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18.集める。集まる。(side 梛木)
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家族かあ。
俺を産んだあの男女にもそんな「恋に一生懸命」なときあったのかな。
‥今じゃ女の顔色窺うだけのあの男も「俺が君を幸せにします」なんて言ってた時もあるのかな。
初々しい恋の果てが「アレ」って考えたら‥なんか馬鹿らしくなるね。
柊の兄ちゃんと楠が結ばれたとしても‥いずれはああなっちゃうのかな。
俺には「家族のかたち」なんて分かんないや。
家族って難しいよね。柊の兄ちゃんは楠のこと好きだけど、それは新しい家族になるって意味の好きとは違うだろう。ただ、好きってだけだ。恋愛と結婚は違うってよくある話だ。
しかもその「新しい家族」に俺は含まれないよ。‥普通は。
だけど、楠は違う。楠は多分‥俺を見捨てたりしない。‥そういう意味で、楠にとって俺たちは家族になれても、柊との恋愛はあり得ない‥気がする。
楠はホント、オカンみたいなんだ。
楠からホントの家族の話は聞いたことない。俺たちに遠慮してる? ってそれもあるだろうけど、それだけじゃない気もする。そんな気もするから、聞かない。
家族は‥難しいんだ。
八卦では、天が父で地が母だという。天や地は‥両方必要なものだよね。だけど、‥母がいない家も、父がいない家もある。子供がいない家族だって、逆に「じいちゃんもばあちゃんも叔父さんもいるよ」って家もある。
社会は相互扶助って天音ちゃんは言ってた。
全部が助け合って、一つの円になってる。
皆がそれぞれ自分の役目をすることで、結果的に、皆が上手く暮らしていける。
「社会保険と一緒って言ってたな。
だけど、社会保険に入ってる人は皆、保険料を払うって役目をしているぞ? 出資金である保険料を支払う人(加入者)を集める役割の人もいるし、保険料を支払う人間もいる。
‥ああ、そんな話をしてるんじゃなかったな。「誰の為でもない保険料」を皆で支払って、何かがあれば支払われるって話だったな。
だけど、それは「保険」に入ってる人間に限った話だ。保険料を支払っていない人間には支払われることはないので不公平はない。
タダ乗り(フリーライダー)は存在しない」
タダ乗りってのは、皆で積み立てるべき資金(例えば税金とかの対価)を支払っていないのに、保証だけ受ける(公共財を利用する)人間のこと。
例えば、義務である納税‥住民税やなんかを支払ってない人・Aの家が火事になったとき、Aは保証を受ける(火事を消してもらう)資格は無いけど、類焼したら周りの義務を守ってる家の人・Bにも迷惑になるよね。だから消す。それってAはタダ乗りじゃないか? って話だ。
「ああ‥そういうセコイことを言わず、「何かあったら皆で助け合えばいいじゃない」って話かな? 消防団とかそういう職業の人が仕事としてくるからなんなんであって、隣近所仲良く暮らしてて、困ってたら助け合いましょうね‥って」
今の時代にはそぐわない考え方かもなあ。
「家族だって今じゃgive and takeしっかりしてるよなあ。おじいちゃんの肩を叩いた孫は「じいちゃん、お駄賃! 」ってちゃっかり手を出すよな」
損得勘定抜きの相互扶助って関係ってのはあるんだろうか?
「昔にはあったんだろうねえ」
父母は子を愛し、厳しく教育し、子は父母を敬愛し、社会の為に勉学に励む。
長兄、長女は愛する父母というより「尊敬し、従わなければいけない存在」として父母に接し、弟妹の世話をする。弟妹は長兄長女の言うことに従う。古き時代の日本の家族の在り方だ。父親は別格。食事の席も上座。しかも当時は円卓とかじゃなくって、各自膳で食べてたから、家族団らんワイワイって感じじゃなかった。実はかかあ天下だろうと、父親はやっぱり別格。母親は父親をたてて、子供たちには「父ちゃんは頼りない」とか言わなかっただろう。イメージだけどね。‥いや、離婚したような家庭は知らんよ? あったよね、江戸時代も離婚。
でもまあ‥生活が苦しかったから、お互い助け合わなきゃって思いは今よりずっと強かっただろう。
損得勘定で動ける人間ってのは、生活に少し余裕がある人間だけだっただろう。その日の生活にいっぱいいっぱいの人間はそんなこと言ってられなかっただろう。
昔の人の「隣の芝」はそう青くなかっただろう。
「お前さん、あたしゃ隣の芝のが青い気がするんだ。‥それが羨ましくってならないよ」
「隣の芝のが青い? じゃあお前、ちょっと行ってもらって来いよ、鍋に放り込んで食っちまったら同じだ。そうかわりゃしないや」
‥みたいな話で終わるだろう。(芝は食えんが)そもそも‥芝とか生えてないしな。
社会は豊かになって色々選択肢が増えた故に要らん嫉妬心も生まれたって話だな。
理想の家族ってのもそうだ。昔もそりゃ「隣の母ちゃんのが優しくてええな」ってのはあっただろうが、それはそれ。母ちゃん‥親ってのは、子供が独立するまでの間、寝食を保証して、一般常識を教えるだけの存在だ。親が嫌いならさっさと独立する。それだけで、子供に「理想の親」っていう概念はなかっただろう。
