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第一章 肝試しの夜
第十一話 音(芦田・鹿野田・望月グループ)
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思い返せば、清美が悲鳴を上げる前にも、この音があった。
ただ、それはすぐに遠ざかっていたことで、直接的な異変への関係性を見出だせなかったのも仕方のないことだった。
カツン……カツン……。
近付く音は、確かに、誰かが歩いているような音だ。
芦田は、すぐに望月と鹿野田の手を引いて、その身を屈めて一際大きな教卓の裏に座り込む。
普通の教卓ならば、子供が一人隠れるだけで精一杯だったかもしれない。しかし、なぜか、この教室にある教卓は、通常の三倍以上の大きさだったため、全員が隠れることができた。
カツン……カツン……。
規則正しく、しかしゆっくりと歩いてくるその音に、彼らは息を殺してジッと待つ。
カツン……カツン……。
教卓に身を隠しているとはいえ、やはりその音の方向が気になるのか、鹿野田はそっと廊下の方向を窺う。
懐中電灯の明かりはすでに消した。そのため、目の前に広がるのは真っ暗な教室でしかないのだが、それでもぼんやりと輪郭が掴める程度ではある。
カツン……カツン……カツン……………。
ふいに、音が止まる。
それは、清美達とバラバラになる前の再現のようで、誰もが指一本動かすことなくじっと固まる。そして……。
バンッ!
「っ」
バンッ、バンバンバンバンバンバンバン――――。
教室全体に響く音。壁に、窓に、床に、天井に、大勢の手を叩きつけるような、そんな音。それは、全て教室の中から響いていた。
青ざめながらも周囲へ視線を走らせる芦田、頭を抱えてうずくまる望月、どこか一点を見たまま固まる鹿野田。
いったい、どれだけの時間が経ったのだろうか。いつの間にか、音は全て消えていた。
しかし、音が消えても、その場からは誰も動けなかった。
誰も何も話さない無音の空間。そこに、バサッという音が突如として響き渡り、誰もがビクッと肩を跳ね上げる。
「あ……さっきの、日記……か……」
落ちたのは、先程読んでいた自由帳だった。
良くも悪くも、自由帳が落ちた音で緊張が少し解けたらしく、芦田はふらつきながらも立ち上がり、周囲を見渡してから再び懐中電灯を点ける。
ページを開いた状態で床に落ちていた自由帳を拾い上げた芦田は、無意識にそのページを見て、そのままもう一度、自由帳を落としてしまう。
「芦田君?」
「あ、あぁ、悪い。まだ、見ていないページがあったみたいで、な」
そう言って、振り返った芦田は、まだ座ったままの鹿野田へと自由帳を手渡す。
「優愛ちゃん、大丈夫ー?」
ただ、鹿野田の方はずっと無言のままの望月が気になったようで、芦田から自由帳を受け取ってお礼を言いながらも望月へそう確認を取る。
「だ、大丈夫じゃ、ないかも……さっきの、何なの?」
ブルブルと震えて、泣く寸前といった様子の声を出す望月に、鹿野田はそっとその頭を撫でる。
「うーん、僕も分からないけど、とりあえず落ち着くまでは撫でてあげるねー」
「……そこまで子供じゃないよ?」
「子供じゃなくても、頭を撫でられると嬉しいと思うよー?」
少し不貞腐れたような声を出した望月をあやしながら、鹿野田は優しく望月を撫でる。
そして、それを見た芦田は、ハッとした様子で、そっと二人の前で膝をつく。
「すまない。先に二人の状態を確認するべきだったな。今、俺に何かできることはあるか?」
「……今は、腰が抜けて動けないから、代わりに探索をお願い」
「うん、そうだねー。僕は、優愛ちゃんが心配だし、しばらくここに居るけど、芦田君が読んだ後にでもその日記を確認しておくねー。何か探すなら、無理のない範囲でねー」
「分かった」
