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220.三人寄れば‥って言うでしょ?

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(コリンside)


「表面からは見えないけど‥それは根でつながっている‥」

 良い‥例えだとは思うけど‥

 そもそも‥茎を引っ張たら根っこが抜けるのって‥(芋の限らず)当たり前じゃないか?
 なんで、芋。別に薔薇でもいいじゃないか。お貴族様のフタバちゃんが芋とか言ったら‥違和感半端ない。
 だけど、この話もともとは、
「芋づる式って言葉があるけど、そもそも芋‥サツマイモってどんな植物だろ」
 ってフタバちゃんが疑問に思った、だから植えてみて、「成程~蔓を引いたら芋が抜けた。まさに芋づる式だね~」って実感した‥ってだけの話だ。
 例えが芋だろうが薔薇だろうが‥どうでもいい。
 フタバちゃんが言いたかったことは‥そんなことじゃない。
 なんで芋やねん! とかツッコミを入れるのは、フタバちゃんに失礼だ。‥揚げ足取ってないできちんと話の本質を理解しないといけない‥。
 落ち着いて考えろ‥
 これは‥

 闇雲に情報を集めるんじゃなくて、情報の本質を見分けろって話に違いない。

 芋(地下に隠れてる見えていない情報)を求めて、闇雲に土を掘るんじゃなくて、芋は蔓(地上に出ている見えている情報)と繋がってるってことを忘れてはいけない。
 思えば、当たり前のことだ。
 だけど、僕らは‥情報を集めることに必死で、そういうことを考えられていなかったのではないか? 
 そう言う事を、フタバちゃんはサツマイモの話を例に出して僕たちに気付かせてくれた。

 情報をできるだけ集めたら何かが見えて来るはず‥とか思ってた。
「う~ん。浅いようで深い‥流石フタバちゃんだ‥」
 つい‥唸ってしまった。見ると、ザッカさんも同意して頷いている。
 僕がフタバちゃんにお礼を言いながらそう言うと‥フタバちゃんは何か‥微妙な表情で微笑んだ。
 褒められて照れくさい? いや、「わざわざ言われると恥ずかしいな」? ‥それは分からなかったけど、僕はザッカさんたちにも、情報の整理を「芋の例え」にのっとってすることを提案した。そのことについて、ザッカさんたちに異論はないらしく、あっさり話し合いが始まった。(フタバちゃんはますます恐縮して? 照れて? 微妙な表情になっている。‥ホントに恥ずかしがり屋さんだなあ)

 まず、「敵は魔法省である」は、「この植物はサツマイモである」だな。
 一番の根本。
 で、サツマイモなら、蔓をたどれば下に、芋があるよね~ってなって、その芋部分がつまり、「表(地上)には見えてないけど、サツマイモが地下にため込んでいる一番の「お宝」」ってわけだ。
 地上に見えてる部分(蔓)は、魔法省が隠さないで公にしている部分「事実」や「魔法省(協会)の活動や業績」で、地下の宝(芋)は、魔法省が隠したい「魔法省の利益」だ。

「アクションがあって結果がある。そのアクションが何の目的をもって行われているか、またその結果はどうなのか‥整理していけば対処法‥土を掘る場所‥は見つかる‥」
 僕が呟くとザッカさんも頷いた。
「それを見極めて近づかないと‥闇雲に土を掘っていたら、敵に気付かれ、警戒されたり、捜査されることを考慮して事実を隠蔽されたりする恐れもある‥」
 ザッカさんが厳しい表情で呟き、僕も頷く。書記係を務めるナナフルさんの手は、今のところ止まっている。
 確かに、方向性は決まったが、今のところ僕らは具体的なことは何も話していない。
 シークさんは時々頷きながら話を聞いている。アンバーは‥
 ‥僕が真面目な顔をしているのが珍しいのかアンバーはニヤニヤした顔で僕を見ている。‥僕を見ているのは間違いない。だって、そうでなければ‥はす向かいに座ってるのに‥目は合わないだろう。
 アンバーは今、シークさんの横に座っている。
 僕sideの座り順は僕、ロナウ、フタバちゃん。向かい合わせに座るザッカさんsideの座り順はナナフルさん、ザッカさん、シークさん、アンバーってわけ。
 アンバーは斜めを向いて座り、ずっと僕を見ている。(見ている視線を感じるけど‥ムカつくから放っておくけど!)
 アンバーは、(僕があんまり無視するので)諦めたのか、つっと席を立ち、フタバちゃんの横にしゃがむと、フタバちゃんを見上げてふふっと‥意味ありげな笑みを浮かべた。
 
