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鎌倉の雪
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今年は静かな年越しになりそうだね、とタキは雪がこんもりと降り積もった庭を見ながら言った。二千二十一年。やっと生き延びた年が、終わろうとしている。
さゆは週の半分は工場で、そしてもう半分は古本屋で働いている。古本屋は簡単なラッピングサービスを始めたので、クリスマス用にと本を買い求める人々で、今日もてんてこまいだった。まだまだ緊張するけれど、男性のお客とも表面上は普通に話せるようになった。忙しすぎるお陰で、簡単な料理以外の家事を平日にする元気もない。
鎌倉の街は、案外平穏だ。いつもは除夜の鐘を一般参加にしているという鎌倉の寺社も、今年は自粛している。交通規制もあるという事で、しずかに、年の瀬が迫っていた。
タキの小説が、遂に文芸誌に載った。タイトルは「雲居の空」。編集者にはさゆの「ストーカー被害」を事前に相談したら、二人の個人情報は楠木しか把握せず、充分に注意すると約束してくれた。タキの日常は、拍子抜けするほどに変わらない。ただ、タキのみ覆面で、ベテラン作家との対談が誌上で企画され、そちらがネットニュースになったのを眼にした位だ。タキは小説内で、元は性産業に従事していた事をぼんやりと明かしていた。その小説を読んだ、というその純文学作家は、タキの「誠実な文体」を褒めつつ、「貧困の世界を書くのに、『本当にそこにいた事実』は必要か」について「蟹工船」などを出して、とうとうと持論を述べ、「タキにしか書けないもの」があるとエールを贈ってくれたけれど。
タキは、もう、自分が小説を書く事はないような気がしていた。
「少し遅めのホワイトクリスマスだね」
十二月二十七日。その日は近年まれに見る大雪で、二人とも急に仕事が休みになってしまった。二人はここぞとばかりに家事を済ませ、今度古本屋に持っていく本の準備や事務、ルークのお手入れなどを昼までに高速で終わらせる。タキも、そして元はさゆもこういった作業は元来得意なので、二人で動くと抜群に早い。タキのスマホにはパートさんが雪で遊ぶ模様が送られて来ていて、さゆはタキの職場の仲の良さを思い知った。
「タキ、雪だるま作ろうよ!」
「いいね」
さゆの髪をタキが綺麗に三つ編みにした上で、アップにする。鏡を見たさゆは、その貴婦人の様なお洒落さに感激した。二人は持っている防寒着をあるだけ全部着込んで、小さな庭へ飛び出した。ルークは窓辺であくびをしている。箱庭の雪をバケツと小さなスコップでかき集めると、さゆは小さい雪の玉、タキは大きな玉を作って合わせた。
「えへへへへへ」
拾った枝で眼と口を作る。タキが形を整えた。
「タキ、やっぱりすごく器用だね」
雪はまだハラハラと降り続いている。
さゆは、ふっと「源実朝が暗殺されたのも、こんな雪の日だったのかな」と思った。
しずかに、本当にしずかに、鎌倉に真っ白な雪が降っている。
まるで世界中に、二人と一匹だけになってしまったみたいだ。
「・・・俺の生まれた処は、雪深い町だったんだけれど、関東でここまで降るのは珍しいね。この降り積もる雪を下から眺める感じ、久しぶりだ」
タキが灰色の空を見上げて言う。タキが故郷の話をするのは滅多にないので、少し驚いてさゆは、雪うさぎをせっせと作る手を止めて、タキを見遣った。
真っ白な世界の中に、濃茶色のコートを着て、スッと佇むタキの姿が、なんだか内側から発光しているほどにうつくしく思えて、息を呑むほどだった。
「タキ!」
さゆは思わずタキに駆け寄り背を伸ばして、キスをした。タキは少し驚いた後で、笑顔になる。
「えへへ、タキ、ずっと好きだよ」
「・・・俺も」
その後も二人、クッキーの型で雪をくり抜いて遊びながら、ふざけたように何度も軽いキスを交わした。まるで天使の羽根の様な雪が降り積もる箱庭で二人、幸福に包まれた短い昼下がりを過ごした。
