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257.もう内緒ごとなんてない。

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「もう‥流石にない‥と思います」
 ぐったりしながら言ったコリンに、アンバーは大爆笑、シークはまだちょっと怒ってるけど‥でも気の毒かも? って顔をした。(ちょっとだけね)
 その後、コリンはフタバとロナウを呼んで、大捕り物は誓約士協会と警察に任せるって話をした。
 ロナウは不満そうな顔をしたけど、フタバは
「‥仕方がないわね」
 ってあっさり承諾してくれた。
 苦笑いしながら
「そもそも、私たちに逮捕権とかないわけだしね」
 って言ったフタバにロナウも
「‥そりゃね‥」
 しぶしぶ納得したって感じ。でもちょっと苦笑いして
「だけど‥なんか、今まで僕らだけでやるって思ってたから‥なんかね」
 って言ったロナウの気持ちは‥コリンとフタバにも痛い程分かった。
 だけど‥だ。
 もう決めたことだから。
 ふう‥と小さく息を吐き
「だけど、僕らはまだ僕らにしか出来ないことがある。それを今のうちに‥本格的に警察や誓約士協会が動き出す前にしておかないといけない」
 そうフタバとロナウに言ったコリンにザッカの監視の目が光る。
 ‥コリン! まだ凝りてないのか!?
 って目が物語ってるけど‥
 違うから! 聞いてください! 
「魔薬ってさ‥
 売った人間だけじゃなくって買った人間も捕まるわけでしょ? 
 流石にさ‥
 僕も自分の知り合いが捕まるのはちょっと‥って思うワケなの。
 だから‥先に僕らの知り合いだけでも「シロ」にしときたいなって」
 まあ‥ズルだけど、人間だからね。そういうことはやっぱ考えるわけ。
 今までだったらそんなこと考えなかっただろうけど‥僕も変わったなあって思う。
 僕らsideで都合の悪いことはあらかじめ隠して、見られちゃだめなものはあらかじめ消してしまっておきたい。
 そもそも‥ホントの意味で「シロ」になるわけじゃないけど、見掛けだけでも‥ね。魔薬を買うに至った「こころの傷」とかは‥でも、本人が癒していくしかない。‥そこまでのケアは僕らには出来ないからね。
 僕らが出来ることは、魔薬を抜く‥「不法な魔法陣」を破壊する‥ことだけ。
 それがホントに本人の為になるのか? ‥とかは‥でも今回は考えないでおくことにする。

「もう一度同窓会をしよう。‥今度は、同級生だけじゃないけど。
 今まで僕らが解呪してきた人たちに連絡して他にも知り合いにそういう‥疑わしい人たちがいないか聞いて、そういう人たちを集めて‥
 会場で一斉に魔法陣を破壊しちゃおう。だけど、魔薬って言葉を口にすることは出来ないから‥ここでも、解呪ってことにする。
 その一斉解呪をするのは‥ロナウをリーダーにした共同体だ。
 アンバーなら、会場内を一斉に解析できる。それで、ロナウの能力で対象者の影を集めて‥フタバちゃんが空間を切り取って‥ロナウの能力で魔力吸い取り。これで魔法陣が無力化する。
 それで、魔法陣と契約者‥つまり服用者との契約を解除、破壊するのが、僕」
 魔薬って言葉を口に出さないから解呪なんだけど‥
 う~ん。大除霊大会とかって‥なんか怖いな。オカルトは好きじゃない‥。
 まあ‥オカルトっぽい状況にはなるかな。 
 切り取られた空間に閉じ込められた数人が(きっと)叫び狂うわけだしな‥。(多分。魔法陣の一方的な契約解除って痛いらしいから)でも、やらなきゃ仕方ないことなわけで‥。対象者だって全員今頃こんなもんに手を出したことを後悔してると思うし‥。
 普通に、人助けだよ。
 光景はどうあれね。
 ‥対象者に「魔薬を抜いてやる」って知らせるだけじゃダメ。周りにも「こういうことするよ~」って言っとかないと‥会場が地獄絵図とかしちゃう‥
 だってさ。
 ただでさえ日常じゃ大きな魔法が使えなくって(多分)色々と溜まってるストレスフルな潜在的サイコな魔法使いどもだ。
「なんだ!? コーナー!? (← コリンの苗字)攻撃か? 」
「喧嘩ならかうぞ! 」
 って、いい機会! とばかりに大暴れするだろう。
 僕もロナウも‥きっとフタバちゃんでさえ便乗して暴れる予感しかない‥。
 気が付けば「これ何の騒ぎ? 」って感じになって‥警察が来る騒ぎになる。
 ‥目に見えてる。
 だって、それが魔法使いの性格だから。

