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236.終わりじゃない。
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僕とフタバちゃんは攻撃用ロットに手を掛け、シークさんは愛用の剣、ロナウは家宝の! 剣に手を掛ける。ザッカさんはさりげなくナナフルさんを背中に庇い周りを警戒する。(あ、剣は出してこないんですね? って思ったのは内緒だ。ちょっとザッカさんの剣を振るうとことか見てみたかった‥)
アンバーは‥
なんかゆったりした顔でまだ椅子に座ってる。
「皆がやってくれるから大丈夫でしょ」
とか‥
なめとるのかって感じだが、‥まあ、そうだろう。
このメンバーだったら心配ない。
(にしても‥)アンバーは肝がすわってるよね。
「事務所が壊れたら困る」
賃貸だしってザッカさんが言って勢いよく裏山の方に走って、僕らもそれに続き、それにぴったりとついてくる形で敵さんが走った。
走りながら火球だとかが飛んでくるんだけど、事務所には当たらない‥のは、今だ事務所にいるアンバーが結界を張っているからだろう。
アンバーは事務所から出ることはなさそうだ。
魔法戦には強くないナナフルさんもお休みだ。
同じくザッカさんにもお休みしてもらってた方がホントはいいんだけど、ザッカさんが一番に飛び出しちゃったから仕方が無いかなって。
「ロナウ! 落ち着きなさい‥」
ボソリとフタバちゃんが言って、はっと振り向くと、ロナウが「ソードハイ」みたいな顔になってる。
でも、剣で何かを切ろうとしてるんじゃなくて、剣を構えて周りの魔術士の魔力を吸収してるって感じ。
剣を持って人が変わってるんじゃない。
‥久し振りに暴れられるのが面白くって仕方ないって感じ。
あ。これ戦闘凶って奴??
ま‥分かるけどネ
恋もドキドキするけど、バトルもドキドキするよネ。
相手の気持ち考えないでいいから、楽だよね。バトル。
やるゾ~!
って敵さんを振り向いた時には‥
もう、全員倒れてた。
ロナウに魔力を吸われて魔力切れのところをロナウとシークさんに剣でボコられた魔術士、火球を「カット&氷結」で消されて、自身も氷結されてる魔術士(フタバちゃんの仕事だな。よかったね、クラッシュされなくて)
とらえるのかな? って思ってたら、すんでのところで逃げられた。
氷結から「辛うじて」解けた魔法使いだけ。
氷結魔法使いは、魔力切れの魔法使いを放っておいて‥きっと最後の力を出し切って転移魔法で逃げた。
辛うじてっていうか‥多分、「そうできるくらいの」力をフタバちゃんが残しておいたんだろう。
じゃなかったら、マーク&カット&クラッシュで肉片だった。
転移魔法で消える前に紐付けとこって思ったら、既に「黒い紐が伸びてる」のが見えた。
黒??
僕のつける紐は、魔力の紐だから透明だ。僕にだけ光って見える‥蜘蛛の糸みたいな奴。
だけどこの紐は黒い?
黒い紐の先をにぎってるのは、ロナウ。
「影ってね。集めるだけじゃなくって、泳がしとくことも出来るんだ」
って、上品に微笑んだロナウは‥
凄く楽しそうで、コイツは敵に回さないでおこうって思ったよ。
「飛んで火にいる夏の虫っていうのはああいうのをいうんだろうね」
って僕が言ったら
「どうせ、本体には絶対つながってないような雑魚だよ」
ひひ、ってアンバーが笑った。
だろうね~。
客が減った。
魔薬の原料が調達できない。
あいつらの仕業らしい。
許せなくね??