ルークのおやつの時間になって、二人は部屋の中に戻った。しばらく各々絵を描いたり読書をして過ごしていたけれど、夕方になってタキが、
「よし、今日は冷蔵庫の余った野菜を全部使ってカレーを作ろう!」
と思い立って、冷蔵庫の掃除をしつつ、材料を刻み始めた。相変わらず手際が良い。
「あ、豚肉もあるよ!」
さゆは冷凍庫の奥から、以前安売りしていた時に買った、パックの豚肉を発見して小躍りする。
「いいね、三日ぐらいカレー食べられるね」
カレーはカリウムが多めなので、ルウの量は少なめだ。さゆはその分、チーズを振って食べる。
「ブロッコリー、カレーに合うね!知らなかった」
もう何種類か分からないほど、色とりどりの野菜が盛り沢山のカレーを、二人で頬張った。夕方のニュースでは、都心の雪の模様を伝えている。丁度食べ終わったタイミングで、ルークがトコトコとさゆの足元にやって来て、撫でを要求して来たので、さゆはルークを抱えて、ソファに移動した。
「お皿洗っておくから、そのままルークの相手してあげて」
「ありがと」
「ルークもさ、日中ひとりで寂しいよね。本当は、ずっと一緒にいたいなあ」
さゆがルークのお尻と頭をしばらく撫でると、ルークは気持ちよさそうに眼を閉じた。やがて寝息が聞こえ始める。
「はあ、世界で一番可愛いなあ、ルークは」
さゆはひとしきりルークを撫でると、ソファの横の寝床に、そっと横たえた。
「ね、タキ」
「うん?」
横でテレビを観ていたタキが振り向く。
「なんだかんだでさ、クリスマスプレゼント渡して無かったね、ごめんね」
「しょうがないって」
一時期より大分ましになったとは言え、自分達は人生を味わうにはまだ少し貧しく、それ故に忙し過ぎている。
「あ、あのね、コレ」
さゆは自分の部屋に戻って、おずおずと小さなクリスマス柄の紙袋を持って来た。
「ありがとう!すごく嬉しい」
タキが包みを開けると、銀のシンプルなスマフォチェーンが丁寧に畳まれて入っていた。早速スマフォに付ける。
「・・・実はね、俺も」
タキも自分の部屋から、トナカイのイラストが散りばめられた包みを持って来た。さゆが礼を言って開けると、中にはピンクの蝶が幾つも飛んだ、繊細な金の髪飾りが入っていた。
「わあ、可愛い!ありがとう」
タキが髪飾りをそっと取って、さゆの髪に付けて微笑む。
「今年は大変だったけど、『賢者の贈り物』にならなくて本当に良かったよ」
その時さゆは、苦労の多かったこの一年を思い出し、今自分がなんて幸せなんだろうと、こんなに幸せで良いのかと思う程の、多幸感が湧き上がって。
なんだかもう、泣きそうになった。
「ありがとう、このいちねん、ほんとうにありがとうね、タキ」
噛み締める様にさゆは言った。あの病室で目覚めた時、こんな穏やかな未来があるなんて、思ってもみなかった。全てはタキのおかげだ。
「・・・俺は、さゆとルークがいてくれたら、幸せだから」
タキはゆっくりとさゆを抱き締めた。耳元でタキの「愛してるよ」という吐息が聞こえた。
(ああ、今だな)
今晩だな、と思った。
タキに抱かれたいと、思った。
「タキ、わたし、お風呂入ってくる」
どきまぎしながらさゆがそう言うと、タキも察したのか「うん」とだけ答えた。
暗闇の中に、タキの身体がボウッと白く浮かび上がるように、見えた。二人ともお風呂に入った後、タキの「眠くなっちゃったね」という言葉に、「今日は一緒に眠りたい」とさゆが小さな声で言うと、「良いの?」とタキが聞いた。さゆはなんとか、真っ赤になって頷いた。
「無理なら最後までしなくて良いからね。ゆっくり気持ちよくなろう?」
ふたりタキのベッドの上で、向き合って座った。タキが耳元でそう囁きながら、さゆのパジャマを一枚づつ脱がしてゆく。
(わわわわわわわ)
何度かこんな日を想像していたけれど、思ったよりもずっと更に、恥ずかしい。
「平気?」
眼をぎゅっとつぶったさゆに、タキが聞く。
「う、うん」
