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198.誰かのhappyendの一助となれるかもしれない生き方。
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「カールの奴は、シャルルちゃんは恋愛に全く興味がないって思ってたみたいだけど‥、シャルルちゃんは自分に自信がなかったから恋愛からにげてた‥というか‥奥手になってたって感じだったな」
ロナウがポツリといった。
解呪の話とか‥乗り合い馬車の中でする話題ではないからね。
「‥そうだな。シャルルは‥恋愛だけじゃなくって万事において‥自信がなかった‥というか‥自信を持てなかったんだ。
それを、シャルルは「両親に愛されなかったから」だと思っている。両親は自分を愛していない‥と思っている。
義務だけ押し付けられて、両親は自分の事を見ようとしてくれない。
否定されて育ったわけでは無いけど‥「どうせ分かってくれないだろう」ってシャルルは思って‥決めつけて、色々と諦めて‥育ってきた。
一度だけ言ったお願い‥「教会に学びに行きたい」が却下されたとき‥シャルルは両親に完全に見切りをつけたんだろう。
シャルルは‥本当に教会に行きたかったわけでは‥多分、無い。ただ、両親が自分の願いを真剣に聞いてくれるか‥ってことを‥試したかったんだ」
ローブを深くかぶったコリンが言った。
行きの馬車でも、コリンはこれを被っていた。「お忍びの貴族か? 」ってツッコミを入れたくなったが‥「そうか‥目立たない様にか‥」って‥さっきのコリンのキラキラを見た時‥気付いた。
この頃、僕、コリンとかフタバちゃんとかナナフルさんとかアンバーさんとか‥! 美形に囲まれてるから‥耐性が付いてきちゃったみたい。
こんなに美人ばっかり見てきて‥普通の人とちゃんと恋愛結婚できるのかな‥。(フタバちゃんは、目的が終われば婚約破棄する「仮の婚約者」だから、僕は改めて結婚相手を探さないといけないからね。‥それも、婿養子に入れるような「そこそこのお嬢様」を‥)
恋愛結婚なんて求めてないけど‥結婚したら好きになりたいって思う。穏やかで大人しめの‥性格がイイ子だったらいいなって‥思う。
顔とか、贅沢なんていう気は無いけど‥僕ってばこの頃、目が肥えてきちゃったから‥そこそこの美人位じゃ‥相手の事「可愛い‥」って思えないかも‥。
だけど、僕はその子をコリンたちと「比べて」劣る‥とか絶対思いたくない。思っちゃいけない‥っていうより、‥思いたくない。
相手に失礼だろ、ってことじゃない。「それは人間として最低な行為だから」って思うからだ。
今後の自分の人生に絶対関わってくることのない‥夢の様な綺麗な人たちとの生活。それは、束の間の夢でしかない。僕はその生活に慣れてはいけない。
昔憧れた「御伽噺のお姫様」の様に‥決して手に入ることのない、「架空の存在」として接するぐらいの方が‥丁度いい。
夢は夢のまま‥夢につかりこんではいけない。
コリンのキラキラ可愛い顔は、今ローブに隠れて見えない。
シャルルみたいに「見ない様に」してるわけじゃなくって‥物理的に見えない。
自分が見ないでおこうって思うものを見ない様に‥視界に、‥感情に蓋をして暮らす生き方‥。
‥僕には出来るんだろうか。
「ロナウ? 」
コリンが訝し気に、俯く僕を覗き込む。
下から見上げられることで、コリンのトパーズの瞳と目が合った。
どき‥とする。
僕はきっと‥見てしまう。コリンたちの事‥(これからの為に)見ない振りして暮らすことなんて‥出来そうにない。
そんなこと言ったら、きっとみんなは笑うだろう。「変な奴だな」って‥呆れるだろう。
僕もそう思う。変なこと言ってるって‥だけど‥きっと皆も心の奥底では「まあ‥その気持ちも分からないでもないけど‥」って思ってくれるだろう。
あれだ。平凡な主人公にめちゃかわいい幼馴染が居て、主人公に友達が言うんだ。「あんなにかわいい子が日常的に近くに居たら、理想だけ上がっちゃって、他の子のことそうそう可愛いって思えないんじゃない? 」‥恋愛小説によくあるパターンだけど‥ああいう感じ。
で、その後主人公は「今まで妹みたいにしか思ってなかった」幼馴染を好きになっている自分に気付くんだけど‥そのときは、もう幼馴染には恋人が出来てる‥とかいうね。
幼馴染は、実は主人公のことが昔から好きだったんだけど、いつまでたっても自分の気持ちに気付かない主人公に愛想を尽かせちゃったんだ。
すれ違い具合がもう‥腹立たしいったらないね!