って売り子か、製造部の奴らが武装派の魔術士を送ってきたんだろう。
「売り子の方かな。製造部の方かな?? 僕としたら、製造部の方を希望。大量魔法陣製造工場とかめっちゃ興味ある」
ついうきうきした口調になっちゃった僕に、
「薬草栽培部かもよ? 」
フタバちゃんが苦笑いだ。
「それは‥もういいかな~」
なんて僕が言ってたら、ふっとロナウの表情が硬くなる。
「あ、影が消えた」
ぼそり、と誰に言うでもなく、呟く。
「だろうね」
それに対して、アンバーも冷たく呟く。
失敗しておめおめ帰ってきたのか! ってなったんだろうね。
で、悪人の定番、「失敗したら死ね」ってなったんだろう。
だったら、ここで伸びて、ぐるぐる巻きに縄で縛られて転がされてる奴らみたいに僕らに捕まってた方がましだったんだろうね~。
あの時、ロナウにもう枯渇寸前まで魔力を吸収されたから、大分しないと復活できないだろうけど、「念のため」ってアンバーが「例の」魔力を使えなくする首輪を全員にはめた。アンバーって結構いろんなもの持ってる。一体どこに隠し持ってるんだろ。(危険な奴だよね)
奴らは、明日にでも騎士団が連れて行く。
騎士団っていって、(この前みたいな)悪の組織に買収されてるような「地元の騎士団」とかじゃない。騎士紋持ちしか入れないような、ちゃんとした国家公務員だ。地元の警備隊的な騎士団とは違って、試験も難しいし、訓練も厳しい。(ザッカさんもこの訓練に行って騎士になった。この試験に受かって訓練を受けたら城の近衛兵も花形の騎士団入団も思いのままらしいけど、ザッカさんは「俺は、ナナフルだけの騎士でいい」って村に帰ってきたってわけだ。)
この騎士団も魔術師上がりの騎士には冷たい。
そういう騎士も「必要なんだろうけど、わが隊にはいらない」って‥目の敵にしてる。
どっちかというと、魔術士なんか大嫌いだ、何かちょっとでも不正を見つけたらしょっ引いてやるぜっていう感じの組織。
ザッカさんの知り合いらしい。(訓練時代の仲間が多く所属してて、彼らとザッカさんはいまだに交流が続いているらしい)
「奴らが捕まったからと言って、本体の‥悪の組織は痛くもかゆくもないんだろうけどな」
ってザッカさんは苦笑いする。
本体の逮捕には絶対に繋がらない様な雑魚だけど、悪いことしてる奴は捕まった方がいい。
僕らの為じゃなくって、「奴ら(雑魚)」の為に。
捕まって、罪を償って、いつか「普通の」暮らしが出来るようになったらいいなって思う。
って僕がしみじみ呟くと、
「ん~。今まで魔術しか使ってこなかった奴だろ? まともに学校も行かせてもらってなさそうだし‥。魔力を封印されたら普通の職にも就けないだろうし‥困るだろうね」
ロナウが苦笑いして
「可哀そうだけど‥僕らには何も出来ない。ただ、不幸だった‥としか言えないね」
って、魔術士たちに憐憫の眼差しを送った。
「そんな目で見られる方が俺は嫌だけどね」
って言ったのは、アンバー。
「可哀そうな奴って言葉で集結してやるな。‥これから先、こいつらはまた違った生活が始まるだろう。
自分は可愛そうって言ってたところでどうにもならないんだ。
「このままじゃいやだ」ってこいつらが思えたなら‥どうにでもなる」
ザッカさんが言葉を続け
「私みたいに、今までの暮らしを捨てさせてくれる、大事な人に会えるかもしれないしね」
そんなザッカさんにナナフルさんが優しく微笑みかける。
そんな奇跡みたいなことがあったらいいのにな、って思う。
「失敗して、絶望して、‥それでもやり直せる機会が与えらえない生活なんて、送るもんじゃない。総てを失って、悔し泣きしたって、それでも命があれば‥やり直せる。
命がある限り、やり直さなきゃいけない。
誰も助けてくれなくたって、信じてた人に見捨てられても、それどころか信じてた人に裏切られて誰も信じられなくなったって、一人で生きていかなければいけない。
