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「……」
「…………」
ガタゴト、ガタゴト。
馬車が揺れる音だけが、車内に響いている。
現在、私は隣国へ向かう馬車の中にいた。
ただし、先ほどまでとは状況が異なる。
荷物に埋もれていた側近の方が「警備の指揮がありますので!」と逃げるように去っていき、入れ替わりでアレクセイ閣下が乗り込んできたのだ。
つまり、現在、この狭い空間には私とアレクセイ閣下の二人だけ。
おまけに、周囲は私の段ボール箱で埋め尽くされているため、物理的な距離が非常に近い。
膝が触れ合いそうな距離で、向かい合って座っている。
(……気まずい)
私は心中で呟いた。
アレクセイ閣下は、乗り込んできてから一言も発していない。
腕を組み、不機嫌そうな顔で窓の外を睨んでいる。
その瞳は絶対零度。
車内の温度が二、三度下がった気がする。
(怒っているのでしょうか?)
私は高速で思考を巡らせる。
私が荷物を積みすぎたから?
それとも、先ほど頂いた「永久氷薔薇」を「すり鉢ですり潰したらポーションになりますか?」と側近に聞いたのが筒抜けだったから?
いや、雇用主の機嫌を損ねるのはビジネスマンとして失格だ。
ここは有能な部下として、気の利いた話題を提供すべきだろう。
「あの、閣下」
「……なんだ」
低い声。
視線が私に向く。
鋭い。
普通なら悲鳴を上げて謝罪するところだが、私は怯まない。
「提案があります」
「提案?」
「はい。先ほどから気になっていたのですが、この馬車のサスペンション、構造に欠陥がありませんか?」
「……は?」
アレクセイ閣下が目を丸くした。
「右後輪の魔道バネの反応が、左に比べて〇・二秒遅れています。そのせいでカーブのたびに車体が微細に振動し、乗員の疲労を蓄積させている。さらに言えば、魔石エンジンの燃焼効率も悪いです。この振動音から推測するに、エネルギーの約一五%が無駄な熱として放出されていますね」
私は懐から手帳を取り出し、サラサラと改善案を書き殴った。
「バネの魔力伝導率を調整し、排気ダクトの角度を三度ずらせば、振動は解消され、燃費も二割は向上します。年間の維持費に換算すると、金貨一〇〇枚の削減になりますが」
書き終えたメモを、ビシッと彼の目の前に突きつける。
「いかがでしょう! この改善案、採用していただけますか?」
どうだ。
これぞ「即戦力」のアピールだ。
ただ座っているだけでなく、移動中も会社の利益を考える。
これほど忠実な社員がいるだろうか。
アレクセイ閣下は、渡されたメモをじっと見つめ、それから私を見た。
長い沈黙。
やがて、その冷たい表情がふっと崩れた。
「……くくっ」
喉の奥で笑うような音がした。
「君は、本当に面白いな」
「は? 面白い、ですか?」
「ああ。私と二人きりになって、愛の言葉でもなく、恐怖の悲鳴でもなく、馬車の『燃費改善』を口にした女は、君が初めてだ」
彼は楽しそうにメモを指先で弾いた。
「採用だ。領地に着いたらすぐに技術者に指示を出そう。……報酬はどうする?」
「成果報酬として削減額の一割を頂ければ」
「強欲だな。いいだろう」
よし!
また臨時収入確定だ。
私がほくそ笑んでいると、アレクセイ閣下がふと真顔に戻り、身を乗り出してきた。
「だが、ミーナ」
「はい?」
「私が不機嫌そうにしていたのは、馬車の性能のせいではないぞ」
「えっ、違うのですか? では、やはり荷物が多すぎて狭いと……」
「違う」
彼はため息をつき、少しだけ視線を泳がせた。
その頬が、ほんのりと――本当に僅かだが――朱に染まっているように見える。
「……緊張、していたのだ」
「緊張? 閣下がですか?」
「……君のような、その……魅力的な女性と密室に二人きりなど、慣れていない」
彼はボソボソと呟き、バッと顔を背けてしまった。
耳まで赤い。
(…………はい?)
私は瞬きを繰り返した。
今、なんと?
「冷徹公爵」と呼ばれる男が、女性に慣れていない?
しかも私を「魅力的」と言った?
私の脳内コンピュータがカタカタと計算を行い、一つの結論を導き出した。
(ああ、なるほど!)
私はポンと手を叩いた。
(これは高度な『人心掌握術』ですね!)