「どうした? 大丈夫か? さっきから難しい顔をしてるけど‥」
首を傾げて心配気なコリンに「大丈夫」って言うと、コリンは「ふうん? 」と納得しない様子で‥頷いた。
「シャルルはホントは教会に行きたかったわけじゃない‥って言ってたけど‥、なんでコリンはそう思ったの? 」
聞いてたよアピールでロナウが聞くと、コリンは
「う~ん。教会に行きたかったわけじゃない‥っていうか、魔術を勉強したいって思ってるように思えなかった‥って感じ? 」
ってコリンは言った。「それが気になってたの? 」ってロナウに聞く。ロナウは頷いた。
「う~ん。なぜって聞かれても‥困る‥かな。そういう気がした、としか‥」
コリンがちょっと眉を寄せて、苦笑いしたが‥その気持ちは何故かロナウにも分かった。
「‥直観‥ってわけだね。‥まあ‥それは‥僕も‥なんとなくわかる気がする。そういわれてみれば‥そんな感じだった気もする」「それで? 」
ロナウは、取り敢えず頷いて、話の続きを促した。コリンも頷いて話を続ける。
「だけど、彼女の両親は彼女の話‥お願いを真剣に検討してくれたように‥シャルルには見えなかった」
「シャルルにとっての不満は話を真剣に聞いてくれなかったことに対する不満だったってことだね」
コリンが頷く。ロナウも「それは理解が出来るね」って納得する。
「教会に行っても、聖女になれる者は少ない。女の神官はいない‥地方ではいないわけでは無いらしいが‥少ない。魔術士になったら‥世間的に「ウケ」が悪い。両親はただシャルルには平凡に幸せになってほしい‥って思ったんだろうね」
同級生にも女子いたが、男子と比べて少なかった。それは、そういう理由だ。
フタバのように「結婚しなかったとしても自立したい」「それでもいいというような男と結婚したい」って考える子は(貴族では特に)少ないだろうし、それを許す親も少ないだろう。
同級生の女子の進路は、八割が「赤の医療紋」を利用しての聖女(見習い)で、後の二割が魔術士だった。
ロナウの意見に頷くと、コリンは小さくため息をつき、
「シャルルの両親は、普通に‥シャルルを心配して、シャルルの将来を考えている。
だけど、シャルルにはそれが伝わらなかった‥ってことだね」
って言った。
これも、すれ違いだ。
‥いつだって、すれ違いは‥悲しいものだ。
「シャルルが少しの勇気を出して、自分の気持ちを両親に伝えることによって、何か変わるものはあると思う。
彼女の両親だって、娘の不満を知れば‥自分たちの気持ちを言うだろう。「誤解させてすまなかった」って謝ってくれたなら‥シャルルの心も晴れるだろう。
ホントはカールが間にたってくれればスムーズに話が進むって思うけど‥そんなことを僕が言うのもどうかな‥って思って言わなかった。
カールが彼女のことを少しでも考えたなら‥彼女の気持ちが分かるだろう。‥会ったばかりの僕らですら分かったくらいだからね。
いつも一緒にいるから気付かないこともある。だけど、今回僕という異分子がその間にちょっと入ったことによって、‥何かが変わるきっかけになったらいいな‥って思う」
平凡で愚図で鈍感な主人公に‥全てが取り返しがつかない状態になる前に、友達が主人公に忠告してくれるんだ。
「いつも一緒にいるからって油断してたら、誰かに彼女(幼馴染)を取られちゃうかもしれないぜ? 」
それを聞いた主人公が
「何言ってんだよ‥俺はあいつのことなんて‥」
って動揺して、反論するも「でも、あいつ(幼馴染)が他の奴と付き合うのは嫌かも‥」って「気付く」。
そして、手遅れになる前に主人公は幼馴染に告白してhappyendになるんだ。
幼馴染が他の奴と付き合って初めて自分の気持ちに気付く‥っていうbadendしかない結末を変えたのは、そういう‥お助けキャラ的な誰かの一言。
何でもない‥ちょっとした一言。
自分が誰かを説得して‥直接変えるってのは無理でも、誰かを変えるきっかけになれることはある‥ってこと。
「誰かの変化の切っ掛け‥か。深いね」
「そういうふうに考えるのは、おこがましいかもしれないけどね」
ふふって苦笑いするコリンに、ロナウは穏やかに微笑んだ。