誰のせいなんて言ってられないし、運命を恨んでも仕方が無い。
人間は一人で産まれて一人で死んでいく生き物なんだ。
苦しいだろうけど‥これから先、いいことなんてないかもしれないけど、それは‥でも、それこそが君の人生だ。
命を人質にとられて、ただ利用されるためだけに生かされて来た今までとは違う」
魔術士たちに背を向けて立ち、平坦な口調で独り言のように言ったナナフルさんの言葉を聞いて、さっきまで伸びてた‥もう実は大分前に目が覚めていた‥魔術士たちが静かに泣いた。
彼らの人生を僕らは、「捕まえることによって」終わらせないで済んだ。だけど、僕らは「泳がせることによって」別の奴らの人生を終わらせてしまった。
僕らは‥彼らを利用しようとして、見捨てたんだ。
僕らが「殺した」彼らの命を、僕らは「一生覚えて、胸に刻んでいくこと」で償っていかなければいけないんだ。
アンバーは‥
なんかゆったりした顔でまだ椅子に座ってる。
「皆がやってくれるから大丈夫でしょ」
とか‥
なめとるのかって感じだが、‥まあ、そうだろう。
このメンバーだったら心配ない。
(にしても‥)アンバーは肝がすわってるよね。
「事務所が壊れたら困る」
賃貸だしってザッカさんが言って勢いよく裏山の方に走って、僕らもそれに続き、それにぴったりとついてくる形で敵さんが走った。
走りながら火球だとかが飛んでくるんだけど、事務所には当たらない‥のは、今だ事務所にいるアンバーが結界を張っているからだろう。
アンバーは事務所から出ることはなさそうだ。
魔法戦には強くないナナフルさんもお休みだ。
同じくザッカさんにもお休みしてもらってた方がホントはいいんだけど、ザッカさんが一番に飛び出しちゃったから仕方が無いかなって。
「ロナウ! 落ち着きなさい‥」
ボソリとフタバちゃんが言って、はっと振り向くと、ロナウが「ソードハイ」みたいな顔になってる。
でも、剣で何かを切ろうとしてるんじゃなくて、剣を構えて周りの魔術士の魔力を吸収してるって感じ。
剣を持って人が変わってるんじゃない。
‥久し振りに暴れられるのが面白くって仕方ないって感じ。
あ。これ戦闘凶って奴??
ま‥分かるけどネ
恋もドキドキするけど、バトルもドキドキするよネ。
相手の気持ち考えないでいいから、楽だよね。バトル。
やるゾ~!
って敵さんを振り向いた時には‥
もう、全員倒れてた。
ロナウに魔力を吸われて魔力切れのところをロナウとシークさんに剣でボコられた魔術士、火球を「カット&氷結」で消されて、自身も氷結されてる魔術士(フタバちゃんの仕事だな。よかったね、クラッシュされなくて)
とらえるのかな? って思ってたら、すんでのところで逃げられた。
氷結から「辛うじて」解けた魔法使いだけ。
氷結魔法使いは、魔力切れの魔法使いを放っておいて‥きっと最後の力を出し切って転移魔法で逃げた。
辛うじてっていうか‥多分、「そうできるくらいの」力をフタバちゃんが残しておいたんだろう。
じゃなかったら、マーク&カット&クラッシュで肉片だった。
転移魔法で消える前に紐付けとこって思ったら、既に「黒い紐が伸びてる」のが見えた。
黒??
僕のつける紐は、魔力の紐だから透明だ。僕にだけ光って見える‥蜘蛛の糸みたいな奴。
だけどこの紐は黒い?
黒い紐の先をにぎってるのは、ロナウ。
「影ってね。集めるだけじゃなくって、泳がしとくことも出来るんだ」
って、上品に微笑んだロナウは‥
凄く楽しそうで、コイツは敵に回さないでおこうって思ったよ。
「飛んで火にいる夏の虫っていうのはああいうのをいうんだろうね」
って僕が言ったら
「どうせ、本体には絶対つながってないような雑魚だよ」
ひひ、ってアンバーが笑った。
だろうね~。
客が減った。
魔薬の原料が調達できない。
あいつらの仕業らしい。
許せなくね??