 ‥何。ホント。真面目にして欲しい‥

「ね。フタバちゃん」
 真っ赤になったフタバちゃんの耳元にこそっと囁きかけると、フタバちゃんがちょっと驚いた顔をした後‥
「そうなんです‥」
 って苦笑いした。
 何‥何言ったの? 
 アンバーがニヤニヤで、フタバちゃんが「そうなんです」って苦笑い?
 フタバちゃんの横に座るロナウには話が聞こえたらしい。ロナウを見ると‥
 さっきのフタバちゃんみたいに微妙な表情をしている‥?

「そ‥それは今言わない方がいい。フタバちゃん」
 微妙な表情のままロナウが呟く。
 フタバちゃんは‥「でも‥」って困惑した表情で、アンバーは優しく‥何かを促すみたいに‥ポンッとフタバちゃんの背中をたたいた。

「何。アンバー、今真面目な話してるんだから、ふざけないでよ。‥フタバちゃんまで巻き込んで」
 僕が立ち上がって、アンバーの横に立ち、(未だフタバちゃんの横でしゃがみ込んでいる)アンバーを見下ろして怖い顔(例のごとくコリンだけが怖い顔だって思ってる可愛いだけの顔)で睨むと、アンバーは僕を見上げて、ふ‥と笑った。

「考えすぎないで。そんなに考えてばっかりだったら‥疲れちゃうよ。
 それにね、真面目に考えてばかりじゃ、大事なこと見落とす。
 深呼吸して、肩の力を抜かないと。

 ‥さっきのフタバちゃんの話だって、フタバちゃんは‥
 そんな話をしたわけでは無い。皆は‥フタバちゃんの話の一部だけしか聞いてない。
 そして、それはフタバちゃんが最も話したかった話ではない。
 ‥さっきフタバちゃんに確認したら、そうだったよ」

 僕を労わるように‥優しく微笑んで、立ち上がり僕の頭に手を置く。
「フタバちゃんの話? 」
 僕は‥いつも通りアンバーを見上げてアンバーの顔を見る。
 さっきまでのニヤニヤ‥とは違う、優しい表情。
 落ち着いて? って僕を安心させる‥優しい微笑。
 僕がフタバちゃんを振り返ると、僕と目が合ったフタバちゃんが頷いた。

 僕は首を傾げる。
 さっきのフタバちゃんの話? 
 僕らはフタバちゃんの話を一部だけしか聞いていない‥そしてそれはフタバちゃんの一番話したかった話ではない? 。

「まあ‥偶然とはいえ‥話し合いの方向性が決まったわけだから‥ロナウの言うように、わざわざ言わなくてもいいかとは思うけど‥。話がどんどん進んで行っちゃって‥言い出しにくくはなったけど‥でも、言わないといけないなって‥」
 って‥気まずそうなフタバちゃんの顔。

 さっきのフタバちゃんの話。
 芋づる式って言葉がある。
 芋づる式ってのは、芋の蔓を引っ張ったらずるずると芋が抜けるよ‥っていう風に、一つの事が分かったら、それに関連したことも次々わかるよ‥って意味。
 芋の周りを掘っていく際、途中で短気起こして蔓を引っ張たら‥茎と根がバラバラになって‥土の中に残った根‥残りの芋は見つけにくくなる‥。
 だから、芋の周りを掘る際には慎重に、そして、芋の本質を考えなければいけない。
 って話‥(その話の途中で、フタバちゃんは‥庭師が芋を育てるのに適していない土で育てて失敗したって話をしていたが‥あれは関係ないだろう)

