吹き飛ばされたジュリアスがいた。
「な!爆発させただと!」
生き残っているジュリアスは明らかに動揺している。
「その人はレッドグレイブ家の人間だ。その人を馬鹿にする事は許さない」
ルーンの動きは素早かった。剣と盾を置き素手になった事で動きが格段に速くなっていた。
その動きにジュリアスは反応出来ていない。一気に距離を詰められるとルーンは右手をジュリアスに伸ばした。
ジュリアスの目の前で爆発が起きた。爆発によりジュリアスの身体は吹き飛ばされて、ゴロゴロと地面に転がっていく。
ジュリアスはヨロヨロと立ち上がるとニヤリと笑った。
「まあいいさ、お姫様の所にも俺はいるからな。どうせお前はその態勢から動けないんだろ?ひひっ」
そう言うとジュリアスの体は消えてしまった。
ジュリアスの言い分は正しかった。オーズは直ぐにフレイルの下へ行きたかったが、向こうの状況が分からない為土下座をやめられない。そして土下座をしていると動けない。
オーズが悩んでいるとルーンが口を開いた。
「一つだけ方法があります」
どんな方法か分からないがオーズはそれに賭けるしかなかった。
森の外では戦いが続いていた。化け物となったジュリアスの分身がフレイル達を襲っていたのだ。フレイルは自慢のハンマーを持ってきておらず戦いに参加出来ていない。他の騎士達が必死になって戦っているが化け物となったジュリアス達に決定打を与える事が出来ず、ジリジリと劣勢になっていた。
「フレイル様!お逃げ下さい!」
「逃げるって言ったって!」
周りの騎士は必死にフレイルを逃がそうとするがジュリアス達に囲まれてどうにも出来ない。
ソニアもこの危機的状況を打開するにはどうするべきか考えていた。
――どうする……このままでは危ない。倒しても倒しても分身してくる。手数が圧倒的に足りない……幸いにもオーズは土下座をしてくれてる様だが、姿が見えない限り安心は出来ない
ソニアは戦いながらも必死に考えていた。
その時森の中から爆発音が聞こえた。
「何ですかこの音は?」
アーティは怯えながら森の方を見た。この場にいる全員が何の音か分からなかった。ただ一人ソニアを除いては。
「これはルーンのスキルです!姫様!もしかしたら勝機があるかもしれません!」
「本当なのね!」
二人は喜び、目を合わせると爆発音以外の音も聞こえてきた。何処か遠くからまるで何かの叫び声の様なものだ。爆発音は徐々にこちらに近付いてくるのが分かる。何かを爆破させながらこちらに向かって来ている。そして爆発が起きるたびに何者かの叫び声が大きくなったり小さくなったりと響き渡る。
「何の音だ?それより誰の声だ?」
ジュリアス達も森の方を見た。よく見ると木のてっぺんの方で何かが爆発と共に上がって、そして落下しているのが見えた。それはどんどんとこちらに近付いて来ている。
その正体が何なのか一番早く気付いたのはフレイルであった。
「兄ちゃん!」
そうオーズが土下座の態勢で爆破されて宙を飛び、こちらに向かっているのだ。
近くで爆発音がした。すると、「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」オーズの悲鳴がこだまする。そしてオーズは森の上から現れて、森の中に落ちていく。そして爆発すると悲鳴と共にオーズが木々の上から飛び出して落ちていく。その繰り返しである。
誰もが、そして敵であるジュリアスでさえその光景に顔が引き攣っている。およそ人間にやっていい移動方法ではない。拷問である。
呆然とする集団で唯一フレイルだけがアーティに指示を出した。
「アーティ!次にオーズが見えたら直ぐに引き寄せて!」
「あっ!はい!」
爆破されている兄を呆然と見ていたアーティが返事をした。そして爆発と共にオーズが叫びながら飛び上がって来た。
「お兄ちゃん!来て!」
すると煙を纏いながらオーズがアーティの下へ飛んできた。その顔は恐怖でやつれていた。
飛んでくるオーズをフレイルは空中で掴み、振り回し、そして構えた。武器を手にしたフレイルの顔は自信に満ち溢れていた。無敵な体、壊れない武器、怖いものなしである。
「よく戻ってきたわね!褒めて遣わす」
「どうもです……」
オーズは疲れ果てていた。それでも土下座はやめない。
森の中からルーンが走りながら出て来た。
「姫様!ソニア姉様!ご無事でしたか!」
「ルーン!加勢を頼む!」
「はい!姉様!」
そこからは地獄絵図である。オーズを振り回すフレイルと両手を爆発させて吹き飛ばすルーンがジュリアス達相手に暴れ回った。
