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予感
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室内に戻った二人は、柔らかな日差しのリビングで、どちらともなくキスをした。ルークは日向で昼寝をしている。何度も軽いキスを繰り返すと、室内に音が響いて、それだけでさゆはなんだか、恥ずかしさが込み上げた。タキはさゆを一度抱き締めてから、
「ちょっと、座ろっか」
とさゆの手をゆるく引いて、ソファに座らせた。
タキの掌は、とても熱かった。
さゆはもう、鼓動が止まらない。耳から心臓が飛び出しそうだ。
(でも、私幸せだな)
タキと触れ合っていると、心からしあわせだと思える。
ふたりソファに向き合って座ると、タキは微笑んでまたさゆを抱き締めた。ぎゅっと。
タキの腕の中でさゆは、あいしてる、さゆ、という吐息混じりの言葉を、耳元で聞いた。
(ああ、今日、私達)
タキがまた、唇を重ねる。今までした事のない、深いキスだった。さゆの頬を片手で支えて、タキは温かい舌をさゆの口に差し入れた。舌で口の中をゆるく探られる。
「んっ・・・ん・・・・」
(結ばれちゃうのかな・・・)
セックスはどんな感じがするのか、全く想像も付かない。
(でも、タキとなら、そういう事、しても良い)
タキの抱え続ける過去も、かつての自分自身との不和も、もう分かってしまって、無邪気に「タキが好き」だなんてもう、簡単にさゆは言えないけれど。
それでもタキが好きで、一緒にいたいとは思う。
さゆが細身のタキの背中に手を回すと、タキは口づけをしたままゆっくりさゆをソファに横たえた。さゆは顔が真っ赤だ。ぎゅっと眼を閉じると、タキが首筋にキスを落とし始めた。
嬉しい、と思うのと同時に、背筋が勝手に震え始めた。それは恐怖だ。目尻に涙が滲んだ。
「さゆ、ごめん大丈夫?やめようか」
タキがキスを止めて、二人は間近に見つめ合った。
「ご、ごめんね・・・・嫌なわけじゃ・・・・ないんだけど・・・・。なんか、すごく緊張して・・・・」
「いいよ、いいよ。最後までするのは、今日は止めておこう?またさゆがそういう事したいって思ったタイミングでするのが良いよ」
さゆがなんとか頷くと、タキはさゆの髪をそっと撫でて、「今のさゆ、こういうの初めてだもんね」と、噛み締めるように言った。
「でも、キスとかしても良い?」
「うん」
二人は身体を密着させたまま、何度も何度も深いキスをした。さゆは全身でタキの感触や息遣い、匂いを感じる。
幸せだった。
「ん・・・んんっ・・・タキ・・・・」
「ふふ。可愛い」
(タキ、きっと、ずっと、こういう事したかったんだろうな)
タキが不意にそっと、さゆの脇腹を撫でた。そのままゆっくり、服をめくる。さゆは止めなかった。タキの骨ばった手が、さゆのウエストを直に何度も優しく撫でた。
「気持ち悪くない?」
「・・・うん・・・・だいじょうぶ・・・・」
「リラックスして。力抜ける?無理な事しないよ」
タキが耳元で囁く。荒い息遣いで、耳と首に熱い口づけを落とす。片手で髪を撫で、もう片手で羽毛を扱うように脇腹に触れ続けた。しばらくタキにされるがままになっていると、強張ったさゆの身体が、少しづつほぐれてゆく。同時に頭がボウッとするような、お腹が熱くなるような、不思議な感覚が湧き上がって来た。
「あ・・・・あ・・・・タキ・・・きもち、いい・・・・」
「うれしい。もっと気持ちよくなって」
声を出すのも恥ずかしいけれど、もう止まらなかった。タキと数え切れないキスを交わし、身体に触れられ、さゆは快楽の声を上げ続けた。今まで味わった事のない多幸感の中で、タキは背中や太腿もそっと撫でる。胸や性器には触れないようにしてくれているのも嬉しかった。
(こんな日が来るって思わなかった)
ほんの短い間にも、永遠にも感じた愛撫の時間は、さゆが疲れてぐったりし始めた所で、タキがキスを止めた。そのまま二人、抱き締めあってソファに横になった。
「しあわせ」とタキが呟いた。
「なんか・・・ごめんね、タキ。もっと・・・最後までしたいよね」
さゆも幸せに包まれていたけれど、なんだか申し訳ない気持ちが拭えない。タキは首を振りながら、