って売り子か、製造部の奴らが武装派の魔術士を送ってきたんだろう。
「売り子の方かな。製造部の方かな?? 僕としたら、製造部の方を希望。大量魔法陣製造工場とかめっちゃ興味ある」
ついうきうきした口調になっちゃった僕に、
「薬草栽培部かもよ? 」
フタバちゃんが苦笑いだ。
「それは‥もういいかな~」
なんて僕が言ってたら、ふっとロナウの表情が硬くなる。
「あ、影が消えた」
ぼそり、と誰に言うでもなく、呟く。
「だろうね」
それに対して、アンバーも冷たく呟く。
失敗しておめおめ帰ってきたのか! ってなったんだろうね。
で、悪人の定番、「失敗したら死ね」ってなったんだろう。
だったら、ここで伸びて、ぐるぐる巻きに縄で縛られて転がされてる奴らみたいに僕らに捕まってた方がましだったんだろうね~。
あの時、ロナウにもう枯渇寸前まで魔力を吸収されたから、大分しないと復活できないだろうけど、「念のため」ってアンバーが「例の」魔力を使えなくする首輪を全員にはめた。アンバーって結構いろんなもの持ってる。一体どこに隠し持ってるんだろ。(危険な奴だよね)
奴らは、明日にでも騎士団が連れて行く。
騎士団っていって、(この前みたいな)悪の組織に買収されてるような「地元の騎士団」とかじゃない。騎士紋持ちしか入れないような、ちゃんとした国家公務員だ。地元の警備隊的な騎士団とは違って、試験も難しいし、訓練も厳しい。(ザッカさんもこの訓練に行って騎士になった。この試験に受かって訓練を受けたら城の近衛兵も花形の騎士団入団も思いのままらしいけど、ザッカさんは「俺は、ナナフルだけの騎士でいい」って村に帰ってきたってわけだ。)
この騎士団も魔術師上がりの騎士には冷たい。
そういう騎士も「必要なんだろうけど、わが隊にはいらない」って‥目の敵にしてる。
どっちかというと、魔術士なんか大嫌いだ、何かちょっとでも不正を見つけたらしょっ引いてやるぜっていう感じの組織。
ザッカさんの知り合いらしい。(訓練時代の仲間が多く所属してて、彼らとザッカさんはいまだに交流が続いているらしい)
「奴らが捕まったからと言って、本体の‥悪の組織は痛くもかゆくもないんだろうけどな」
ってザッカさんは苦笑いする。
本体の逮捕には絶対に繋がらない様な雑魚だけど、悪いことしてる奴は捕まった方がいい。
僕らの為じゃなくって、「奴ら(雑魚)」の為に。
捕まって、罪を償って、いつか「普通の」暮らしが出来るようになったらいいなって思う。
って僕がしみじみ呟くと、
「ん~。今まで魔術しか使ってこなかった奴だろ? まともに学校も行かせてもらってなさそうだし‥。魔力を封印されたら普通の職にも就けないだろうし‥困るだろうね」
ロナウが苦笑いして
「可哀そうだけど‥僕らには何も出来ない。ただ、不幸だった‥としか言えないね」
って、魔術士たちに憐憫の眼差しを送った。
「そんな目で見られる方が俺は嫌だけどね」
って言ったのは、アンバー。
「可哀そうな奴って言葉で集結してやるな。‥これから先、こいつらはまた違った生活が始まるだろう。
自分は可愛そうって言ってたところでどうにもならないんだ。
「このままじゃいやだ」ってこいつらが思えたなら‥どうにでもなる」
ザッカさんが言葉を続け
「私みたいに、今までの暮らしを捨てさせてくれる、大事な人に会えるかもしれないしね」
そんなザッカさんにナナフルさんが優しく微笑みかける。
そんな奇跡みたいなことがあったらいいのにな、って思う。
「失敗して、絶望して、‥それでもやり直せる機会が与えらえない生活なんて、送るもんじゃない。総てを失って、悔し泣きしたって、それでも命があれば‥やり直せる。
命がある限り、やり直さなきゃいけない。
誰も助けてくれなくたって、信じてた人に見捨てられても、それどころか信じてた人に裏切られて誰も信じられなくなったって、一人で生きていかなければいけない。
誰のせいなんて言ってられないし、運命を恨んでも仕方が無い。
人間は一人で産まれて一人で死んでいく生き物なんだ。
苦しいだろうけど‥これから先、いいことなんてないかもしれないけど、それは‥でも、それこそが君の人生だ。
命を人質にとられて、ただ利用されるためだけに生かされて来た今までとは違う」
魔術士たちに背を向けて立ち、平坦な口調で独り言のように言ったナナフルさんの言葉を聞いて、さっきまで伸びてた‥もう実は大分前に目が覚めていた‥魔術士たちが静かに泣いた。
彼らの人生を僕らは、「捕まえることによって」終わらせないで済んだ。だけど、僕らは「泳がせることによって」別の奴らの人生を終わらせてしまった。
僕らは‥彼らを利用しようとして、見捨てたんだ。
僕らが「殺した」彼らの命を、僕らは「一生覚えて、胸に刻んでいくこと」で償っていかなければいけないんだ。
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