タキは、生まれたままの姿になったさゆを、濃紺のシーツの上にゆっくりを手を添えて倒す。さゆは胸の前で手を組む。スースーする。タキはそのまま自分も服を脱ぎ、トランクス一枚になった、
「ああ、きれいだよ、さゆ」
タキはさゆの上に覆い被さり、深い深いキスをした。タキの舌がさゆの口の中をゆっくりと撫でる。柔らかいタキの唇を感じる。さゆは緊張していたけれど、溢れ出る様な幸せを感じていた。
(ああ、私やっと)
あの鎌倉の雨の日に、タキが好きだと自覚してから、いつかタキとこんな風に抱き合いたいと思っていた。
タキがさゆの両脇腹を、ゆっくりと円を描いて撫でる。
「あっ・・・あ・・・ああ・・・」
さゆはお腹の下辺りが熱くなって来るのを感じる。さゆの反応を見てタキは、さゆの胸に手を伸ばした。
「まだ少し緊張してるね。リラックスして。いきなり入れないから」
「うん・・・・・・」
そのままタキはさゆの身体を撫でながら、しばらくキスを全身に落とした。胸にも、脚にも、うつぶせになって背中にも首にも、全身に丁寧にキスの雨を降らせる。
(気持ちいい・・・・)
こんなに気持ち良い事があるのかと思う程だった。全身がもう熱くなって、声が大きくなってゆく。
「いいね、さゆ。そのまま力抜いてて」
「・・・・んっ・・・・」
少しさゆの足を開かせたタキが、さゆの陰部にキスをする。
「わっ・・・良いよタキ、そんな事しなくて・・・あっ・・あっ・・・」
秘部をタキに見られているのだと思うと、もう本当に恥ずかしくてたまらない。
「ふふふ」
さゆの足の間に座り込んだタキは、さゆのクリストスをそっと撫でた。途端にさゆの身体がこわばる。
「痛かったり、気持ち悪かったら言ってね」
「・・・・うん・・・」
タキは、さゆの太腿を片手で撫でる。さゆの力が抜けた所で、遂に、指を差し入れた。
「あっ」
「痛くない?」
「大丈夫。でも変な感触」
「少しづつ慣らすね。リラックスしてて」
タキは時々キスを挟みながら、慣れていないさゆの膣の中を、ゆっくり指で広げてゆく。撫でられる気持ち良さと、脚を広げた体位と、タキの少し荒い息遣いと、ぐちゃっぐちゃっという音の全てが何だか恥ずかしくて、もう身体がふわふわしていて、さゆは眼を閉じていた。
「やっぱり、少し、狭くなってるかな・・・・してみる?今日は止めといても良いよ」
「ううん、しよう、タキ」
「そう?・・・・痛かったら言ってね」
「うん」
タキは一度ティッシュで指を拭くと、トランクスを脱ぎ、ゴムを付ける。さゆは動悸が止まらない。タキはさゆの髪を撫でると、またキスをした。
「さゆ、深呼吸しよう」
二人でゆっくり、呼吸を合わせた。何回か深く息をした所で、タキがさゆの入口に自らを付ける。タキの感触に、さゆは眼を強く閉じる。タキがさゆの手を握った。
「さゆ、愛してるよ」
「・・・・あっ・・・いたっ・・・・!」
タキがグッと入ってきた。今までに感じた事がない様な、膣を酷く押し広げる感触。
ものすごい痛みだった。臓器がみんなちぎれそうな痛みだ。涙が滲む。
「痛い?止まるね」
「いたい。すごく痛い。ほんとにいつも、こんな事してたの?お腹、破れそうだよ」
さゆはもう全ての快楽が吹き飛んで、両手で顔を覆って、身体が震える様な痛みに耐えている。タキは一度自身を引き抜いた。かつて本当に初めて彼女と身体を重ねた時も、さゆは久しぶりにセックスをすると言っていたけれど、それほど痛みを感じていなかったのに。
年齢的なものもあるかも知れない。けれど。
『もう一度処女になってタキに抱かれたい』というさゆの言葉をふと、タキは思い出していた。
「・・・やめとこうか?指だけにしとく?ね?」
さゆは沈黙した。確かに、ものすごい痛みだ。こんなに痛いだなんて思わなかった。身体が傷つきそうな気もした。でも。
(わたし、タキとちゃんと夫婦になりたいな)
心から好きだと思えるタキと、ちゃんとひとつになってみたい。
「・・・ううん、ゆっくりして、タキ」
「そう?」
