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256.話してることと隠してること。

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「‥え、なにそれ。聞いてないけど」
 ザッカは一瞬鬼の様な表情を見せたけど、流石にそれはマズいって思ったのか、笑顔で聞き返した。
 ‥もっとも、その笑顔は引きつってて‥結局さっき以上に怖かったんだけど。
「この前話したじゃないですか~。虫みたいなのを作るって」
 ここでびびってたら話が進まない‥し、更に空気みたいなもの(何かは分からない。分かりたくない)が悪くなるからなるだけ平生を装って、コリンが言った。
 ‥しかしなんでこんなに怒ってるんだ? 黙ってたくらいで??
 ザッカは相変わらず、さっきの笑顔だ。
「ああ、話した。でも、完成したとは聞いてないし、ましてや実行してるとか聞いてない」
 ああ‥やっぱり黙ってたことを怒ってた。
 何だろ‥のけ者にされたみたいでイヤ! とかじゃないよね?? 
 ‥わからん!
「でも‥計画すればそりゃ実行しますよ。フットワークが命ですよ。
 ‥でもすみません。お話してなかったですよね」
 苦笑いして、コリンは謝った。
 が、
 なんで謝るんだ僕が!? 
 ってちょっと不満だ。
 報・連・相の義務違反か?! 
 だけど、業務上のことだったらそりゃ上司であるザッカさんに報告するけど‥この件は違うからそこまで報告の義務はないんじゃないかな!? 
 こころの中はこんな感じ。
 全然反省とかしてない。
 それをコリンの表情からか、今までの行いからか察知したザッカは
「‥そりゃ、この件は‥確かに業務じゃない。
 この件の上司は俺じゃない。
 でも‥ここでの保護者として俺はコリンのことが心配なんだ。
 分かるだろ? 
 俺やナナフルの知らないところでコリンに危険な目に会って欲しくないんだ」
 ザッカは、頭をがりがりかきながら、苛立ち交じりの口調で言った。
 保護者‥。
 そうだよね。‥保護者だったら、「直属の上司とかじゃなくても」心配だよね‥。
 ザッカさんはずっと僕を保護者として見守ってくれてたよね‥。
「ホントに‥すみませんでした。
 ‥でも‥いや‥でもってのも言い訳みたいでいやだけど‥ホントに、安全な奴です。
 僕が直接攻撃するわけじゃないから絶対怪我しないし、捕まえたら紙の燃えカスみたいになって消えちゃうタイプだから僕が作ったって絶対バレないです。
 魔薬が今日も作られてるっていうのに、何もせずにいることが‥どうしてもできなかったんです。
 邪魔をしたい‥その一心でした」
 誠実に、
 コリンは自分の気持ちを全部ザッカに伝えた。
「言ったら反対されるかもしれないから内緒にしようって‥そんな考えは全然なかったです。ただ、忘れてた‥というか「これくらいは独断で実行してもいいかな」って‥そう思ったんです」
 全部聞き終わって、ザッカはちいさくため息をついて、
「‥これからは何でも相談して欲しい。
 万が一でも‥怪我とかさせたくない」
 とだけ言った。
 コリンが肩をすくめながら頷くと、ナナフルとシークも「ホントにそう」って表情をして頷いた。
 いたたまれなくって視線をそらすと、台所でアンバー柱にもたれかかって立っているのが見えた。その顔は‥ニヤニヤしていた。
 あれだ、コリンが怒られてるのが面白くって冷やかしてるんだ。「やーいww怒られてやんのww」って揶揄ってるんだ‥。
 ‥ホント、腹立つ。
 だけど、心配させたくないし(馬鹿になんてもっとされたくないし)‥もう金輪際しない様にしよう‥。
 そう誓ったコリンだった。


(コリンside)

