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262.アンバーが彼女に会うまで(side コリン)

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 そりゃ、知ってるだろうな。
 アンバーと会った後だから。

「まずは俺のサイドから話させてもらう。その後、ナナベルが話してほしい」
 アンバーの話によると、ニックとペリドットは同郷で、ペリドットはニックの兄貴分ならしい。
 ペリドットはニックから
「貴族と知り合った」
 という話を聞き、
「ニックは馬鹿だから貴族に騙されていないか心配」
 とニックに会いに来たらしい。
 成程、とフタバちゃんが頷くと、ナナベルさんがちょっと嫌そうな表情をした。
「騙したりなんてしないわ」
 って小声で呟く。

 ペリドットはニックの同郷の兄貴分‥とアンバーはナナベルに説明していたが、後で僕らだけに、
 ニックもペリドットもアンバー同様例の拉致の里出身で、ニックはペリドットやアンバーと違い、魔法が苦手だっから「役職(と、特別な名前)」が与えられなかった「名無し」なのだという。「名無し」は、「役職」の手下として、街での情報収集等の「小さな仕事」を任されたりして、プライベートなんかで何か変わったことがあったら「役職」に伝えるのが義務になっている‥という。
 今回、ニックはペリドットに小遣い稼ぎ(町のゴロツキ)がきっかけで貴族の娘と知り合った‥という話を報告したのだ。
 野心家‥出世欲の強かったペリドットは「貴族? 新しい販路に繋がるかも」とナナベルのことを調べたら、ナナベルは家出しているし、若くて貴族の間での影響力は皆無。それどころか、本人は悪女って呼ばれてる嫌われ者。実家との関係も薄く、実家‥特に母親はナナベルに関心が薄く、例えば「ナナベルを誘拐した身代金出せ」って言っても応じないかもしれない程‥だと分かった。
 これは価値ないわ~。だけど、一応どんな女か見ておこうって見に来たってところだったらしい。しかも、アンバーに「一応色仕掛けでキープしとけ。何かに使えるかも」って命令するおまけつきだった。
 因みに、ペリドットの方がアンバーよりずっと年上だったから、アンバーに対して威圧的だっただけで、別にアンバーより魔術が優れていたわけでは無い(アンバー談)年上だったから、ニックの様な名無しを任されていただけで、別にアンバーより人徳があったわけではない(アンバー談)名無しは、便利な子分的存在であると同時に任された役職持ちは名無しの管理責任がある‥と説明してくれた。
 魔力が無い者も‥そりゃいるだろう。
 魔法使いと魔法使いの子どもだからって、100%魔法使いってことはない。でも、「魔法の素質」があれば、ある程度成長したら魔法が使える様になる子供が殆どだけど、それでも魔法が使えないままの子どもも、いる。だけど‥里の事知ってしまったからには、里から出すわけにはいかないってことだろう。
 ‥使えないから殺す、とかじゃなくてよかった。
 とまあ‥脱線したが、先輩のペリドットに色仕掛けを命じられたアンバーだけど、当時もっとイケイケでとがってたアンバーは「気が進まね~、好みじゃね~」ってそれ程やる気はなかった。だけど、ナナベルさんはアンバーを気に入ったらしくぐいぐい来た、じゃあまあ監視ついでに貢がせてやるか~と若い頃のアンバーは思ったらしい。
 最低だな、若い頃のアンバー。
 だけど、そんなことアンバーは勿論ナナベルさんに言わない。


(ナナベル、フタバ、アンバーの話続き。引き続き僕は隠れて盗聴) 
「そして、ペリドットさんと一緒に行ったアンバー様が‥ナナベルさんに会ったんですね」
 フタバちゃんが聞くと、アンバーは頷いて
「ナナベル嬢はまるでニックたちの親分の様に見えた。堂々としてたし‥やっぱりオーラが下町のゴロツキとは全然違った」
 って言った。褒められて(?)ナナベルさんがちょっと赤くなる。
「仲良くしておいて損はないかも、って思ったのが正直のところ」
 ふふってアンバーがよそいきの笑顔で言った。
「うそ、アンバーは私にそっけなかったわ」
 ナナベルさんがアンバーに食って掛かると、アンバーは苦笑いして肩をすくめ(ってか、これ全部演技ですよね‥)
「‥あの頃は俺も若くて、器用でも素直でもなかったんですよ」
 って言った。
 はい! それこそ嘘~!
 「‥あの頃は俺も若くて、イケイケでクズだった」の間違いだよね! 
 僕がドン引きしてると、ナナベルさんは苦笑いして
「‥私も16の子どもだったしね‥」
 ホント、子供だったわって呟いた。
 え! 16でお姉さんの結婚相手蹴散らしたりしてたの!? すご! 
 って思ってたら、フタバちゃんも驚いた顔してる。
「‥見た目は2歳上の姉とほぼ同じ年に見えたの。私たちは二卵性の双子みたいだったわ」
 ‥そうなんだ~。
 でも、ほんとは16のまだ子供。
 なのに、ペリドットには「利用価値ないわ~」って思われ、アンバーには「好みじゃないわ~(と、以前語っていた)」って思われ不当な扱いを受けてた‥と。不幸過ぎる‥。
「あ~。俺と4歳違いだったのか。同じかちょっと若いくらいかと思ってました」
 アンバーも流石に思うところがあったのか‥ばつが悪いって顔してる。
 そう! アンバーは反省しなさい!
「‥ペリドットと会ってから、何か変わりましたか? ‥例えば、ペリドットに何か頼まれたり‥とか」
 フタバちゃんは、慎重に言葉を選びながら聞いた。
 確かに「なんでそんなこと知ってるんだ」ってこと‥口にしちゃマズい。ペリドットの仕事とかね、そういうのも‥どうやらナナベルさんは知らなさそう。
 ナナベルさんは首をちょっと傾げて‥当時を思い出そうとしているんだろう、ちょっと難しい顔をした。
「‥特にそういうことはなかったわね。それどころか、ペリドットと話したりも‥特にしなかったわ」
 ああ、ペリドットは「こいつは使えない」ってわかったから、情報を絶対にナナベルさんに漏らさないようにしたんだね。‥そして、その代わりに監視役にアンバーをつけたってことか‥。
「じゃあ、アンバー様とも‥それ以降の付き合いはなかったってことですか? 」
 フタバちゃんが尋ねると、アンバーは頷き、ナナベルさんは
「ちょっと付き合ってた? かな? 」
 って言った。
 ‥付き合ってたって思ってたのはナナベルさんだけで、アンバーは「カモにしてただけ」‥ホント‥若い頃のアンバー最悪。
「‥あれからご実家には? 帰られましたか? 」
 最後に‥
 言いにくそうにフタバちゃんがナナベルさんに聞く。
 ナナベルさんは、「え? 」って首を傾げ‥
「帰ってないわ。私ね、もうあの家には帰りたくないの。ニックたちの家も出て、今はパン屋さんで住み込みで働いてるの。ニックたちともまだあったりはしてるのよ。‥今日は、アンバーが来るらしい‥ってニックから聞いて、ちょっと来てみただけ。アンバーが昔のままのクズで女の子を食い物にしてるようだったら一言言ってやろうって思ってたけど、違ったみたいだからもういいわ。その綺麗なお嬢さんとお幸せにね! 」
 って笑ったナナベルさんは、ホントに
 ナナフルさんに似てるなって思った。
 
 ナナベルさんを尾行してるのは‥誰なんだろう。
 ナナベルさんが言ったみたいに、ナナベルさんのお母さん? それとも‥白い彼女(姉)? 
 でもなんで今頃? 何のために? 
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