「したいなと思う気持ちは正直あるけど・・・・久しぶりだから、さゆ、少し痛みを感じるかも知れないよ」
その「痛み」の正体がなんなのかは、タキは言わない。それは小説にも書かなかった。
「そっか・・・・」
さゆは深く追求せず、眼を落とした。
それでも遠からず、自分達は結ばれるのだという予感をこの時、さゆは感じていた。
「ちょっと、座ろっか」
とさゆの手をゆるく引いて、ソファに座らせた。
タキの掌は、とても熱かった。
さゆはもう、鼓動が止まらない。耳から心臓が飛び出しそうだ。
(でも、私幸せだな)
タキと触れ合っていると、心からしあわせだと思える。
ふたりソファに向き合って座ると、タキは微笑んでまたさゆを抱き締めた。ぎゅっと。
タキの腕の中でさゆは、あいしてる、さゆ、という吐息混じりの言葉を、耳元で聞いた。
(ああ、今日、私達)
タキがまた、唇を重ねる。今までした事のない、深いキスだった。さゆの頬を片手で支えて、タキは温かい舌をさゆの口に差し入れた。舌で口の中をゆるく探られる。
「んっ・・・ん・・・・」
(結ばれちゃうのかな・・・)
セックスはどんな感じがするのか、全く想像も付かない。
(でも、タキとなら、そういう事、しても良い)
タキの抱え続ける過去も、かつての自分自身との不和も、もう分かってしまって、無邪気に「タキが好き」だなんてもう、簡単にさゆは言えないけれど。
それでもタキが好きで、一緒にいたいとは思う。
さゆが細身のタキの背中に手を回すと、タキは口づけをしたままゆっくりさゆをソファに横たえた。さゆは顔が真っ赤だ。ぎゅっと眼を閉じると、タキが首筋にキスを落とし始めた。
嬉しい、と思うのと同時に、背筋が勝手に震え始めた。それは恐怖だ。目尻に涙が滲んだ。
「さゆ、ごめん大丈夫?やめようか」
タキがキスを止めて、二人は間近に見つめ合った。
「ご、ごめんね・・・・嫌なわけじゃ・・・・ないんだけど・・・・。なんか、すごく緊張して・・・・」
「いいよ、いいよ。最後までするのは、今日は止めておこう?またさゆがそういう事したいって思ったタイミングでするのが良いよ」
さゆがなんとか頷くと、タキはさゆの髪をそっと撫でて、「今のさゆ、こういうの初めてだもんね」と、噛み締めるように言った。
「でも、キスとかしても良い?」
「うん」
二人は身体を密着させたまま、何度も何度も深いキスをした。さゆは全身でタキの感触や息遣い、匂いを感じる。
幸せだった。
「ん・・・んんっ・・・タキ・・・・」
「ふふ。可愛い」
(タキ、きっと、ずっと、こういう事したかったんだろうな)
タキが不意にそっと、さゆの脇腹を撫でた。そのままゆっくり、服をめくる。さゆは止めなかった。タキの骨ばった手が、さゆのウエストを直に何度も優しく撫でた。
「気持ち悪くない?」
「・・・うん・・・・だいじょうぶ・・・・」
「リラックスして。力抜ける?無理な事しないよ」
タキが耳元で囁く。荒い息遣いで、耳と首に熱い口づけを落とす。片手で髪を撫で、もう片手で羽毛を扱うように脇腹に触れ続けた。しばらくタキにされるがままになっていると、強張ったさゆの身体が、少しづつほぐれてゆく。同時に頭がボウッとするような、お腹が熱くなるような、不思議な感覚が湧き上がって来た。
「あ・・・・あ・・・・タキ・・・きもち、いい・・・・」
「うれしい。もっと気持ちよくなって」
声を出すのも恥ずかしいけれど、もう止まらなかった。タキと数え切れないキスを交わし、身体に触れられ、さゆは快楽の声を上げ続けた。今まで味わった事のない多幸感の中で、タキは背中や太腿もそっと撫でる。胸や性器には触れないようにしてくれているのも嬉しかった。
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さゆも幸せに包まれていたけれど、なんだか申し訳ない気持ちが拭えない。タキは首を振りながら、
「したいなと思う気持ちは正直あるけど・・・・久しぶりだから、さゆ、少し痛みを感じるかも知れないよ」
その「痛み」の正体がなんなのかは、タキは言わない。それは小説にも書かなかった。
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