「で、もうないのか? 俺たちに黙ってること。
 三人で計画してた内容‥については、このあと三人揃って聞くことにするけど。
 他はないか? 」
 ザッカさんの「疑ってます」って視線、ホントやめて欲しいな~。もうないよ~。
 コリンが眉を寄せた困り顔で頷く。
「無いです」
 ない‥と思う。
 多分‥あ‥でも‥
「‥あれはでも、言いましたよね? 」
 言ったっけ。どうだっけ。でも、シークさんには言った‥気がする。いろんなことがあったからなんかわかんなくなってきちゃった。
「同窓会をしました」
 そう言うと、ザッカがカレンダーのところに行き「聞いた。この日だったよな」って確認をした。
「そうですそうです」
「そもそもなんで急に同窓会なんか開こうと思ったんだ? 」
 ザッカが席につきながら首を傾げる。
「あれはフタバちゃんの発案で‥
 違法薬物をロナウが新事業として取り扱おうとしてますよ‥ってことをにおわせ、皆の反応を見るってのがその目的でした」
「は!? 」
 叫んで、ザッカさん絶句。
 あ‥
 これ‥アウトだった??
「‥それで? 」
 呆れ果てて? るザッカに変わりナナフルが続きを促す。
「でも、それは嘘で‥というかその目的は「誰かアクションを起こす人が居たらいいかな」って位のもので‥ホントの目的は「ロナウなんかが手を出すようなヤバい事業」っていうイメージを魔薬に植え付けて、同級生が魔薬を買わない‥以前に興味を持たない様に仕向ける為だった‥ってフタバちゃんが言ってた」
「う~ん‥」
 ナナフルさんが‥
 こいつらホント考えなし‥
 って顔してる~。
「その結果‥コリンは魔薬販売組織に目をつけられて‥誘拐されかけたよね? 」
 小さくため息をついて、ナナフルさんが言った。
 ああ誘拐‥されたね。
 誘拐っていうか、おびき寄せたっていうか? 
「でも、あれも計画の内だった‥っていうか」
 あ‥マズいな。
 ホント‥マズい。大丈夫だって思ってました。とか通じないだろうな~‥。
「‥でも、収穫はあった‥ですよね。やっぱ‥アレですよ。虎穴に入らずんば虎子を得ずって言うじゃ‥ないですか?? 」
 にこっと笑ってコリンが言った。
 秘儀・笑って誤魔化す!
 ザッカのターン
「俺は学がないからか、そんな無謀な脳筋が言うような諺は知らんな。
 俺は「君子危うきに近寄らず」タイプだ」
 笑って誤魔化す、通じず。
 ザッカ、魔王の微笑発動‥っ!
 ザッカさん‥だから‥怖いですって‥。
 ‥絶対知ってるじゃないか「虎穴‥」。コリンはもう冷や汗がだらだらで‥なんか背中が冷たい。
「コリンには情報収集の方法をまず教えなきゃいけないみたいだね。
 ‥君ホントに一流の魔法使いなの? あまりに脳筋過ぎない? 」
 ナナフル参戦。
 ナナフル、秘儀・オカンと書いて魔王と読む発動。
 魔王の微笑を凌駕する女神オカンの微笑‥っ!
「スミマセンでした!! 」
 コリンは顔面蒼白で平謝りだ。
 が‥
「‥他は‥ないのか? 」
 ‥ダークホース。過保護な聖人、シーク様が‥怒ってらっしゃる!!
 表情には殆ど出てないけど‥僕には‥
 え!? 
 ‥全然分からない。
 これは‥ホントの無表情‥っ!
「‥同窓会がきっかけで僕が優秀な魔法使いだった(※ こんなときに自分の事自慢したみたいないい方したわけじゃないです! そうカールが言ったんです。‥確か)って思い出した友人が連絡をくれて、様子がおかしかった妹を診たんです。そしたら‥魔薬を使用してるって分かって‥。魔薬を除去‥つまり、魔法陣を破壊しました。
 それ以来その噂を聞きつけて、何人かそういう友人が‥」
 データ集めの役にたってくれてます‥。
 あ~でも、これも「罠」とかの危険性があったよね~。
 友人を語って僕らをおびき寄せる‥とかあったかも。‥幸運にもそういう奴らに出会わなかっただけで、‥運が悪ければ会ってたかもしれない。
 危険予知を怠ってた。
 ‥それはザッカさんも思ったらしく‥
 ザッカさんの顔が‥もう怒りで真っ赤になってる~!! ナナフルさんは呆れ過ぎて‥表情筋が働きを拒否してる‥。彫刻みたいです! 美しいです! お部屋に飾っておきたいです! 
 だけどシークさんの顔には‥
 ちょっと血の気が戻った。
「それは‥良かった。誰かの助けになるきっかけになったのは‥無駄じゃなかった」
 ‥天使‥。
 天使です!! シークさん!
 僕、今までの陰謀と計画に塗れた生活が恥ずかしくなりました!
 言い訳と誤魔化ししかなかった生活とか‥ホント‥クズですよね!!

 ホントに反省しました!
 もう‥皆に内緒で何かすることなんて金輪際、ホントにしません!!
 だから‥そろそろ許して~!!
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