部下のモチベーションを上げるために、あえて隙を見せ、さらに歯の浮くようなお世辞を言って忠誠心を煽るテクニックだ。
ビジネス書で読んだことがある。
さすがは大国の公爵様、アメとムチの使い分けが上手い。
「お戯れを。そのようなお世辞を言っても、給料の値下げ交渉には応じませんよ?」
私がニヤリと笑って牽制すると、アレクセイ閣下はガックリと項垂れた。
「……お世辞ではないのだがな」
「またまた。表情筋の動きが硬いですよ? 慣れない演技はなさらなくて結構です。私は『有能な道具』として扱っていただければ、それで満足ですので」
「道具、か……」
彼は何か言いたげに私を見つめたが、やがて諦めたように苦笑した。
「まあいい。君のその鈍感さも、今は有り難い。……これなら私も、平常心を保てそうだ」
「? よく分かりませんが、業務に支障がないなら何よりです」
こうして、馬車の中の空気は「冷徹」から「奇妙な和やかさ」へと変わった。
私たちはその後も、国境に着くまで熱心に議論を交わした。
主に「魔獣の効率的な解体方法」や「永久凍土を利用した食品保存ビジネス」についてだが。
* * *
数日後。
私たちは無事に国境の関所に到着した。
「ここを越えれば、我が領土ガレリアだ」
アレクセイ閣下が窓の外を指差す。
そこには、見上げるような高い城壁と、武装した兵士たちの姿があった。
さすが軍事国家、物々しい雰囲気だ。
馬車が停止し、入国審査の手続きが始まる。
通常、公爵家の馬車ならフリーパスなのだが、今回は私の大量の荷物があるため、一応の検査が必要らしい。
「開門! ドラグノフ公爵閣下のご帰還だ!」
兵士たちの野太い声が響く。
私は伸びをするために、馬車から降りた。
外の空気は冷たく澄んでいる。
すると、後方から一台の早馬が砂埃を上げて猛スピードで突っ込んできた。
「待てぇぇぇーーっ!!」
悲痛な叫び声。
聞き覚えがありすぎて、耳を塞ぎたくなる声だ。
「ミーナ! ミーナ・フォン・ローゼンはどこだぁぁ!!」
現れたのは、王宮騎士団の制服を着た男。
……ではなく、その制服を汗だくで着崩した、元婚約者の側近騎士だった。
クラーク殿下の腰巾着である。
「ゲッ」
私が思わず舌打ちをすると、アレクセイ閣下が素早く私の前に立ちはだかった。
「……何用だ。我が国のゲストに対して」
「ど、ドラグノフ公爵……!」
側近騎士は馬から転げ落ちるように降りると、ゼェゼェと息を切らしながら一枚の紙を掲げた。
「お、王太子殿下からの……ご命令です! ミーナ嬢を……直ちに連れ戻せと……!」
「理由は?」
「そ、それが……!」
騎士は泣きそうな顔で叫んだ。
「ミーナ嬢がいなくなったせいで……王宮の書類が……書類の保管場所が誰も分からなくなり……公務が完全に停止しております!!」
「知らんがな」
私がアレクセイ閣下の背中から顔を出して即答した。
「引き継ぎ書は作成しました。『棚の三段目の右』とか書いておいたはずですが」
「そ、それが……リリィ様が『難しくて読めなぁい』と仰って、紙飛行機にして遊んでしまい……どこかへ飛んでいきました……」
「……」
現場に沈黙が落ちた。
アレクセイ閣下の側近たちですら、憐れみの目でその騎士を見ている。
「そういうわけですので、戻ってください! あと、リリィ様が『お茶の入れ方が分からないからミーナ様に淹れさせろ』と癇癪を……!」
「帰れ」
アレクセイ閣下の低い声が、轟音のように響いた。
彼が手を振ると、国境警備の屈強な兵士たちが、一斉に槍を構える。
「我が行く手には、未来の公爵夫人がいるのみ。……『過去の遺物』にかまっている暇はない」
「ひっ……!」
「それに、彼女は今、我が領の『財政改革顧問』に就任したばかりでな。時給は高いぞ? 連れ戻したくば、国家予算規模の違約金を用意してから来るんだな」
アレクセイ閣下、かっこいい!
