私、異世界で獣人になりました!

星宮歌

文字の大きさ
65 / 74
第二章

第六十三話 この場所は……

しおりを挟む
 聞き間違い……ではなさそうだ。セインさんは、間違いなく、私のことを片翼だと言ってくれている。そして、苦しくなるほどに、抱き締めてくれている。


「もう、離しません」

「ぁ……」


 セインさんの肩は、今もまだ震えている。それに対して、不謹慎だとは思うのに、私は喜びを抑えきれなかった。


「セインさん……」

「もし、リコさんに運命の番が現れたとしても、俺は、リコさんを手放すことなんてできません。もちろん、そうしたケースの悲劇だって知っています。ですが、それでも、離せません」

「セインさん、私」


 『私の運命の番は、セインさんです』そう、言おうとしたところで、バンッと大きな音がした。


「姉様!! 目が覚めたんですね!!」


 そこには、なぜかレノが居て……いや、よくよく考えると、起きた時にここがどこかと考えなかった時点で、ここがとても良く、見知った場所だったということに気づく。


 ここ……私の部屋!?


「レノ君、まだリコは起きたばかりですし、もう少し声を抑えてください」

「あ、はい。ごめんなさい。セインさん」

「…………」


 私の部屋にセインさんが居る、という事態と、なぜか普通にやり取りをしているレノとセインさんという光景。それらに混乱して、私は言おうとしていた言葉が全て吹き飛んでしまったことにすら気づけない。


「それで、姉様は大丈夫ですか?」

「大、丈夫……」


 混乱中ではあれど、実際に体に異常は感じられない。あとは、そう……。


「あの……何で、私の、部屋……?」


 現在の最優先事項は、現状確認だ。どんなに記憶を漁っても、セインさんが私の家を知っているという情報は出てこない。……いや、一つだけ、可能性があった。


「リコさんのお祖父様に連絡をしたところ、ここへ向かうように言われたのですよ。それで、失礼かとは思いましたが、慣れた寝室の方が良いというご家族の判断で、この部屋に移させていただきました」

「そ、う……ですか……」


 そう、元々は、ダンお祖父様がセインさんと知り合っていたのだ。だから、ダンお祖父様に連絡をするのは当然だし、セインさんの片翼が私だとは知らないダンお祖父様が、セインさんに私を家に連れてくるよう告げていてもおかしくはない。
 そして……そっと視線を向ければ、セインさんの背後で、笑顔で親指を立てているレノの姿が目に入る。


 ……つまり、セインさんは誘導された、ということかな?


 その意味はきっと、私がセインさんに想いを告げやすくするため、そして、万が一上手くいかなければ、私がセインさんに対して何かするのを止められるようにするため。ただ、恐らくは、なのだが……。


 今の会話、聞かれてた!?


 セインさんの片翼が私だという話は、きっと、間違いなく、レノの耳に入っている。そして、この場で乱入した理由は、もちろん私への心配もあるのだろうが、ここがどこなのか、私に自覚させるためもあったのだろう。


 もし、レノが来なかったら……。


 きっと、私はセインさんと愛を確かめ合っていたことだろう。それが家族に筒抜けになる可能性にすら気づかずに。


「ありがとう、ございます……」


 顔が赤くなりそうなのをうつむいて隠し、私はひとまず、その一言だけを絞り出した。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

『えっ! 私が貴方の番?! そんなの無理ですっ! 私、動物アレルギーなんですっ!』

伊織愁
恋愛
 人族であるリジィーは、幼い頃、狼獣人の国であるシェラン国へ両親に連れられて来た。 家が没落したため、リジィーを育てられなくなった両親は、泣いてすがるリジィーを修道院へ預ける事にしたのだ。  実は動物アレルギーのあるリジィ―には、シェラン国で暮らす事が日に日に辛くなって来ていた。 子供だった頃とは違い、成人すれば自由に国を出ていける。 15になり成人を迎える年、リジィーはシェラン国から出ていく事を決心する。 しかし、シェラン国から出ていく矢先に事件に巻き込まれ、シェラン国の近衛騎士に助けられる。  二人が出会った瞬間、頭上から光の粒が降り注ぎ、番の刻印が刻まれた。 狼獣人の近衛騎士に『私の番っ』と熱い眼差しを受け、リジィ―は内心で叫んだ。 『私、動物アレルギーなんですけどっ! そんなのありーっ?!』

番は君なんだと言われ王宮で溺愛されています

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私ミーシャ・ラクリマ男爵令嬢は、家の借金の為コッソリと王宮でメイドとして働いています。基本は王宮内のお掃除ですが、人手が必要な時には色々な所へ行きお手伝いします。そんな中私を番だと言う人が現れた。えっ、あなたって!? 貧乏令嬢が番と幸せになるまでのすれ違いを書いていきます。 愛の花第2弾です。前の話を読んでいなくても、単体のお話として読んで頂けます。

私のことが大好きな守護竜様は、どうやら私をあきらめたらしい

鷹凪きら
恋愛
不本意だけど、竜族の男を拾った。 家の前に倒れていたので、本当に仕方なく。 そしたらなんと、わたしは前世からその人のつがいとやらで、生まれ変わる度に探されていたらしい。 いきなり連れて帰りたいなんて言われても、無理ですから。 そんなふうに優しくしたってダメですよ? ほんの少しだけ、心が揺らいだりなんて―― ……あれ? 本当に私をおいて、ひとりで帰ったんですか? ※タイトル変更しました。 旧題「家の前で倒れていた竜を拾ったら、わたしのつがいだと言いだしたので、全力で拒否してみた」

数多の想いを乗せて、運命の輪は廻る

紅子
恋愛
愛する者を失った咲李亜は、50歳にして異世界へ転移させられた。寝耳に水だ。しかも、転移した先の家で、訪ねてくる者を待て、との伝言付き。いったい、いつになったら来るんですか? 旅に出ようにも、家の外には見たこともないような生き物がうじゃうじゃいる。無理無理。ここから出たら死んじゃうよ。 一緒に召喚されたらしい女の子とは、別ルートってどうしたらいいの? これは、齢50の女が、異世界へ転移したら若返り、番とラブラブになるまでのお話。 16話完結済み 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付きで書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

単純に婚約破棄したかっただけなのに、生まれた時から外堀埋められてたって話する?

甘寧
恋愛
婚約破棄したい令嬢が、実は溺愛されていたというテンプレのようなお話です。 ……作者がただ単に糸目、関西弁男子を書きたかっただけなんです。 ※不定期更新です。

最初から勘違いだった~愛人管理か離縁のはずが、なぜか公爵に溺愛されまして~

猪本夜
恋愛
前世で兄のストーカーに殺されてしまったアリス。 現世でも兄のいいように扱われ、兄の指示で愛人がいるという公爵に嫁ぐことに。 現世で死にかけたことで、前世の記憶を思い出したアリスは、 嫁ぎ先の公爵家で、美味しいものを食し、モフモフを愛で、 足技を磨きながら、意外と幸せな日々を楽しむ。 愛人のいる公爵とは、いずれは愛人管理、もしくは離縁が待っている。 できれば離縁は免れたいために、公爵とは友達夫婦を目指していたのだが、 ある日から愛人がいるはずの公爵がなぜか甘くなっていき――。 この公爵の溺愛は止まりません。 最初から勘違いばかりだった、こじれた夫婦が、本当の夫婦になるまで。

処理中です...