自分の人生のhappyendは‥分からないけど、人の人生のhappyendの一助になれるかもしれない日々を僕は今生きている。‥それはそれで、悪くないかもな‥って思えたロナウだった。
ロナウがポツリといった。
解呪の話とか‥乗り合い馬車の中でする話題ではないからね。
「‥そうだな。シャルルは‥恋愛だけじゃなくって万事において‥自信がなかった‥というか‥自信を持てなかったんだ。
それを、シャルルは「両親に愛されなかったから」だと思っている。両親は自分を愛していない‥と思っている。
義務だけ押し付けられて、両親は自分の事を見ようとしてくれない。
否定されて育ったわけでは無いけど‥「どうせ分かってくれないだろう」ってシャルルは思って‥決めつけて、色々と諦めて‥育ってきた。
一度だけ言ったお願い‥「教会に学びに行きたい」が却下されたとき‥シャルルは両親に完全に見切りをつけたんだろう。
シャルルは‥本当に教会に行きたかったわけでは‥多分、無い。ただ、両親が自分の願いを真剣に聞いてくれるか‥ってことを‥試したかったんだ」
ローブを深くかぶったコリンが言った。
行きの馬車でも、コリンはこれを被っていた。「お忍びの貴族か? 」ってツッコミを入れたくなったが‥「そうか‥目立たない様にか‥」って‥さっきのコリンのキラキラを見た時‥気付いた。
この頃、僕、コリンとかフタバちゃんとかナナフルさんとかアンバーさんとか‥! 美形に囲まれてるから‥耐性が付いてきちゃったみたい。
こんなに美人ばっかり見てきて‥普通の人とちゃんと恋愛結婚できるのかな‥。(フタバちゃんは、目的が終われば婚約破棄する「仮の婚約者」だから、僕は改めて結婚相手を探さないといけないからね。‥それも、婿養子に入れるような「そこそこのお嬢様」を‥)
恋愛結婚なんて求めてないけど‥結婚したら好きになりたいって思う。穏やかで大人しめの‥性格がイイ子だったらいいなって‥思う。
顔とか、贅沢なんていう気は無いけど‥僕ってばこの頃、目が肥えてきちゃったから‥そこそこの美人位じゃ‥相手の事「可愛い‥」って思えないかも‥。
だけど、僕はその子をコリンたちと「比べて」劣る‥とか絶対思いたくない。思っちゃいけない‥っていうより、‥思いたくない。
相手に失礼だろ、ってことじゃない。「それは人間として最低な行為だから」って思うからだ。
今後の自分の人生に絶対関わってくることのない‥夢の様な綺麗な人たちとの生活。それは、束の間の夢でしかない。僕はその生活に慣れてはいけない。
昔憧れた「御伽噺のお姫様」の様に‥決して手に入ることのない、「架空の存在」として接するぐらいの方が‥丁度いい。
夢は夢のまま‥夢につかりこんではいけない。
コリンのキラキラ可愛い顔は、今ローブに隠れて見えない。
シャルルみたいに「見ない様に」してるわけじゃなくって‥物理的に見えない。
自分が見ないでおこうって思うものを見ない様に‥視界に、‥感情に蓋をして暮らす生き方‥。
‥僕には出来るんだろうか。
「ロナウ? 」
コリンが訝し気に、俯く僕を覗き込む。
下から見上げられることで、コリンのトパーズの瞳と目が合った。
どき‥とする。
僕はきっと‥見てしまう。コリンたちの事‥(これからの為に)見ない振りして暮らすことなんて‥出来そうにない。
そんなこと言ったら、きっとみんなは笑うだろう。「変な奴だな」って‥呆れるだろう。
僕もそう思う。変なこと言ってるって‥だけど‥きっと皆も心の奥底では「まあ‥その気持ちも分からないでもないけど‥」って思ってくれるだろう。
あれだ。平凡な主人公にめちゃかわいい幼馴染が居て、主人公に友達が言うんだ。「あんなにかわいい子が日常的に近くに居たら、理想だけ上がっちゃって、他の子のことそうそう可愛いって思えないんじゃない? 」‥恋愛小説によくあるパターンだけど‥ああいう感じ。
で、その後主人公は「今まで妹みたいにしか思ってなかった」幼馴染を好きになっている自分に気付くんだけど‥そのときは、もう幼馴染には恋人が出来てる‥とかいうね。
幼馴染は、実は主人公のことが昔から好きだったんだけど、いつまでたっても自分の気持ちに気付かない主人公に愛想を尽かせちゃったんだ。
すれ違い具合がもう‥腹立たしいったらないね!