私は後ろでパチパチと拍手をした。
「未来の公爵夫人」という部分だけは「またまた、うまい冗談を」とスルーしたが。
「そ、そんなぁ……!」
騎士は膝から崩れ落ちた。
私たちはその横を悠々と通り過ぎ、再び馬車に乗り込む。
「出せ」
アレクセイ閣下の号令で、馬車は国境の門をくぐる。
背後で「ミーナ様ぁぁ! 戻ってきてぇぇ! 今日のおやつがどこにあるかも分からないんですぅぅ!」という情けない絶叫が聞こえたが、風の音が綺麗にかき消してくれた。
こうして私は、未練など欠片もなく、新天地ガレリアへと足を踏み入れたのである。
「さて、閣下。到着後のスケジュールですが」
「……君は、本当にブレないな」
アレクセイ閣下は呆れたように、けれどどこか嬉しそうに笑った。
「…………」
ガタゴト、ガタゴト。
馬車が揺れる音だけが、車内に響いている。
現在、私は隣国へ向かう馬車の中にいた。
ただし、先ほどまでとは状況が異なる。
荷物に埋もれていた側近の方が「警備の指揮がありますので!」と逃げるように去っていき、入れ替わりでアレクセイ閣下が乗り込んできたのだ。
つまり、現在、この狭い空間には私とアレクセイ閣下の二人だけ。
おまけに、周囲は私の段ボール箱で埋め尽くされているため、物理的な距離が非常に近い。
膝が触れ合いそうな距離で、向かい合って座っている。
(……気まずい)
私は心中で呟いた。
アレクセイ閣下は、乗り込んできてから一言も発していない。
腕を組み、不機嫌そうな顔で窓の外を睨んでいる。
その瞳は絶対零度。
車内の温度が二、三度下がった気がする。
(怒っているのでしょうか?)
私は高速で思考を巡らせる。
私が荷物を積みすぎたから?
それとも、先ほど頂いた「永久氷薔薇」を「すり鉢ですり潰したらポーションになりますか?」と側近に聞いたのが筒抜けだったから?
いや、雇用主の機嫌を損ねるのはビジネスマンとして失格だ。
ここは有能な部下として、気の利いた話題を提供すべきだろう。
「あの、閣下」
「……なんだ」
低い声。
視線が私に向く。
鋭い。
普通なら悲鳴を上げて謝罪するところだが、私は怯まない。
「提案があります」
「提案?」
「はい。先ほどから気になっていたのですが、この馬車のサスペンション、構造に欠陥がありませんか?」
「……は?」
アレクセイ閣下が目を丸くした。
「右後輪の魔道バネの反応が、左に比べて〇・二秒遅れています。そのせいでカーブのたびに車体が微細に振動し、乗員の疲労を蓄積させている。さらに言えば、魔石エンジンの燃焼効率も悪いです。この振動音から推測するに、エネルギーの約一五%が無駄な熱として放出されていますね」
私は懐から手帳を取り出し、サラサラと改善案を書き殴った。
「バネの魔力伝導率を調整し、排気ダクトの角度を三度ずらせば、振動は解消され、燃費も二割は向上します。年間の維持費に換算すると、金貨一〇〇枚の削減になりますが」
書き終えたメモを、ビシッと彼の目の前に突きつける。
「いかがでしょう! この改善案、採用していただけますか?」
どうだ。
これぞ「即戦力」のアピールだ。
ただ座っているだけでなく、移動中も会社の利益を考える。
これほど忠実な社員がいるだろうか。
アレクセイ閣下は、渡されたメモをじっと見つめ、それから私を見た。
長い沈黙。
やがて、その冷たい表情がふっと崩れた。
「……くくっ」
喉の奥で笑うような音がした。
「君は、本当に面白いな」
「は? 面白い、ですか?」
「ああ。私と二人きりになって、愛の言葉でもなく、恐怖の悲鳴でもなく、馬車の『燃費改善』を口にした女は、君が初めてだ」
彼は楽しそうにメモを指先で弾いた。
「採用だ。領地に着いたらすぐに技術者に指示を出そう。……報酬はどうする?」
「成果報酬として削減額の一割を頂ければ」
「強欲だな。いいだろう」
よし!
また臨時収入確定だ。
私がほくそ笑んでいると、アレクセイ閣下がふと真顔に戻り、身を乗り出してきた。
「だが、ミーナ」
「はい?」
「私が不機嫌そうにしていたのは、馬車の性能のせいではないぞ」
「えっ、違うのですか? では、やはり荷物が多すぎて狭いと……」
「違う」
彼はため息をつき、少しだけ視線を泳がせた。
その頬が、ほんのりと――本当に僅かだが――朱に染まっているように見える。
「……緊張、していたのだ」
「緊張? 閣下がですか?」
「……君のような、その……魅力的な女性と密室に二人きりなど、慣れていない」
彼はボソボソと呟き、バッと顔を背けてしまった。
耳まで赤い。
(…………はい?)
私は瞬きを繰り返した。
今、なんと?
「冷徹公爵」と呼ばれる男が、女性に慣れていない?
しかも私を「魅力的」と言った?
私の脳内コンピュータがカタカタと計算を行い、一つの結論を導き出した。
(ああ、なるほど!)
私はポンと手を叩いた。
(これは高度な『人心掌握術』ですね!)
