黒板の怪談

星宮歌

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第二章 答えを求めて

エピローグ

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 夏休みの只中だったその日、願希小学校では、小さな事件が起こっていた。

 『女子生徒自殺未遂事件。絆は少女を救った!』と地方紙に書かれた事件の概要はこうだ。


 八月八日、肝試しに乗じて自殺しようとしている女子生徒に気づいた五名の友人達は、それを阻止すべく事情を確認し、必死に説得を行った。
 しかし、少女の心の傷は深く、彼らを振り切った際に階段から落ち、意識不明に。
 少女は、母親から虐待されていたとのことで、現在、少女を保護し、調査を行っている。
 また、少女の異母兄弟もこの五人の中に居り、少女の話で初めて、自分が異母兄弟なのだと知ったとのこと。
 彼の家庭に関しても、父親からの虐待が疑われるため、虐待を受けていたと思われる彼と、その弟、また、母親に関しても保護している。
 少女の意識は、昨日未明に戻り、今は落ち着いた様子だ。
 幼い子供がこのような虐待の犠牲にならないような世の中を、切に望む。


 彼らは結局、真実を話すことはなかった。

 真夜中ではあったものの、彼らは救急車を呼んで、清美を助けるべく尽力した。
 誰もが満身創痍ではあったものの、どうにか清美が本当に救われるように知恵を出し合って、口裏を合わせた結果だ。

 清美自身は、病院で目が覚めた時には肝試しのことを覚えておらず、ボロが出ることもなく、清美を母親から引き離すことに成功していた。


「うーん、芦田君が神田君になって、キヨちゃんも神田ちゃんになって……いやぁ、言いにくいねー」

「そのうち慣れるはずだよ、かのだん君!」

「まさか、こうなるとは思わなかった」

「私からしたら、寧子ちゃんは寧子ちゃんのままだから問題ないけど」

「な、なにはともあれ、無事で良かった、よね!」


 あれから二週間。清美が退院するその日、彼らは病院に集まっていた。
 彼らの言葉通り、芦田の名字も清美の名字も神田になった。
 芦田と清美にとって父親だった人間と、清美にとっての母親だった人間は逮捕された。
 その結果、芦田は母親の姓を名乗り、清美は、引き取り手が誰も居ない中、芦田の母親が引き取ることを強く主張したため、芦田の妹という立場になったのだ。

 あの影のことや、黒板の呪いについては、まだまだ分からないことが多い。しかし、彼らはもう二度と、肝試しに参加することはないだろう。彼らには、守るべき、大切な仲間達が居るのだから。


「「「「「退院、おめでとう!!」」」」」

「っ、皆、ありがとう!!」


 虐待され、いじめられた少女は、もうここには居ない。
 仲間に恵まれ、助けられた少女はきっと、この日のことを忘れることはないだろう。















 カツン………………カツン………………。



 真夜中の学校。そこには、まだ、怨念が渦巻いているかもしれない……。


(完)
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