そう言って立ち上がった芦田は、そのまま懐中電灯で黒板を照らす。
「っ………」
そして、黒板を見た瞬間、芦田は動きを止めた。
ただ、それはすぐに遠ざかっていたことで、直接的な異変への関係性を見出だせなかったのも仕方のないことだった。
カツン……カツン……。
近付く音は、確かに、誰かが歩いているような音だ。
芦田は、すぐに望月と鹿野田の手を引いて、その身を屈めて一際大きな教卓の裏に座り込む。
普通の教卓ならば、子供が一人隠れるだけで精一杯だったかもしれない。しかし、なぜか、この教室にある教卓は、通常の三倍以上の大きさだったため、全員が隠れることができた。
カツン……カツン……。
規則正しく、しかしゆっくりと歩いてくるその音に、彼らは息を殺してジッと待つ。
カツン……カツン……。
教卓に身を隠しているとはいえ、やはりその音の方向が気になるのか、鹿野田はそっと廊下の方向を窺う。
懐中電灯の明かりはすでに消した。そのため、目の前に広がるのは真っ暗な教室でしかないのだが、それでもぼんやりと輪郭が掴める程度ではある。
カツン……カツン……カツン……………。
ふいに、音が止まる。
それは、清美達とバラバラになる前の再現のようで、誰もが指一本動かすことなくじっと固まる。そして……。
バンッ!
「っ」
バンッ、バンバンバンバンバンバンバン――――。
教室全体に響く音。壁に、窓に、床に、天井に、大勢の手を叩きつけるような、そんな音。それは、全て教室の中から響いていた。
青ざめながらも周囲へ視線を走らせる芦田、頭を抱えてうずくまる望月、どこか一点を見たまま固まる鹿野田。
いったい、どれだけの時間が経ったのだろうか。いつの間にか、音は全て消えていた。
しかし、音が消えても、その場からは誰も動けなかった。
誰も何も話さない無音の空間。そこに、バサッという音が突如として響き渡り、誰もがビクッと肩を跳ね上げる。
「あ……さっきの、日記……か……」
落ちたのは、先程読んでいた自由帳だった。
良くも悪くも、自由帳が落ちた音で緊張が少し解けたらしく、芦田はふらつきながらも立ち上がり、周囲を見渡してから再び懐中電灯を点ける。
ページを開いた状態で床に落ちていた自由帳を拾い上げた芦田は、無意識にそのページを見て、そのままもう一度、自由帳を落としてしまう。
「芦田君?」
「あ、あぁ、悪い。まだ、見ていないページがあったみたいで、な」
そう言って、振り返った芦田は、まだ座ったままの鹿野田へと自由帳を手渡す。
「優愛ちゃん、大丈夫ー?」
ただ、鹿野田の方はずっと無言のままの望月が気になったようで、芦田から自由帳を受け取ってお礼を言いながらも望月へそう確認を取る。
「だ、大丈夫じゃ、ないかも……さっきの、何なの?」
ブルブルと震えて、泣く寸前といった様子の声を出す望月に、鹿野田はそっとその頭を撫でる。
「うーん、僕も分からないけど、とりあえず落ち着くまでは撫でてあげるねー」
「……そこまで子供じゃないよ?」
「子供じゃなくても、頭を撫でられると嬉しいと思うよー?」
少し不貞腐れたような声を出した望月をあやしながら、鹿野田は優しく望月を撫でる。
そして、それを見た芦田は、ハッとした様子で、そっと二人の前で膝をつく。
「すまない。先に二人の状態を確認するべきだったな。今、俺に何かできることはあるか?」
「……今は、腰が抜けて動けないから、代わりに探索をお願い」
「うん、そうだねー。僕は、優愛ちゃんが心配だし、しばらくここに居るけど、芦田君が読んだ後にでもその日記を確認しておくねー。何か探すなら、無理のない範囲でねー」
「分かった」
そう言って立ち上がった芦田は、そのまま懐中電灯で黒板を照らす。
「っ………」
そして、黒板を見た瞬間、芦田は動きを止めた。
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