タキは少し迷って、唇へのキスと愛撫を繰り返した。かつてのレイプの後遺症かも知れないと思っていた。しばらくして、さゆがまた喘ぎ声を出し始め、膣が充分に濡れた所で、自身を再びさゆの入口に付ける。
「しばらく一つになってたら、慣れて来るかも知れないから、少しだけ入れるね」
「うん・・・・・あっ・・・いっ・・・・」
さゆは歯を噛み締めた。やっぱりものすごい痛みだ。
「中、痛い?入口?」
「入口。すごい無理に、押し広げる感じ・・・・いたっ・・・」
タキは一度腰を止める。さゆとまた手を繋いだ。
「三分の一位入ってるから、しばらくこのままでいられそう?」
「・・・・・うん・・・・・」
さゆは激痛の中で、なんとか頷く。タキは繋いだ手を強く握って、
「ごめんね、痛い思いさせて」
とクリストスや脚を撫でる。
「脚とお腹の力抜くと、痛くなくなって来るからね」
「うん」
さゆはなんとか、深呼吸を繰り返す。タキはさゆの名前を呼びながら、そのまましばらくさゆの脚にキスをして、力を抜くように促した。
どれ位の時間が経っただろう。それはとても長い時間のように思えた。
「あ・・・タキ・・・まだ痛いけど・・・大分慣れたみたい・・・」
膣の中にタキがいる独特の感触に、さゆはやっと少し慣れた。熱い。タキがさゆの手を取って、繋がっている部分に触れさせた。
「・・・・うれしい・・・・ほんとうに私達、一つになってるんだね」
さゆはもう痛みと嬉しさで涙が零れる。タキはその涙を手で拭う。
「やめとく?もう少し進めそう?」
「・・・・うん、大丈夫・・・・」
タキがさゆの表情を見ながらゆっくりゆっくり、また腰を進める。
「半分くらいまで挿れるからね」
「うん・・・あっ・・・いたっ!痛い、痛っ!!タキ」
「狭いね」
「・・・うん・・・・いっ・・・」
入口を押し広げられるのも痛いけれど、奥の方もグッと無理に広げている感触がして、ものすごい痛みだ。狭い膣に、熱いコテを無理矢理ねじりこまれているようだった。息が止まる。
「あと少しで半分だよ。ここまでにしとく?大分痛いよね?」
「だいじょぶ・・・来て・・・」
さゆは激痛の中で、タキに両手を伸ばした。もう汗まみれだ。タキはさゆの身体を抱き締めて、あと数センチ、さゆの中に自身を沈めた。
「あっ、痛い!痛い!痛い!!うう・・・」
何度も痛いと叫んで呻くさゆを、タキは抱き締めた。さゆは痛みに震えながら、タキを受け入れた。タキの背中にしがみついて、痛みのあまり爪を立てた。タキはさゆの身体を撫でる。そのまま二人、しばらく動かなかった。二人の息遣いと、さゆが時々漏らす「いたい」という啜り泣きのような声が、夜の部屋にしずかに、響いていた。
やがて、タキが大きく息を吐いて、さゆから自身を引き抜いた。さゆも脱力する。荒い息を繰り返した。タキは毛布を二人の上に掛け、さゆの横に寝そべった。二人とも疲労が酷すぎて、何も話せない。
「・・・・・・つらい思いさせたね、ごめんね」
沈黙の後に、タキはそう言って、さゆの髪を撫で始める。
「ううん・・・もっとスムーズに出来るって思ってて、こんな痛いの予想外だったけど、でも、すごく、嬉しい」
さゆはまだ、タキが入っているような感触がして、痛くて脚も閉じられない。それでも、心だけではなく、身体でも愛し合ったのだなと思う。タキが自身をティッシュで拭った後に、さゆの陰部も拭うと、うっすらと血が付いていた。
「・・・・さゆ、『初めて』だったんだもんね。俺としてくれてありがとうね」
「タキ、私達ほんとに夫婦になったんだね。ふふふ。何か恥ずかしいね。でも、私やっぱり好きだな、タキの事。今日もすごく、優しかったし」
さゆはなんとか脚を閉じて、タキに添い寝した。さゆは時々傷む腹を撫でながら、やがて眠りについた。
さゆがいつか辛い記憶をふっと思い出してしまっても、今日自分で望んで抱き合ったのが「初めて」だと思ってくれたらと、タキはその寝顔を見て思う。
そしてタキは憂慮していた。以前から思っていた事だ。
