今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

文月

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あたしの成長録(成長の過程)

4.ありのままは、甘えだ。(四回目)

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 あたしが見つけて来た最高級の織物に、最高級の糸で編んだレース(あたしが編んだ)そして、刺繍もあたし手づくりの自慢のドレス。
 化粧は、幼馴染のナナベルに教えてもらった。
 正直あたしにしても無駄だからやらない。
 化粧し甲斐があるアメリアになら無駄だとは思わない。
 う~ん、ホントアメリアってかわいい! 
 あたしの理想の「クールビューティー」とは違うんだけど、‥とにかく可愛い!!
 頭には生花を飾ろうかな。
 ネックレスは‥アメリアの瞳と同じピンクの石が付いた奴はどうだろう? 
 あ、遅れました。
 今世のプロフィールですね? 
 ハヅキ・オールドスタン
 オールドスタン子爵令嬢。
 アメリアと二人姉妹。
 お母様は死んで、お父様との三人暮らし。
 今世はなんと‥メイドさんがいなくて、今日みたいな女手がいる時はお父様の妹さん‥つまり、私たちの叔母様ですね‥が手伝いに来てくれますよ~。
 ちょっとふっくらした、笑顔がチャーミングな叔母様です。
「用意できた? 」
 迎えに来てくれたナナベルがメイドさんと一緒に部屋に入って来て、あたしたち姉妹を見て
「全然出来てないじゃない! 」
 開口一番目くじらを立てて言った。横で叔母様が「私も言ったのよう‥」ってナナベルに同調する。
 あたしが、
「ええ!? おかしい!? あたしが縫った(※ とうとうドレス迄縫えるようになった)ドレスも完璧だし‥化粧もさっき叔母様からオーケーサイン頂きましたし‥、髪も叔母様が整えてくれたし(※ 流石のハヅキもそういうのは向いてなかったらしく、諦めている)‥髪飾りも可愛いでしょ? お庭で一番綺麗なバラを飾ってみました! ナナベルにピッタリでしょ? ネックレスも新作だよ? 」
 っていったら、
「アメリアはいいわよ! 完璧。アンタはどうなのよ! 」
 って怒られた。
 ナナベル‥そんなに怒ったら化粧がよれるよ? 
 へにゃって笑ったら、「全くアンタは」ってため息をつかれた。
 その後はあたしの支度だ。一応失礼にならない程度のランクのドレスは用意したものの‥誰が見ても「平凡そのもの」だ。刺繍もレースも最小限にしかついていない。
 髪は叔母様がキレイに結い上げてくれた。それに、亡きお母様の形見の髪飾り(一昔前に流行った奴)をつける。
 既婚者の叔母様より地味な出来上がりだ。叔母様がため息をついている。
 叔母様から何度も「私が買ってあげる」と言ってもらっているが、人の手を煩わせたくない。誰かの負担になるのは嫌だ。叔母様にも子供はいるが、全員男で、全員騎士として働いている‥らしい。叔母様は娘が欲しかったらしく、姪っ子のあたしたちを可愛がってくれているようだ。でも、息子さんたちも今は独身だが、結婚したらお嫁さんも出来るわけだし‥その時に叔母様(お嫁さんにとってはお義母様)が姪っ子ばっかり可愛がってたらお嫁さんたちも嫌でしょ? 
「ハヅキ‥」
 二人のため息が重なる。二人とも「でも、コイツは言っても無駄」って顔してる。
 ‥正直どうでもいいんよ。ホント。
 このシンプル顔に何しても無駄って話だ。

 まったく、いい加減にして欲しい!
 なんと! 今世もあたしは「この顔」なんだ。
 ‥不思議なことに何度見ても「もう見慣れた」とはならない。愛着とかわかない。
 もうあきらめの境地に至った。「何しても無駄じゃん~」としか思えない。最近では鏡も見たくない。
 あたしはため息をついて、
「イヤ、だってアメリアには手を掛ける価値があるけど‥あたしにはないんだもの。寧ろ化粧品とか時間とか‥色々無駄~って思っちゃってね? 」
 って言って、あたしに化粧しようとするナナベルの手をさりげなく止めた。
 あたしのシンプル顔は、お父様のお母様の(つまり祖母)の弟さん?(会ったこともない)似で、アメリアは社交界の花と言われていた亡きお母様にそっくりなのだ! 
 そんなあたしたちだから、並んでも姉妹には見えない。
 アメリアはそんなあたしを卑下する人たちを怒ってくれるが、そんなことで友人関係を築く可能性を潰してほしくない。
 怒りっぽい人って思われたら、損でしょ? 
 ナナベルはあたしの「あきらめの境地」だけど、多分情けなく‥苦しそうな表情を見て、まるで自分のことのように悲しそうな表情になった。
 そして、声を絞り出すように「ハヅキ‥」と苦し気な声であたしを呼び、あたしの両手を握って、「それでも‥」「あきらめちゃだめなんだ」って言った。あたしはまたへにゃりと情けない微笑を返す。
 ‥だけど‥そう言われてもね‥生まれ持った顔だけは‥仕方がないでしょう‥
 って顔だ。
 あたしはもう随分前に「そんなこと言われてもこの顔なんだから仕方はないでしょう! 」って怒るのを止めた。‥もう、そんな情熱すら残ってない。
 ナナベルは小さくため息をつくと、その後キッとあたしを睨み、
「でも‥あのね! それは‥皆に対して失礼よ?! 舞踏会の主催者にしたら、化粧もまともにしてない女なんて呼びたくないって思うわよ? 」
 って言って、怒涛の勢いで化粧を始めた。

 ナナベルの化粧はまるで魔法みたいだ。 
 濃淡マジックとナナベルは呼んでいる。
 化粧で濃淡をつけて‥ない立体感を作り出す‥らしい。
 作ったところで「ほんの気休め程度」なんだけどね(笑)
 でも、ナナベルは満足そうに笑って、
「やれば出来るでしょ? 初めっから「出来ない」って諦めてないで、
 ありのままって言葉に逃げないで、
 人は、自分を知り、自覚し、努力して変わらないといけないのよ。
 よりよくなろうって思わないといけないのよ」
 って言った。
 そして、真面目な顔になると
「無駄なことって思わないで。それはね、さっきも言ったけど‥
 義務なの。人にどう見られるかってことを、人として、意識することは大人として大事なの」
 って‥厳しい口調で言った。
 そっか‥義務か。
 大人って大変だな。
「義務を果たせないお姉さんね‥ってアメリアに悲しい顔させたくないでしょ? 」
 それは‥嫌だな。
 あたしがどんな目で見られ様とどうでもいいけど‥アメリアが悲しい思いするのは‥嫌だな。
 そう思ったから‥
 あたしはそれから「素材を最大限に生かす(というか‥なんとかする)」ってことに努めた。
 あたしが頑張ばアメリアも喜んでくれた。
 そっか‥「諦める」は身の程を知るって意味じゃなくて‥ただの怠惰だったんだなって分かった。
 それから‥あたしはそんなあたしを認めてくれる(且つ、ビジネスパートナーとあたしを見てくれる)男性と結婚して、それなりに幸せな人生を終えた。

 今回の収穫。

 ドレスが作れるようになった!
 メイク技術を身につけた! 
 諦めずに、自分の素材を活かす努力をすることが大事。
 投げやりな態度は、あたしを大事に思ってくれる人間を傷つける。
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