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第二章 教祖の章(エドガールート)
12話 エドガーくんはかわいい?
しおりを挟む「……………」
「…………」
コルネさんが行ってしまって部屋はしんと静まり返っている。
なんだか気まずいなと思っていると視線を感じた。
「………」
エドガーくん、めちゃくちゃこっち見てる…!
「え、えっと、エドガーくん…?」
戸惑いながらエドガーくんに話しかけてみるも、エドガーくんは真剣な面持ちだ。
「ほんとに兄貴に何もされなかったか?」
「えっ、うん?大丈夫だよ?」
突然の質問にびっくりした。
心配、してくれてるのかなあ…。
「そぉか…」
エドガーくんがむっとする。眉を顰めて何か考え込んでいる様子だった。
「でもやっぱりちょっと怖かったかな…。うん、でも、お兄さんの言うことも間違って無いけど……、私がいなくなればそれでいいなら一番簡単だよね…」
ロバートさんの言葉とあの威圧感を思い出して身震いする。
でも正直言ってしまえばロバートさんの言っていたことは正論な気もするのだ。
トロッコ問題というのがある。全てを救う事が難しいなら多少の犠牲は仕方ないのかな。
「何言ってんだ馬鹿」
エドガーくんがピンっと私にデコピンした。
「あいた」
結構痛い。ヒリヒリするおでこを私はさすった。
「いなくなれば良いとか言ってんじゃねーよ。おまえ心配してるやついっぱいいんだろーが」
エドガーくんの真剣な顔にハッとした。
そうだ、私には心配してくれる家族がいる。
簡単にいなくなった方が良いなんて…、祓魔師学校にまで依頼してくれた父、私が家から出る時最後まで心配してくれた姉や兄、みんなに失礼だ。
「…、うん…ありがとう」
「あいつは他人がどーでもいいんだよ。間に受けんな。俺だって散々おまえが居なければとかポンコツだのグズだのってクソみてえな事言われてきた。自分のことしか考えてねえ野郎なんだよ」
しょぼくれた私をエドガーくんは慰めてくれているようだった。
わざわざ自分を引き合いに出してくれるなんて。
エドガーくんが深くため息を吐く。
「…、そうなんだ…。…うん、…でも私エドガーくんが居てくれて良かったよ」
本当のことだ。エドガーくんは不器用だけど優しくて、私を助けようと頑張ってくれているから。
私が微笑みかけるとエドガーくんは目を丸くした。
「お、おまえコルネみたいなこというんだな……」
「ふふ、コルネさんも言ってたの?」
そう聞くとエドガーくんは目を伏せた。
「…、言ってた。昔、魔術師協会の魔術師に殺されかけたときに…」
「……殺されかけたとき…」
「俺が狙われて、俺をコルネが庇って死にかけたんだよ。俺は一生懸命神力を使って治そーとしたけど、傷が深すぎてどーにもならなくて、すんげぇ無力だって思って…」
エドガーくんにとってこれは話難いことなんじゃないだろうか。辛い事に決まっている。
「一週間くらい目を覚まさなくて…俺はずっとコルネの側にいた。コルネがやっと目を覚ましたときにコルネに俺のせいでごめんって俺なんか居なきゃ良かったのにってめちゃくちゃ謝ったんだ。…そしたら、僕はエドガーが居て良かったよ、エドガーが治癒してくれたから助かったんだ…ってほんとお人好し。そもそも俺のせいで怪我したクセに」
「…優しいね」
コルネさんとエドガーくんは昔からそうやって支え合って生きてきたんだろう。本当の兄弟みたいだ。
「馬鹿なんだよアイツは。考えるより先に身体が動くしよ…。死んだらどーすんだっつーの」
「二人ともお互いが大事なんだね」
「ま、家族より家族っぽいからなぁ…」
エドガーくんは優しく笑うと私を見る。
エメラルド色の目を細めてくしゃりと笑う姿は年相応の少年そのもので、なんだかドキッとした。
「俺も、おまえがいて良かったよ」
「え…」
「まあ、おまえが無事に悪魔から解放されて悪魔もぶっ倒せば俺の実力も証明されるからな!」
あ、そういうこと?
思っていた意味とちょっと違って拍子抜けしたけど、エドガーくんらしいといえばらしい。
「だから、居なくなる方がいいとか二度と言うんじゃねーぞ!おまえが死んじまったら俺が困るからな!」
うーん、エドガーくんなりに励ましてくれてくれてるのかも?
でもエドガーくんがここまで言ってるんだから私も今後気をつけよう。
「うん、ありがとうね」
「あ?!何でそこで礼を言うんだよ!?おまえほんと変なやつだな」
「エドガーくんが優しいって分かったから」
クスッと笑ってそう言うとエドガーくんが真っ赤になった。
「優しくねーよ!ばーーーか!!!」
「素直じゃないなあ」
「うるせえ!!!!!」
エドガーくんはどうやらありがとうと褒められることに弱いみたい。
大きな声で怒鳴られてもこれは本心から怒ってるとかじゃなくて照れ隠しなんだなとなんとなく分かって怖くなかった。
「おまえといると調子狂うんだけど……」
「威張ってるよりいいと思うけど…」
「威張ってねえ!」
「偉そうって思ったもの」
「偉そうじゃねー!何だよおまえ急に!本性表したな生意気なやつ!!!」
エドガーくんが私を指差してぷんすか怒っている。
なんだか悪戯心が芽生えてしまってちょっとからかってみたくなっちゃったのだ。
「沸点低いよね」
「っ…うるせえ!!からかうなっ」
エドガーくんはむすっとしている。
からかったのバレてしまった。エドガーくんはやっぱり鋭い。
「ふん、まあ俺は寛大だから?もう二度とやんねーなら許してやるけど?」
「エドガーくんかわいいよね」
「かわいいとか言ってんじゃねー!!!!!」
なるほど。ころころ表情が変わって面白い。
威張ってるときは褒めたり可愛いって言うのがいいかもしれない。反応が面白いから。
俺最強!みたいな感じなのに褒めに弱いんだなぁ。
「もー絶対許さねーからな!えーとおまえアレだからな!!そのうちやり返してやるからな!!!」
「もー、仲良くしなよって言ったのに」
コルネさんがクッキーを持って呆れたようすで部屋に入って来た。
エドガーくんの怒鳴り声が外まで聞こえたらしい。
クッキーはできたてでほかほかだ。
「こいつが優しいとかかわいいとか俺を馬鹿にするから!」
「えー?エドは優しいしかわいいよ?」
エドガーくんが私をビシッと指差すとコルネさんが首を傾げて言ってからくすくすと笑う。
「目ぇ腐ってんじゃねーの!?」
「あはは、ごめんごめん。落ち着いて、ハーブティでも淹れようか」
そう言いながらコルネさんはテーブルにクッキーを置く。
コルネさんはエドガーくんをあしらうのが上手だ。
「あまいやつがいい。砂糖たくさん入れろ」
「はいはい、分かったよ」
エドガーくんはまだ不満そうだけど静かになった。
エドガーくんはやっぱり甘いものが好きみたいだ。
クッキーを食べてお茶を飲むとすぐにご機嫌になったのでその様子を見てコルネさんと私は顔を見合わせて笑った。
ちなみにコルネさんが作ったクッキーは今までで食べた中でも一番美味しかった。
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