もしさゆが自分と性行為をしたら、それが契機となって、彼女の記憶の核心を、思い出してしまうのではないか。
タキはずっとそれが、気掛かりだった。
さゆは週の半分は工場で、そしてもう半分は古本屋で働いている。古本屋は簡単なラッピングサービスを始めたので、クリスマス用にと本を買い求める人々で、今日もてんてこまいだった。まだまだ緊張するけれど、男性のお客とも表面上は普通に話せるようになった。忙しすぎるお陰で、簡単な料理以外の家事を平日にする元気もない。
鎌倉の街は、案外平穏だ。いつもは除夜の鐘を一般参加にしているという鎌倉の寺社も、今年は自粛している。交通規制もあるという事で、しずかに、年の瀬が迫っていた。
タキの小説が、遂に文芸誌に載った。タイトルは「雲居の空」。編集者にはさゆの「ストーカー被害」を事前に相談したら、二人の個人情報は楠木しか把握せず、充分に注意すると約束してくれた。タキの日常は、拍子抜けするほどに変わらない。ただ、タキのみ覆面で、ベテラン作家との対談が誌上で企画され、そちらがネットニュースになったのを眼にした位だ。タキは小説内で、元は性産業に従事していた事をぼんやりと明かしていた。その小説を読んだ、というその純文学作家は、タキの「誠実な文体」を褒めつつ、「貧困の世界を書くのに、『本当にそこにいた事実』は必要か」について「蟹工船」などを出して、とうとうと持論を述べ、「タキにしか書けないもの」があるとエールを贈ってくれたけれど。
タキは、もう、自分が小説を書く事はないような気がしていた。
「少し遅めのホワイトクリスマスだね」
十二月二十七日。その日は近年まれに見る大雪で、二人とも急に仕事が休みになってしまった。二人はここぞとばかりに家事を済ませ、今度古本屋に持っていく本の準備や事務、ルークのお手入れなどを昼までに高速で終わらせる。タキも、そして元はさゆもこういった作業は元来得意なので、二人で動くと抜群に早い。タキのスマホにはパートさんが雪で遊ぶ模様が送られて来ていて、さゆはタキの職場の仲の良さを思い知った。
「タキ、雪だるま作ろうよ!」
「いいね」
さゆの髪をタキが綺麗に三つ編みにした上で、アップにする。鏡を見たさゆは、その貴婦人の様なお洒落さに感激した。二人は持っている防寒着をあるだけ全部着込んで、小さな庭へ飛び出した。ルークは窓辺であくびをしている。箱庭の雪をバケツと小さなスコップでかき集めると、さゆは小さい雪の玉、タキは大きな玉を作って合わせた。
「えへへへへへ」
拾った枝で眼と口を作る。タキが形を整えた。
「タキ、やっぱりすごく器用だね」
雪はまだハラハラと降り続いている。
さゆは、ふっと「源実朝が暗殺されたのも、こんな雪の日だったのかな」と思った。
しずかに、本当にしずかに、鎌倉に真っ白な雪が降っている。
まるで世界中に、二人と一匹だけになってしまったみたいだ。
「・・・俺の生まれた処は、雪深い町だったんだけれど、関東でここまで降るのは珍しいね。この降り積もる雪を下から眺める感じ、久しぶりだ」
タキが灰色の空を見上げて言う。タキが故郷の話をするのは滅多にないので、少し驚いてさゆは、雪うさぎをせっせと作る手を止めて、タキを見遣った。
真っ白な世界の中に、濃茶色のコートを着て、スッと佇むタキの姿が、なんだか内側から発光しているほどにうつくしく思えて、息を呑むほどだった。
「タキ!」
さゆは思わずタキに駆け寄り背を伸ばして、キスをした。タキは少し驚いた後で、笑顔になる。
「えへへ、タキ、ずっと好きだよ」
「・・・俺も」
その後も二人、クッキーの型で雪をくり抜いて遊びながら、ふざけたように何度も軽いキスを交わした。まるで天使の羽根の様な雪が降り積もる箱庭で二人、幸福に包まれた短い昼下がりを過ごした。
ルークのおやつの時間になって、二人は部屋の中に戻った。しばらく各々絵を描いたり読書をして過ごしていたけれど、夕方になってタキが、
「よし、今日は冷蔵庫の余った野菜を全部使ってカレーを作ろう!」