 って僕が「さっきの話」の要約を話すと、フタバちゃんが眉をきゅっと寄せて‥困惑したような表情をした。
「すごく‥深い話だったよね? それが何か? 」
「庭師の話‥あれは、関係なくなんてないの。
 私は‥あれこそが一番重要なんじゃないかって思って‥あの話をしたの」 
「あれこそが重要? 」
 僕が首を傾げたままフタバちゃんを見ると、フタバちゃんが深く頷く。

「芋を育てる際、私は専門外だったから‥庭は庭師だから‥って、私は庭師に任せた。
 でも、庭師は‥「庭を作る人」なの。野菜は‥作れる庭師もいるかもしれないけど‥専門外でも‥普通は問題ない。
 専門外の庭師が普通の花を育てる花壇で、土で、普通の花と同じように育てたから、芋は「葉と蔓は立派だったけど、芋は‥芋づる式に抜ける程、ひょろひょろにしか育たなかった」って話を私はしたかったの」
(コリン)「!! 」
(ザッカ)「! 」

 餅は餅屋。
 魔法を生み出すのは魔術士。魔薬は魔術士が作った。そして‥魔術師が売っている‥。でも、本来麻薬を売るプロはギャングだ‥。
 
「土を掘り、芋を探す以前に、‥そもそも芋は本当に、そんなにうまく育っているのだろうか‥ってこと? 」 
 僕が呟いた言葉にフタバちゃんの言葉が被る。
「情報の性質を見誤るといけないっていうのは‥確かにそれが一番言いたかったのは確かなんですけど‥、私は「でも」庭師がつくった芋をそんなに警戒する必要は無いんじゃないかっていうのも‥言いたかったの。
 そもそも、「芋の出来」はどうなんだろう‥って。
 その話をしようと思ったのに、話の順番を間違えてしまって‥本当にすみませんでした」
 しゅん‥となったフタバちゃん。
 ロナウは‥なんとも居心地悪そうだ。
 そうか‥ロナウは皆が真剣に話していることに水を差すようなこと言っちゃいけない‥邪魔しないでおこう‥って思うタイプなんだよな‥。

 そういう雰囲気を作ってたのは「真剣に話してた」「頭の固い」僕だ。

「フタバちゃんが悪いんじゃないと思うよ。
 皆、話し合いの方向をもう「こう」って方向性を決めちゃってたから。
 一斉に前を向け、じゃなくて、これだけ人がいるんだから「ホントにそうかな? 」ってツッコミ入れる人も居なきゃ。
 それも、他人が集まって話し合いする意味じゃない? 一斉に前向いて「こう」だったら、文献を引っ張り出して一人で調べててもいいわけだからね。
 一人より二人、
 二人より三人。‥三人寄れば文殊の知恵って言うでしょ? 
 あれ、三人ってのがみそだよね。二人だったら、同じ方向向いてそうだけど、三人って結構上手く行かないよね。その三人が知恵を出し合うから意味があるよね」
 アンバーがにこって微笑んで、僕の頭に置いたままだった手で‥僕の頭を撫ぜた。

 ‥神経質そうな‥長い細い指。
 それを意識した時、僕はドキッとして‥アンバーを見上げた。
 アンバーはそんな僕に気付いたのか、に‥と蠱惑的な微笑を浮かべ、僕の頭にのせた指を‥まるで指で髪を梳かすように‥絡ませ‥一筋すくいあげ‥キスされるって思う位‥アンバーの口元近くに持ち上げた。

「コリン? 」
 その状態で‥僕を呼ぶ声に、心臓が思わず跳ねた。
 声は‥シークさん。
 焦ってアンバーの手を払った。
 何やってんだ僕。アンバーにポーとなったりして‥。
 今はそんな場合じゃないだろ?! ってか‥僕は‥どうなってるんだ!!
 アンバーは「そんなんじゃない」だろ?! ‥そんなんじゃないのに、ときめいたり‥キスされたこと思い出してドキドキするとか‥僕は‥!
 

 自分が許せなくって、もう、またさっきの穴にはまりたくなった。
 でも‥!
 仕方ないだろ! 僕だって、人並みに性欲もあるし、そういうお年頃だし!? アンバーはお色気魔人だし!? シークさんは僕と‥そんなにいちゃいちゃしてくれないし‥。

 シークさんはホントに僕の事好きって思ってくれてるんだろうか‥。
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