「どうした? 大丈夫か? さっきから難しい顔をしてるけど‥」
首を傾げて心配気なコリンに「大丈夫」って言うと、コリンは「ふうん? 」と納得しない様子で‥頷いた。
「シャルルはホントは教会に行きたかったわけじゃない‥って言ってたけど‥、なんでコリンはそう思ったの? 」
聞いてたよアピールでロナウが聞くと、コリンは
「う~ん。教会に行きたかったわけじゃない‥っていうか、魔術を勉強したいって思ってるように思えなかった‥って感じ? 」
ってコリンは言った。「それが気になってたの? 」ってロナウに聞く。ロナウは頷いた。
「う~ん。なぜって聞かれても‥困る‥かな。そういう気がした、としか‥」
コリンがちょっと眉を寄せて、苦笑いしたが‥その気持ちは何故かロナウにも分かった。
「‥直観‥ってわけだね。‥まあ‥それは‥僕も‥なんとなくわかる気がする。そういわれてみれば‥そんな感じだった気もする」「それで? 」
ロナウは、取り敢えず頷いて、話の続きを促した。コリンも頷いて話を続ける。
「だけど、彼女の両親は彼女の話‥お願いを真剣に検討してくれたように‥シャルルには見えなかった」
「シャルルにとっての不満は話を真剣に聞いてくれなかったことに対する不満だったってことだね」
コリンが頷く。ロナウも「それは理解が出来るね」って納得する。
「教会に行っても、聖女になれる者は少ない。女の神官はいない‥地方ではいないわけでは無いらしいが‥少ない。魔術士になったら‥世間的に「ウケ」が悪い。両親はただシャルルには平凡に幸せになってほしい‥って思ったんだろうね」
同級生にも女子いたが、男子と比べて少なかった。それは、そういう理由だ。
フタバのように「結婚しなかったとしても自立したい」「それでもいいというような男と結婚したい」って考える子は(貴族では特に)少ないだろうし、それを許す親も少ないだろう。
同級生の女子の進路は、八割が「赤の医療紋」を利用しての聖女(見習い)で、後の二割が魔術士だった。
ロナウの意見に頷くと、コリンは小さくため息をつき、
「シャルルの両親は、普通に‥シャルルを心配して、シャルルの将来を考えている。
だけど、シャルルにはそれが伝わらなかった‥ってことだね」
って言った。
これも、すれ違いだ。
‥いつだって、すれ違いは‥悲しいものだ。
「シャルルが少しの勇気を出して、自分の気持ちを両親に伝えることによって、何か変わるものはあると思う。
彼女の両親だって、娘の不満を知れば‥自分たちの気持ちを言うだろう。「誤解させてすまなかった」って謝ってくれたなら‥シャルルの心も晴れるだろう。
ホントはカールが間にたってくれればスムーズに話が進むって思うけど‥そんなことを僕が言うのもどうかな‥って思って言わなかった。
カールが彼女のことを少しでも考えたなら‥彼女の気持ちが分かるだろう。‥会ったばかりの僕らですら分かったくらいだからね。
いつも一緒にいるから気付かないこともある。だけど、今回僕という異分子がその間にちょっと入ったことによって、‥何かが変わるきっかけになったらいいな‥って思う」
平凡で愚図で鈍感な主人公に‥全てが取り返しがつかない状態になる前に、友達が主人公に忠告してくれるんだ。
「いつも一緒にいるからって油断してたら、誰かに彼女(幼馴染)を取られちゃうかもしれないぜ? 」
それを聞いた主人公が
「何言ってんだよ‥俺はあいつのことなんて‥」
って動揺して、反論するも「でも、あいつ(幼馴染)が他の奴と付き合うのは嫌かも‥」って「気付く」。
そして、手遅れになる前に主人公は幼馴染に告白してhappyendになるんだ。
幼馴染が他の奴と付き合って初めて自分の気持ちに気付く‥っていうbadendしかない結末を変えたのは、そういう‥お助けキャラ的な誰かの一言。
何でもない‥ちょっとした一言。
自分が誰かを説得して‥直接変えるってのは無理でも、誰かを変えるきっかけになれることはある‥ってこと。
「誰かの変化の切っ掛け‥か。深いね」
「そういうふうに考えるのは、おこがましいかもしれないけどね」
ふふって苦笑いするコリンに、ロナウは穏やかに微笑んだ。
自分の人生のhappyendは‥分からないけど、人の人生のhappyendの一助になれるかもしれない日々を僕は今生きている。‥それはそれで、悪くないかもな‥って思えたロナウだった。
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