と思い立って、冷蔵庫の掃除をしつつ、材料を刻み始めた。相変わらず手際が良い。
「あ、豚肉もあるよ!」
さゆは冷凍庫の奥から、以前安売りしていた時に買った、パックの豚肉を発見して小躍りする。
「いいね、三日ぐらいカレー食べられるね」
カレーはカリウムが多めなので、ルウの量は少なめだ。さゆはその分、チーズを振って食べる。
「ブロッコリー、カレーに合うね!知らなかった」
もう何種類か分からないほど、色とりどりの野菜が盛り沢山のカレーを、二人で頬張った。夕方のニュースでは、都心の雪の模様を伝えている。丁度食べ終わったタイミングで、ルークがトコトコとさゆの足元にやって来て、撫でを要求して来たので、さゆはルークを抱えて、ソファに移動した。
「お皿洗っておくから、そのままルークの相手してあげて」
「ありがと」
「ルークもさ、日中ひとりで寂しいよね。本当は、ずっと一緒にいたいなあ」
さゆがルークのお尻と頭をしばらく撫でると、ルークは気持ちよさそうに眼を閉じた。やがて寝息が聞こえ始める。
「はあ、世界で一番可愛いなあ、ルークは」
さゆはひとしきりルークを撫でると、ソファの横の寝床に、そっと横たえた。
「ね、タキ」
「うん?」
横でテレビを観ていたタキが振り向く。
「なんだかんだでさ、クリスマスプレゼント渡して無かったね、ごめんね」
「しょうがないって」
一時期より大分ましになったとは言え、自分達は人生を味わうにはまだ少し貧しく、それ故に忙し過ぎている。
「あ、あのね、コレ」
さゆは自分の部屋に戻って、おずおずと小さなクリスマス柄の紙袋を持って来た。
「ありがとう!すごく嬉しい」
タキが包みを開けると、銀のシンプルなスマフォチェーンが丁寧に畳まれて入っていた。早速スマフォに付ける。
「・・・実はね、俺も」
タキも自分の部屋から、トナカイのイラストが散りばめられた包みを持って来た。さゆが礼を言って開けると、中にはピンクの蝶が幾つも飛んだ、繊細な金の髪飾りが入っていた。
「わあ、可愛い!ありがとう」
タキが髪飾りをそっと取って、さゆの髪に付けて微笑む。
「今年は大変だったけど、『賢者の贈り物』にならなくて本当に良かったよ」
その時さゆは、苦労の多かったこの一年を思い出し、今自分がなんて幸せなんだろうと、こんなに幸せで良いのかと思う程の、多幸感が湧き上がって。
なんだかもう、泣きそうになった。
「ありがとう、このいちねん、ほんとうにありがとうね、タキ」
噛み締める様にさゆは言った。あの病室で目覚めた時、こんな穏やかな未来があるなんて、思ってもみなかった。全てはタキのおかげだ。
「・・・俺は、さゆとルークがいてくれたら、幸せだから」
タキはゆっくりとさゆを抱き締めた。耳元でタキの「愛してるよ」という吐息が聞こえた。
(ああ、今だな)
今晩だな、と思った。
タキに抱かれたいと、思った。
「タキ、わたし、お風呂入ってくる」
どきまぎしながらさゆがそう言うと、タキも察したのか「うん」とだけ答えた。
暗闇の中に、タキの身体がボウッと白く浮かび上がるように、見えた。二人ともお風呂に入った後、タキの「眠くなっちゃったね」という言葉に、「今日は一緒に眠りたい」とさゆが小さな声で言うと、「良いの?」とタキが聞いた。さゆはなんとか、真っ赤になって頷いた。
「無理なら最後までしなくて良いからね。ゆっくり気持ちよくなろう?」
ふたりタキのベッドの上で、向き合って座った。タキが耳元でそう囁きながら、さゆのパジャマを一枚づつ脱がしてゆく。
(わわわわわわわ)
何度かこんな日を想像していたけれど、思ったよりもずっと更に、恥ずかしい。
「平気?」
眼をぎゅっとつぶったさゆに、タキが聞く。
「う、うん」
タキは、生まれたままの姿になったさゆを、濃紺のシーツの上にゆっくりを手を添えて倒す。さゆは胸の前で手を組む。スースーする。タキはそのまま自分も服を脱ぎ、トランクス一枚になった、
「ああ、きれいだよ、さゆ」