部下のモチベーションを上げるために、あえて隙を見せ、さらに歯の浮くようなお世辞を言って忠誠心を煽るテクニックだ。
ビジネス書で読んだことがある。
さすがは大国の公爵様、アメとムチの使い分けが上手い。
「お戯れを。そのようなお世辞を言っても、給料の値下げ交渉には応じませんよ?」
私がニヤリと笑って牽制すると、アレクセイ閣下はガックリと項垂れた。
「……お世辞ではないのだがな」
「またまた。表情筋の動きが硬いですよ? 慣れない演技はなさらなくて結構です。私は『有能な道具』として扱っていただければ、それで満足ですので」
「道具、か……」
彼は何か言いたげに私を見つめたが、やがて諦めたように苦笑した。
「まあいい。君のその鈍感さも、今は有り難い。……これなら私も、平常心を保てそうだ」
「? よく分かりませんが、業務に支障がないなら何よりです」
こうして、馬車の中の空気は「冷徹」から「奇妙な和やかさ」へと変わった。
私たちはその後も、国境に着くまで熱心に議論を交わした。
主に「魔獣の効率的な解体方法」や「永久凍土を利用した食品保存ビジネス」についてだが。
* * *
数日後。
私たちは無事に国境の関所に到着した。
「ここを越えれば、我が領土ガレリアだ」
アレクセイ閣下が窓の外を指差す。
そこには、見上げるような高い城壁と、武装した兵士たちの姿があった。
さすが軍事国家、物々しい雰囲気だ。
馬車が停止し、入国審査の手続きが始まる。
通常、公爵家の馬車ならフリーパスなのだが、今回は私の大量の荷物があるため、一応の検査が必要らしい。
「開門! ドラグノフ公爵閣下のご帰還だ!」
兵士たちの野太い声が響く。
私は伸びをするために、馬車から降りた。
外の空気は冷たく澄んでいる。
すると、後方から一台の早馬が砂埃を上げて猛スピードで突っ込んできた。
「待てぇぇぇーーっ!!」
悲痛な叫び声。
聞き覚えがありすぎて、耳を塞ぎたくなる声だ。
「ミーナ! ミーナ・フォン・ローゼンはどこだぁぁ!!」
現れたのは、王宮騎士団の制服を着た男。
……ではなく、その制服を汗だくで着崩した、元婚約者の側近騎士だった。
クラーク殿下の腰巾着である。
「ゲッ」
私が思わず舌打ちをすると、アレクセイ閣下が素早く私の前に立ちはだかった。
「……何用だ。我が国のゲストに対して」
「ど、ドラグノフ公爵……!」
側近騎士は馬から転げ落ちるように降りると、ゼェゼェと息を切らしながら一枚の紙を掲げた。
「お、王太子殿下からの……ご命令です! ミーナ嬢を……直ちに連れ戻せと……!」
「理由は?」
「そ、それが……!」
騎士は泣きそうな顔で叫んだ。
「ミーナ嬢がいなくなったせいで……王宮の書類が……書類の保管場所が誰も分からなくなり……公務が完全に停止しております!!」
「知らんがな」
私がアレクセイ閣下の背中から顔を出して即答した。
「引き継ぎ書は作成しました。『棚の三段目の右』とか書いておいたはずですが」
「そ、それが……リリィ様が『難しくて読めなぁい』と仰って、紙飛行機にして遊んでしまい……どこかへ飛んでいきました……」
「……」
現場に沈黙が落ちた。
アレクセイ閣下の側近たちですら、憐れみの目でその騎士を見ている。
「そういうわけですので、戻ってください! あと、リリィ様が『お茶の入れ方が分からないからミーナ様に淹れさせろ』と癇癪を……!」
「帰れ」
アレクセイ閣下の低い声が、轟音のように響いた。
彼が手を振ると、国境警備の屈強な兵士たちが、一斉に槍を構える。
「我が行く手には、未来の公爵夫人がいるのみ。……『過去の遺物』にかまっている暇はない」
「ひっ……!」
「それに、彼女は今、我が領の『財政改革顧問』に就任したばかりでな。時給は高いぞ? 連れ戻したくば、国家予算規模の違約金を用意してから来るんだな」
アレクセイ閣下、かっこいい!
私は後ろでパチパチと拍手をした。
「未来の公爵夫人」という部分だけは「またまた、うまい冗談を」とスルーしたが。
「そ、そんなぁ……!」
騎士は膝から崩れ落ちた。
私たちはその横を悠々と通り過ぎ、再び馬車に乗り込む。
「出せ」
アレクセイ閣下の号令で、馬車は国境の門をくぐる。
背後で「ミーナ様ぁぁ! 戻ってきてぇぇ! 今日のおやつがどこにあるかも分からないんですぅぅ!」という情けない絶叫が聞こえたが、風の音が綺麗にかき消してくれた。
こうして私は、未練など欠片もなく、新天地ガレリアへと足を踏み入れたのである。
「さて、閣下。到着後のスケジュールですが」
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アレクセイ閣下は呆れたように、けれどどこか嬉しそうに笑った。
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