「自分がああいう親にならんようにすればいい」
そういうの。
思えばそれが前向きってもんなのかもな。昔の子今の子供子供よりもっと逞しかったって思う。‥そもそも、昔はそれが出来たよな。今の社会は「身分証明」やら「学歴」やら‥飛び出した自立希望の子供に厳しい社会だよね。
現に今俺も結局保護を受けてます。
楠にだけじゃなくて‥この会社にもね。
いっぱい、保護を受けてる。
「俺もね。‥別に養ってくれる理想の親を求めてるわけじゃないの」
‥ただね、暇つぶし。ぼ~っとしてたら「要らないことばかり考えて」気が狂いそうになるから。だから、出来るだけ色んな事考えるようにしてる。桂ちゃんからパソコン教わったりね、八卦を勉強したり、知らないこと片っ端から頭にいれてる。
あとね、親に捨てられた可哀そうな子って思われたら‥それ以上に自分で自分のこと考えたら‥ホントに「可哀そうで情けないやつ」になってしまいそうな気がする。だから、あの人たちのことを忘れるために‥「別の記憶」を作るために‥理想の親を作りたいだけ。(これがきっと本心)
お人好しで優しくってだけど芯の強いカアチャン。(楠)
カアチャンのことが大好きで、普段はちょっと頼りないけどいざとなったら頼りになる(多分)トウチャン。(柊の兄ちゃん)
しっかり者で優しい姉ちゃん(桂ちゃん)
ちゃっかりしてて頼りになる兄ちゃん(柳の兄ちゃん)
俺の今の家族。
俺が集めたわけじゃない。ただ、偶然気付いたら俺の周りにいてくれた‥新しい家族。
損得勘定抜きで俺の傍に居てくれる人たち。
‥あの人たちの為に何が出来るかは分からないけど、天音ちゃんが言ってたみたいに家族として相互扶助の関係になれたらいいのにな、って思う。
いつか、あの人たちにとって、俺が、居てあたりまえ。居るだけで十分って存在になれたらなって思う。
俺を産んだあの男女にもそんな「恋に一生懸命」なときあったのかな。
‥今じゃ女の顔色窺うだけのあの男も「俺が君を幸せにします」なんて言ってた時もあるのかな。
初々しい恋の果てが「アレ」って考えたら‥なんか馬鹿らしくなるね。
柊の兄ちゃんと楠が結ばれたとしても‥いずれはああなっちゃうのかな。
俺には「家族のかたち」なんて分かんないや。
家族って難しいよね。柊の兄ちゃんは楠のこと好きだけど、それは新しい家族になるって意味の好きとは違うだろう。ただ、好きってだけだ。恋愛と結婚は違うってよくある話だ。
しかもその「新しい家族」に俺は含まれないよ。‥普通は。
だけど、楠は違う。楠は多分‥俺を見捨てたりしない。‥そういう意味で、楠にとって俺たちは家族になれても、柊との恋愛はあり得ない‥気がする。
楠はホント、オカンみたいなんだ。
楠からホントの家族の話は聞いたことない。俺たちに遠慮してる? ってそれもあるだろうけど、それだけじゃない気もする。そんな気もするから、聞かない。
家族は‥難しいんだ。
八卦では、天が父で地が母だという。天や地は‥両方必要なものだよね。だけど、‥母がいない家も、父がいない家もある。子供がいない家族だって、逆に「じいちゃんもばあちゃんも叔父さんもいるよ」って家もある。
社会は相互扶助って天音ちゃんは言ってた。
全部が助け合って、一つの円になってる。
皆がそれぞれ自分の役目をすることで、結果的に、皆が上手く暮らしていける。
「社会保険と一緒って言ってたな。
だけど、社会保険に入ってる人は皆、保険料を払うって役目をしているぞ? 出資金である保険料を支払う人(加入者)を集める役割の人もいるし、保険料を支払う人間もいる。
‥ああ、そんな話をしてるんじゃなかったな。「誰の為でもない保険料」を皆で支払って、何かがあれば支払われるって話だったな。
だけど、それは「保険」に入ってる人間に限った話だ。保険料を支払っていない人間には支払われることはないので不公平はない。
タダ乗り(フリーライダー)は存在しない」
タダ乗りってのは、皆で積み立てるべき資金(例えば税金とかの対価)を支払っていないのに、保証だけ受ける(公共財を利用する)人間のこと。
例えば、義務である納税‥住民税やなんかを支払ってない人・Aの家が火事になったとき、Aは保証を受ける(火事を消してもらう)資格は無いけど、類焼したら周りの義務を守ってる家の人・Bにも迷惑になるよね。だから消す。それってAはタダ乗りじゃないか? って話だ。
「ああ‥そういうセコイことを言わず、「何かあったら皆で助け合えばいいじゃない」って話かな? 消防団とかそういう職業の人が仕事としてくるからなんなんであって、隣近所仲良く暮らしてて、困ってたら助け合いましょうね‥って」
今の時代にはそぐわない考え方かもなあ。
「家族だって今じゃgive and takeしっかりしてるよなあ。おじいちゃんの肩を叩いた孫は「じいちゃん、お駄賃! 」ってちゃっかり手を出すよな」
損得勘定抜きの相互扶助って関係ってのはあるんだろうか?