 いっそのこと「参加型の魔法ショー」みたいな感じにする? 
 これはショーですよ~喧嘩じゃないですよ~って感じで‥。
 まあ‥そういうのはフタバちゃんに後で考えてもらおう。
 

「つまり‥この計画の参加者は僕ら三人とアンバー。念のためにザッカさんとシークさんに用心棒(というか‥暴走しないための見張り役)をお願いして‥ナナフルさんにはいざという時の為に事務所で待機して欲しいんです。離れていても連絡できる通信石を用意しますね」
 ザッカが「仕方がないな」って顔をして、シークは無言でうなずいた。
 ザッカ的にも「ナナフルはお留守番」に不満はない。
 ナナフルがそこそこ強いのは知っているけど、危ない目に合わせたくないしね。
 それに‥
 わざわざコリンがそういうからには‥何か理由があるんだろう。
 ザッカはもう一度「分かった」と頷いた。

「‥ナナフルさんの姉妹‥赤いほうに会っておこうって思ってます。
 彼女は‥アンバーに執着していたようですから‥もしかしたらアンバーの名前を出したら来てくれるかもしれない。まあ‥来てくれなかったらその時です。
 あくまでついでですから。
 アンバーは出来れば表に出したくないから、この機会に全部しておきたいことをしておかないとなって思って‥。
 だから、ナナフルさんがいたら困るって思って‥」
 ザッカには、こそっとさっきの言葉の理由を説明しておいた。
 ザッカは
「そもそも、その女に会う必要があるか? 」
 って聞いたが、コリンは
「‥一応ナナフルさんの姉妹ですからね。
 これから捜査が始まって、関係者として捕まるってこともあるかもしれない。
 そうなったら‥無関係とはいえ‥嫌かなあって。
 そりゃ、絶対ナナフルさんには無関係ですよ? 
 その女が捕まったといっても、ナナフルさんには何の関係もない。
 だけどね‥全く知らないままってのもなんかね‥。
 せっかくだから、この機会に会う‥というかどんな奴か見極めときたいなって。
 で、もしヤな奴だったら心置きなく切り捨てられるしね」
 って言った。
 確かに‥会ったことないし、異母兄妹だけど‥ナナフルと半分は血がつながった妹‥かあ。
 ‥全く気にならないわけでは無い。
 ナナフルの母親を殺した伯爵夫人の娘ってことも‥気になる。
 そいつも
「愛人の息子が生きているなら‥殺しておかないと」
 ってタイプの女だったら‥俺がどんな手を使っても殺しておかないと‥とも思う。
 ナナフルならきっと
「もうどうでもいい」
 っていうだろうけど。
 俺は‥気が済まないんだ‥。
「その女の見極めについては、‥俺がしてもいいか? 」
 ザッカが低い声で聞いて、コリンがそれに頷いた。
 
 大捕り物が始まる前に僕たちの手でしておきたいこと。
 僕らの知り合いが捕まらない様に証拠隠滅しておく。
 ナナフルさんの家族を調べる。
 ‥何より、アンバーを守る。

 計画は決まった。
 あとは、細かい段取りを考えるだけだ!
 事務所のメンバーは、細かい打ち合わせをするために、久し振りにテーブルを囲むのだった。
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