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第二章 教祖の章(エドガールート)
13話 クロード・ルイス・サリヴァンの失敗
しおりを挟む「ちょっといいか?」
夕方になると辞書みたいな分厚い本のようなものを抱えたエドガーくんが客間に入ってきた。
「うん。いいよ。座って」
コルネさんが椅子を引いてテーブルの上のティーカップを退けるとエドガーくんはそれをテーブルに置いて椅子に座る。
エドガーくんが分厚い本を開くと直筆で日記のようなものみたいだった。
「悪魔に関しての記述があった」
「あったんだ?」
「古いから読みづれぇけど。あとクロード字ぃきたねえ」
コルネさんが本の文字をみてふふっと笑う。
エドガーくんの言う通りみみずののたくったような文字は読みにくい。
「エドの字にそっくりだけど?」
「ふざけんな」
即反応したエドガーくんは怒りつつもペラペラページをめくる。
エドガーくんも字がきたないんだ…。
「ここを見ろ」
指差した先には…
「えっと…これ…、あれ?悪魔の封印についてとかじゃないんだ…?」
「そう。悪魔祓い失敗についてって書いてあんだよ」
「えっ?失敗?」
コルネさんが目を丸くして本を手に取った。
字が汚くて読みづらいけど、悪魔祓い失敗についてと確かに記述がある。
「エド、これ…」
「そ。クロードは悪魔を祓う…消滅させるか、魔界に退去させるつもりだった。でも消滅させんのは可哀想で、退去もしなかったし、魔力が膨大過ぎたから封印しか出来なかったって書いてあんだよ」
「封印した、じゃなくて、封印しかできなかった…?」
私は首を傾げた。
「封印は魔術師の友人と力を合わせて悪魔自体の魔力を利用して封印したって書いてある」
「悪魔自体の魔力を利用…?」
「詳しい情報は書いてねーからわかんねー。これ報告書ってゆーより日記みてえだし…てか日記だな。毎日つけてたみてえ、恋人とののろけとか書いてあってうぜーし」
エドガーくんが嫌そうな顔でため息を吐く。
「恋人とののろけ」
今それは関係ないのでは…。というか日記なら別にいいんじゃないだろうか。
日記に重要な記述をするクロードもクロードだけど。
「“悪魔自体の魔力を利用して封印したから、恐らく魔力が無くなれば封印は解ける…”」
エドガーくんが日記の文をそのまんま読み上げる。
それに続けてコルネさんが読む。
「“その頃には悪魔に魔力がないだろうし、悪魔を召喚した魔術師も死んでいるだろうし、大人しく帰るだろう。まあ、もし最悪悪魔が再び暴れることがあっても、僕の子孫が何とかしてくれるだろうし、めんどくさいから、まっ、いっかー”!?!??」
「て、適当!!!!」
「こいつマジふざけてる……」
エドガーくんが頭を抱えてため息を吐いた。
怒る気もないくらい呆れてるみたい。確かに呆れるかもこれ。
他の文を見ても軽い感じで、祓魔師の始祖なんて言うくらいだから厳格だと思っていたけど違うみたいだ。
「クロード以来の神の子とか天才とか言われてももう嬉しくねえんだけど」
「案外大雑把な人だったんだねえ…、いや日記つけてるからマメなのかなあ…」
呆れるエドガーくんを横目に、コルネさんも苦笑いしながら日記をめくっている。
「悪魔に関する記述はそれだけ」
「せめてもうちょっと情報欲しかったな…」
コルネさんがううんと唸った。一応確認漏れがないか、日記を続けて読んでいる。
「これ、この悪魔が封印解けてるかもってこと?」
私が尋ねるとエドガーくんは頭を掻いた。
「とっくに解けてっかもな。でもまあ分かんねえなこれだけじゃあ。エルの悪魔とは無関係でハズレだったかもしんねえ。悪魔なんて魔界には沢山居るしな」
「そうだね……、まあ凶悪な悪魔みたいだったし…可能性としては念頭に入れておこうか」
コルネさんがそう同意する。なんだか怖い。
「できたらクロードに協力した魔術師っての特定してえな」
「名乗り出れば魔術師の名声を挙げられたかも知れないのに言わなかった変わり者なんて特定出来るかなあ、資料とかなさそう…」
「まあな……」
エドガーくんとコルネさんは二人してうーんと悩んで、
「…とりあえず帰るか……」
エドガーくんがポツリと言ったのでそうすることになった。
なんだか進展したのかしてないのか微妙な感じだなあ。
☆
「まだ半年あるから大丈夫じゃないかな…」
帰りの最中、空気が重いので私はそう呟く。
ちょっとでも二人に気を楽にして欲しかった。
私のためにこんなに悩ませてしまって申し訳ない。
「馬鹿。あと半年しかねえんだよ」
エドガーくんがふんと鼻を鳴らす。それに対してコルネさんが同意するように頷いた。
「調べる他にも悪魔を倒す準備もしないとだしねー…」
「そっか…」
…なんか、余計なこと言っちゃったかな。
しゅんとしているとエドガーくんがぐしゃぐしゃと私の頭を乱暴に撫でた。
「わ!な、何!?」
「おまえは何も心配しねえで任せときゃいいんだよ」
「うん、そうだね。僕らがエルちゃんちゃんと守るから」
コルネさんが微笑む。二人とも優しい…。
こんな人と触れ合ったのは久しぶりで楽しい。なんだか、暖かい気持ちになる。
すごいすごい最悪な状況で、すごい危険かも知れない状況なのにそれでも楽しくて、嬉しい。
きっとみんなのおかけだ。
「二人ともありがとう」
感謝の気持ちをいっぱい込めて二人に向かって微笑むと、エドガーくんは恥ずかしそうにしてて、コルネさんは笑い返してくれた。
この前まで家族に迷惑かけるなら一人で死ぬのも仕方ないと思っていた。
もちろん死ぬのはすごくすごく怖いけど。
でもエドガーくん、他のみんなが私のために頑張ってくれるから、私も頑張ろう。
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