タキはさゆの上に覆い被さり、深い深いキスをした。タキの舌がさゆの口の中をゆっくりと撫でる。柔らかいタキの唇を感じる。さゆは緊張していたけれど、溢れ出る様な幸せを感じていた。
(ああ、私やっと)
あの鎌倉の雨の日に、タキが好きだと自覚してから、いつかタキとこんな風に抱き合いたいと思っていた。
タキがさゆの両脇腹を、ゆっくりと円を描いて撫でる。
「あっ・・・あ・・・ああ・・・」
さゆはお腹の下辺りが熱くなって来るのを感じる。さゆの反応を見てタキは、さゆの胸に手を伸ばした。
「まだ少し緊張してるね。リラックスして。いきなり入れないから」
「うん・・・・・・」
そのままタキはさゆの身体を撫でながら、しばらくキスを全身に落とした。胸にも、脚にも、うつぶせになって背中にも首にも、全身に丁寧にキスの雨を降らせる。
(気持ちいい・・・・)
こんなに気持ち良い事があるのかと思う程だった。全身がもう熱くなって、声が大きくなってゆく。
「いいね、さゆ。そのまま力抜いてて」
「・・・・んっ・・・・」
少しさゆの足を開かせたタキが、さゆの陰部にキスをする。
「わっ・・・良いよタキ、そんな事しなくて・・・あっ・・あっ・・・」
秘部をタキに見られているのだと思うと、もう本当に恥ずかしくてたまらない。
「ふふふ」
さゆの足の間に座り込んだタキは、さゆのクリストスをそっと撫でた。途端にさゆの身体がこわばる。
「痛かったり、気持ち悪かったら言ってね」
「・・・・うん・・・」
タキは、さゆの太腿を片手で撫でる。さゆの力が抜けた所で、遂に、指を差し入れた。
「あっ」
「痛くない?」
「大丈夫。でも変な感触」
「少しづつ慣らすね。リラックスしてて」
タキは時々キスを挟みながら、慣れていないさゆの膣の中を、ゆっくり指で広げてゆく。撫でられる気持ち良さと、脚を広げた体位と、タキの少し荒い息遣いと、ぐちゃっぐちゃっという音の全てが何だか恥ずかしくて、もう身体がふわふわしていて、さゆは眼を閉じていた。
「やっぱり、少し、狭くなってるかな・・・・してみる?今日は止めといても良いよ」
「ううん、しよう、タキ」
「そう?・・・・痛かったら言ってね」
「うん」
タキは一度ティッシュで指を拭くと、トランクスを脱ぎ、ゴムを付ける。さゆは動悸が止まらない。タキはさゆの髪を撫でると、またキスをした。
「さゆ、深呼吸しよう」
二人でゆっくり、呼吸を合わせた。何回か深く息をした所で、タキがさゆの入口に自らを付ける。タキの感触に、さゆは眼を強く閉じる。タキがさゆの手を握った。
「さゆ、愛してるよ」
「・・・・あっ・・・いたっ・・・・!」
タキがグッと入ってきた。今までに感じた事がない様な、膣を酷く押し広げる感触。
ものすごい痛みだった。臓器がみんなちぎれそうな痛みだ。涙が滲む。
「痛い?止まるね」
「いたい。すごく痛い。ほんとにいつも、こんな事してたの?お腹、破れそうだよ」
さゆはもう全ての快楽が吹き飛んで、両手で顔を覆って、身体が震える様な痛みに耐えている。タキは一度自身を引き抜いた。かつて本当に初めて彼女と身体を重ねた時も、さゆは久しぶりにセックスをすると言っていたけれど、それほど痛みを感じていなかったのに。
年齢的なものもあるかも知れない。けれど。
『もう一度処女になってタキに抱かれたい』というさゆの言葉をふと、タキは思い出していた。
「・・・やめとこうか?指だけにしとく?ね?」
さゆは沈黙した。確かに、ものすごい痛みだ。こんなに痛いだなんて思わなかった。身体が傷つきそうな気もした。でも。
(わたし、タキとちゃんと夫婦になりたいな)
心から好きだと思えるタキと、ちゃんとひとつになってみたい。
「・・・ううん、ゆっくりして、タキ」
「そう?」
タキは少し迷って、唇へのキスと愛撫を繰り返した。かつてのレイプの後遺症かも知れないと思っていた。しばらくして、さゆがまた喘ぎ声を出し始め、膣が充分に濡れた所で、自身を再びさゆの入口に付ける。
「しばらく一つになってたら、慣れて来るかも知れないから、少しだけ入れるね」