「昔にはあったんだろうねえ」
父母は子を愛し、厳しく教育し、子は父母を敬愛し、社会の為に勉学に励む。
長兄、長女は愛する父母というより「尊敬し、従わなければいけない存在」として父母に接し、弟妹の世話をする。弟妹は長兄長女の言うことに従う。古き時代の日本の家族の在り方だ。父親は別格。食事の席も上座。しかも当時は円卓とかじゃなくって、各自膳で食べてたから、家族団らんワイワイって感じじゃなかった。実はかかあ天下だろうと、父親はやっぱり別格。母親は父親をたてて、子供たちには「父ちゃんは頼りない」とか言わなかっただろう。イメージだけどね。‥いや、離婚したような家庭は知らんよ? あったよね、江戸時代も離婚。
でもまあ‥生活が苦しかったから、お互い助け合わなきゃって思いは今よりずっと強かっただろう。
損得勘定で動ける人間ってのは、生活に少し余裕がある人間だけだっただろう。その日の生活にいっぱいいっぱいの人間はそんなこと言ってられなかっただろう。
昔の人の「隣の芝」はそう青くなかっただろう。
「お前さん、あたしゃ隣の芝のが青い気がするんだ。‥それが羨ましくってならないよ」
「隣の芝のが青い? じゃあお前、ちょっと行ってもらって来いよ、鍋に放り込んで食っちまったら同じだ。そうかわりゃしないや」
‥みたいな話で終わるだろう。(芝は食えんが)そもそも‥芝とか生えてないしな。
社会は豊かになって色々選択肢が増えた故に要らん嫉妬心も生まれたって話だな。
理想の家族ってのもそうだ。昔もそりゃ「隣の母ちゃんのが優しくてええな」ってのはあっただろうが、それはそれ。母ちゃん‥親ってのは、子供が独立するまでの間、寝食を保証して、一般常識を教えるだけの存在だ。親が嫌いならさっさと独立する。それだけで、子供に「理想の親」っていう概念はなかっただろう。
「自分がああいう親にならんようにすればいい」
そういうの。
思えばそれが前向きってもんなのかもな。昔の子今の子供子供よりもっと逞しかったって思う。‥そもそも、昔はそれが出来たよな。今の社会は「身分証明」やら「学歴」やら‥飛び出した自立希望の子供に厳しい社会だよね。
現に今俺も結局保護を受けてます。
楠にだけじゃなくて‥この会社にもね。
いっぱい、保護を受けてる。
「俺もね。‥別に養ってくれる理想の親を求めてるわけじゃないの」
‥ただね、暇つぶし。ぼ~っとしてたら「要らないことばかり考えて」気が狂いそうになるから。だから、出来るだけ色んな事考えるようにしてる。桂ちゃんからパソコン教わったりね、八卦を勉強したり、知らないこと片っ端から頭にいれてる。
あとね、親に捨てられた可哀そうな子って思われたら‥それ以上に自分で自分のこと考えたら‥ホントに「可哀そうで情けないやつ」になってしまいそうな気がする。だから、あの人たちのことを忘れるために‥「別の記憶」を作るために‥理想の親を作りたいだけ。(これがきっと本心)
お人好しで優しくってだけど芯の強いカアチャン。(楠)
カアチャンのことが大好きで、普段はちょっと頼りないけどいざとなったら頼りになる(多分)トウチャン。(柊の兄ちゃん)
しっかり者で優しい姉ちゃん(桂ちゃん)
ちゃっかりしてて頼りになる兄ちゃん(柳の兄ちゃん)
俺の今の家族。
俺が集めたわけじゃない。ただ、偶然気付いたら俺の周りにいてくれた‥新しい家族。
損得勘定抜きで俺の傍に居てくれる人たち。
‥あの人たちの為に何が出来るかは分からないけど、天音ちゃんが言ってたみたいに家族として相互扶助の関係になれたらいいのにな、って思う。
いつか、あの人たちにとって、俺が、居てあたりまえ。居るだけで十分って存在になれたらなって思う。
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