この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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61.そういえば。 コリンside

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 そういえば、僕は人の顔をしみじみ見ることってない。

 そんなに長い時間人と話し込むことなんかないから‥だと思う。
 話をしているときは、相手の目を見ているけど、それも、「相手の目に視線を置いてるだけ」で、別に見ているわけではない。
 多分声だとか雰囲気(もしかしたら魔力で認識してるのかも。魔術士は割とそういうところがある)で、当たり前に「この人は『なにそれ』さん」って認識して会話なんかをしている。

 でも、じゃあその『なにそれさん』がどんな顔かって聞かれたら‥びっくりするほどよくわかっていない。

 その人にだけ興味がないとか、特別僕の記憶力が悪い、じゃないんだと思う。
 誰の事も、僕は見ていない。
 改めて気付くと、ちょっと驚きだった。

 ナナフルさんは、綺麗で優しい。
 じゃあ、‥目の色は何色だったっけ? どんな形してたっけ? 髪の色は? 髪の感じは? 顔の形は?
 チョイ悪・イケオジなザッカさんは?
 スーパーイケメンで、めちゃ爽やか~なシークさんは?

 ‥誰のことも、びっくりするほど覚えていないんだ。
 つまり、誰の事もびっくりするほど、見てないんだ。

 (とりあえず)
 目の前のアンバーを見てみる。(目の前にいるのがアンバーだけだから、ってだけの理由だ。‥それにしても、こんなに、しみじみ人の顔を見るの初めてかもしれない)

 パッと見、髪が黒くて目が赤い。
 だけ。

 もうちょっと詳しく観察してみる。
 髪は‥こげ茶じゃなくて、ホントに黒いんだな。珍しい。癖がなく真っ直ぐで、サラサラ。髪質は‥太くない。艶っつやで天使の輪っか出来てる。多過ぎず、少な過ぎずって感じ。目は、濃い赤だと思ってたけど、明るいところで見たら、割と明るい赤? 瞳孔の周りがほんのり濃いからあの時は濃い赤に見えたのかな。目が大きめで、ばっちり二重。睫毛が長い。鼻筋も通ってるし、唇の形もカッコいい。特別血色いいって感じでもないけど、別に健康そうな色って感じ。
 パーツパーツは整ってるんだけど、全体的に見ると別に派手な感じの容姿ではないのは、髪が黒いからと、表情がイマイチ「健全」じゃないから。アンバーはどっちかというと、「大人の色気~」って感じの表情してることが多いね。
 お肌はつるつる。もちもちってか、サラって感じ。顔色は良好って感じじゃないけど、肌質はいい。張りがあって、ぴちぴちで、サラって感じ。清潔~って感じ。
 毛深い方じゃ無いらしくって、髭とかそんなに目立たない。腕とか‥体毛も「もじゃもじゃ」してない。そりゃ生えてるけど、柔らかい毛がちょこっとって感じ。剃ってるって感じでも勿論ない。
 手足が長い。細い。細マッチョとかじゃない。普通に、細い。筋肉とかあんまりついてない。だけど、骨格がしっかりしてるから貧相って感じじゃない。
 一本のすらっとした棒みたい。
 棒っていうか、かったい水晶の柱みたい。
 硬くって、キラキラしてて、冷たい感じ。

 なにそれ。スーパーイケメンか。

「‥アンバーのくせに、腹立つ」
 つい、無意識にボソッと呟いてしまっていた。
 ヤバい。本音が漏れた。
「え? なに? 」
 アンバーが、こて、と首を傾げる。
 髪がさらっと白くてツルツルの頬に掛かる。
 微笑んで、ちょっと細めた目がいつも以上に色っぽい。流し目って言うのかな? 視線が色っぽい。
 これ絶対わざとだ。
 顔がいい奴にしかできないあざとい顔って奴だ。
 むかっつく。
「‥顔がいいからって調子に乗らないで欲しい」
 下から睨み上げる様にアンバーを見る。
「乗ってないけど‥。なにそれ、褒めてるの? さっきからじっと見ちゃったりなんかして、もしかして見惚れてた? 」
 くすくすと笑って、ポンって僕の頭に手を置く。
「‥見惚れてないし‥」
 ほんっと、ムカつく。
「ふうん? 」
 ってまたくすくす。
 むっか~!!