「うん・・・・・あっ・・・いっ・・・・」
さゆは歯を噛み締めた。やっぱりものすごい痛みだ。
「中、痛い?入口?」
「入口。すごい無理に、押し広げる感じ・・・・いたっ・・・」
タキは一度腰を止める。さゆとまた手を繋いだ。
「三分の一位入ってるから、しばらくこのままでいられそう?」
「・・・・・うん・・・・・」
さゆは激痛の中で、なんとか頷く。タキは繋いだ手を強く握って、
「ごめんね、痛い思いさせて」
とクリストスや脚を撫でる。
「脚とお腹の力抜くと、痛くなくなって来るからね」
「うん」
さゆはなんとか、深呼吸を繰り返す。タキはさゆの名前を呼びながら、そのまましばらくさゆの脚にキスをして、力を抜くように促した。
どれ位の時間が経っただろう。それはとても長い時間のように思えた。
「あ・・・タキ・・・まだ痛いけど・・・大分慣れたみたい・・・」
膣の中にタキがいる独特の感触に、さゆはやっと少し慣れた。熱い。タキがさゆの手を取って、繋がっている部分に触れさせた。
「・・・・うれしい・・・・ほんとうに私達、一つになってるんだね」
さゆはもう痛みと嬉しさで涙が零れる。タキはその涙を手で拭う。
「やめとく?もう少し進めそう?」
「・・・・うん、大丈夫・・・・」
タキがさゆの表情を見ながらゆっくりゆっくり、また腰を進める。
「半分くらいまで挿れるからね」
「うん・・・あっ・・・いたっ!痛い、痛っ!!タキ」
「狭いね」
「・・・うん・・・・いっ・・・」
入口を押し広げられるのも痛いけれど、奥の方もグッと無理に広げている感触がして、ものすごい痛みだ。狭い膣に、熱いコテを無理矢理ねじりこまれているようだった。息が止まる。
「あと少しで半分だよ。ここまでにしとく?大分痛いよね?」
「だいじょぶ・・・来て・・・」
さゆは激痛の中で、タキに両手を伸ばした。もう汗まみれだ。タキはさゆの身体を抱き締めて、あと数センチ、さゆの中に自身を沈めた。
「あっ、痛い!痛い!痛い!!うう・・・」
何度も痛いと叫んで呻くさゆを、タキは抱き締めた。さゆは痛みに震えながら、タキを受け入れた。タキの背中にしがみついて、痛みのあまり爪を立てた。タキはさゆの身体を撫でる。そのまま二人、しばらく動かなかった。二人の息遣いと、さゆが時々漏らす「いたい」という啜り泣きのような声が、夜の部屋にしずかに、響いていた。
やがて、タキが大きく息を吐いて、さゆから自身を引き抜いた。さゆも脱力する。荒い息を繰り返した。タキは毛布を二人の上に掛け、さゆの横に寝そべった。二人とも疲労が酷すぎて、何も話せない。
「・・・・・・つらい思いさせたね、ごめんね」
沈黙の後に、タキはそう言って、さゆの髪を撫で始める。
「ううん・・・もっとスムーズに出来るって思ってて、こんな痛いの予想外だったけど、でも、すごく、嬉しい」
さゆはまだ、タキが入っているような感触がして、痛くて脚も閉じられない。それでも、心だけではなく、身体でも愛し合ったのだなと思う。タキが自身をティッシュで拭った後に、さゆの陰部も拭うと、うっすらと血が付いていた。
「・・・・さゆ、『初めて』だったんだもんね。俺としてくれてありがとうね」
「タキ、私達ほんとに夫婦になったんだね。ふふふ。何か恥ずかしいね。でも、私やっぱり好きだな、タキの事。今日もすごく、優しかったし」
さゆはなんとか脚を閉じて、タキに添い寝した。さゆは時々傷む腹を撫でながら、やがて眠りについた。
さゆがいつか辛い記憶をふっと思い出してしまっても、今日自分で望んで抱き合ったのが「初めて」だと思ってくれたらと、タキはその寝顔を見て思う。
そしてタキは憂慮していた。以前から思っていた事だ。
もしさゆが自分と性行為をしたら、それが契機となって、彼女の記憶の核心を、思い出してしまうのではないか。
タキはずっとそれが、気掛かりだった。
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