凄まじい爆発音で声が掻き消されるのをいい事にフレイルは好き勝手に叫びながらオーズを振り回す。
「ほら!ほら!ほら!分身してみろよ!何度だって叩き潰してやるからよ!モグラ叩きみたいで痛快だよ!ジュリアスさんよー!ほら、ほらペース落ちてるぞ!本気出せよ!さっきまでの威勢は何処に行ったんだ?」
唯一フレイルの声が届くオーズは何も聞こえないふりをしていた。
ルーンはルーンで久しぶりに使う爆発スキルをこれでもかと堪能していた。
「気持ちいいー!やっぱり縮こまってるのは性に合わないわ!敵は爆発させて倒すのが一番!どんどんジャンジャン分身してきな!」
こちらもソニアは聞こえないふりをしていた。我が妹ながら恥ずかしかったのだ。
先程まで必死に戦っていた騎士達もこの暴れ回る二人の中に割って入ることは出来ず、周囲で呆然としているだけである。
一人また一人とジュリアスが虐殺され、そしてついに最後の一人が倒されて消えてしまった。
「これでお終い?本体は?」
「どうやら逃げた様です」
フレイルとルーンは不満気であった。フレイルはようやくオーズを地面に置いた。オーズはフラフラになりながら立ち上がった。
「ルーン!」
「はい!何でしょう!姫様!」
「此度の活躍は見事でした。悪しき邪竜教徒を撃退したその力、私の為に使ってくれますか?」
明らかに護衛騎士の誘いである。選抜試験はジュリアスの襲撃で有耶無耶になったが先程の活躍を見ればルーンが相応しいの明らかであった。
「はい!この身朽ち果てるその日までフレイル様に仕えることを誓います」
ルーンは膝をつき忠誠を誓った。誰からも文句は出ない。と言うよりあの虐殺を目の当たりにして自分こそが相応しいなど言えるはず無く、巻き込まれるのも御免であった。
フレイルとルーンの間だけにいい感じの雰囲気が漂っていた。ソニアも頭を抱えて何も言えなかった。
ルーンが正式に護衛騎士になった事により改めてマルテを交えてお茶会をする事になった。
マルテは嬉しそうにルーンについて喋っている。
「本当にルーンちゃんが護衛騎士になってくれて嬉しいわ。それに前みたいに明るくなったし」
「はい!今まで心配をかけましたマルテお姉様!」
ルーンは初めてのお茶会と違い緊張も解けて、明るく話してくれている。
「それもこれもオーズさんのおかげです」
「いえ、自分は土下座をしていただけです」
「それでもです、爆発で火傷をしてからルーンちゃんは塞ぎ込んじゃって、姉として本当に心配だったんです。オーズさんが自信を取り戻してくれたんです」
マルテは心からオーズに感謝した。
「えっと、ソニア姉様から事情を全部聴きました。これまでの失礼な態度申し訳ありませんでした」
「いいんだよ、怪しかったのは本当のことだし。それに俺もレッドグレイブの人間になったからそんな他人行儀にならなくても」
オーズは人から頭を下げられ事が苦手であり、必死にルーンを宥めている。
「ルーンのスキルは強力です。私としても大変心強い護衛騎士が側にいてくれて嬉しい限りです」
フレイルもルーンの護衛騎士就任を喜んでいる。
「はい!このスキルがあれば姫様に迫る不届ものを一人残らず爆破させる所存であります!見て下さいこの爆発を!」
ルーンは手のひらで爆発させた。しかし今はオーズは土下座をしていないのでルーンの爆発は自らの手を焼いた。ルーンは椅子から転げ落ちてのたうちまわった。
「あっつい!あっつい!土下座!はやく土下座!」
オーズは慌ててその場で土下座をした。土下座によりルーンの痛みは引いて落ち着きを取り戻した。
「あらあら、ルーンちゃんったら、はしゃいじゃって」
マルテは微笑んでいるがソニアは呆れている。
ソニアはオーズに近付くとそっと小声で語りかけた。
「すまない、オーズ。ルーンは……その、なんだ、少しドジなのだ。だから……何と言うか、これからもよろしく頼む。本当に頼む」
「え?ドジ?ドジが爆発させてんの?大丈夫それ?」
「いや、大丈夫じゃなかったからスキルを使わない様にしてたんだ」
オーズはルーンが爆発で火傷したのも、もしかしてドジなのだろうかと思ってしまった。すると暗く重いトラウマも、ただのドジっ子エピソードに思えてきた。
向こうで涙目になりながら己の手を見ているルーンを眺めオーズは確信した。
――この子、俺がいないとダメなんじゃ……守らなきゃ
オーズはルーンも守る事を決意した。ここに来てオーズはおっちょこちょいの義妹ができたのだ。
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