 僕の頭には、まだアンバーの手がのせられている。
 指が細くって、長くって、爪のカタチがいい。ついでにそのまま僕の髪をおもちゃにするみたいに、サラっとすくい上げる。ささくれとか、手荒れとか無縁って感じの、綺麗な指。繊細な感じの‥手先器用そうで、絶対に力仕事向きじゃない感じの手。
 細い指さきが僕の頬に触れる。
 ひんやり冷たくて気持ちいい。さらっとしてる。アンバーはどこもかしこも、さらっとしてるし、ヒヤッとしてるし、華奢で‥綺麗で、‥まるで生き物感を感じさせない。
 シークさんの剣ダコとかできてるごつごつした手とは違う。シークさんの分厚くって、安心感半端ない「働き者の手」とは違う。シークさんの手は、あったかくって硬くって、なんか重たい感じがするんだ。
 視線も、ほっこりって感じで暖かいの。お日様みたいに見守ってくれてます~って感じの優しい視線。
 おんなじ優しい系でも、ナナフルさんはちょっと違う。
 ナナフルさんの視線は普段は、朝の湖面みたい。透明で、時々朝日を受けてキラキラしてて、静か~で、「嘘ついたらばれそ~」って感じする。微笑んだら、ふわ~ってなんか花が咲くみたいな感じなの。きれ~って見惚れちゃう。シークさんみたいに、暖かい~じゃなくて、「ふわ~、綺麗~」って感じね。あ、因みに、怒ったら「綺麗~」のまま、「コワ~」になるよ。
 静か~に怒るのは、ナナフルさんだけ。ザッカさんは割とガツンと怒るし、シークさんが怒ったのは見たことないけど、静か~には怒らない気がするな! (アンバーも怒ったところは見たことないけど、アンバーなら静かに怒りそう、かな? )
 シークさんはいつも暖かい。
 シークさんの目は「嘘ついてもいいんだよ。受け止めるよ~」って感じのおおらかさがあるんだ。(嘘なんかつかないけどね! )もう、大海原やら、果てしなく広がる草原って感じ。
 アンバーの目は、‥なんか全部吸い込まれそうって感じ。受け止めるっていうより、言葉も視線も全部持ってかれるって感じがする。聞いてくれてるみたいだけど、なんだか落ち着かないね。

「‥明るいところで見たらアンバーの目、明るい赤だね。初めて会った時は、ガーネットみたいな深い赤だと思ったのに」
 ニヤニヤしてるアンバーの視線が煩わしかったから、視線をそらし、取り敢えず話を変えようとおもったんだけど、
「宝石みたいな目、とか、褒めてるっていうより、もう口説きにかかってるでしょww」
 って更ににやにやされてしまった。
 く‥っ、おのれ!!
「でも‥、目の色‥今の色が元々の色だぞ。色が濃かったのは、魔力を使ってたからじゃないか? コリンは闇魔法の属性を持っているっていっても、俺ほどそれが中心‥ってわけじゃないから、そう影響がないだけで‥」
「え? 」
「え? ってなに? 」
「魔力を使ったら、瞳の色って変わるの? 」
「使ってるときは、瞳の色が変わるっていうのが正しい表現だな」
「‥僕も変わってる? 」
「コリンは、その属性単体って使い方してないじゃない。だから、‥変わってるんだろうけど、分かりにくい。シークなんかは、わりと分かりやすいって感じじゃないか? 」
「え!? シークさん!? 」
「あいつ、土魔法なのかな‥、緑色の。普段は瞳孔の周りがうっすら緑かな‥って感じだけど、魔力を使ってるときなんか、虹彩全体が緑っぽくなるじゃん」
 ‥え、何それ知らなかった。
 虹彩の色が魔力をつかってるときは変わってる、とか、
 シークさんに魔力がある、とか。
 シークさんが土属性の魔力をもってる、とか。
 緑バージョンのシークさんの目の色とか!? (絶対見たい!! )
 ‥人の変化だとか、それ以前に、人のことあんまり見てないのは僕だけだってこと‥とか!!

 ちょっと‥ショックなことが過ぎるんですけど‥。
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