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第四章 騒乱のカレッタ小王国
第二百七十六話 ラーミアの過去(二)
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密会は、約一年続いた。レッスンの合間にあるその時間は、私にとって、唯一、幸せな時間だった。そして、それが壊れるのは……とても、とても、呆気なかった。
「ハルム公爵。貴殿は、税金の横領、及び、闇組織との違法奴隷の取引、子女殺害の罪に問われております。ご同行を」
私の父親だった人が犯していた罪。それには、母親も、多くの使用人も関わっていて、ある日、突然来たファルシス魔国の暗黒騎士達によって全員が連れていかれた。私の側仕えだった者も、乳母も、皆、皆。
「どうして……」
罪を犯した父親達は、爵位は剥奪され、処刑となった。
「どうして……」
罪を犯した側仕えや乳母、それ以外の使用人達も、処刑となった。
「どうして……」
そうして、残ったのは、たった一人。あの屋敷で、罪を犯していなかったのは、私一人だった。
「もう、なにも、ない……」
まだ幼子であるということから、連座で罪に問われることはなかった。魔王の忠臣であるネクロ公爵家へと引き取られることになった私は、すっかり心を閉ざしてしまった。もう、誰も信用できなかった。
「ラーミアお嬢様。ご主人様がお呼びです」
暗い部屋で、何も手をつけることができずにボーッとしていることが多かった私は、名前も覚えていない私付きの侍女にそう呼ばれ、ノロノロと準備をする。
(もしかしたら、こんなごくつぶし、いらないっておはなしかもしれませんわね)
生きる気力なんてなかった。希望なんて、何も残っていなかった。ただただ、私の周りに居た人達は犯罪者で、私はその子供という事実が、重く心にのしかかって、離れてくれなかった。
(もう、ディーにもあえない……)
自分の罪ではなくとも、顔向けなんてできない。きっと、ディーも、犯罪者の娘なんかと仲良くしたくはないはずだ。
着替えをすませ、侍女に導かれるままにアルバート・ネクロ公爵が居る書斎へと向かう。
「しつれいします。およびときき、ラーミア・ネクロ、ただいままいりました」
「入れ」
中から入室の許可が出て、もうどうにでもなれと、投げやりになりながら扉を開く。
そこには、優しい顔立ちの青年姿をした魔族が居た。御年三百七十歳のアルバートは、私の姿を見てニッコリと微笑む。
「やぁ、気分は……まだ良くなさそうだけど、ちょっとはマシになったかな?」
そんな前置きをして、アルバートは私にもう少し近くに寄るようにと告げた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
多分、後一話くらいでラーミアの過去は終わりの予定です。
そして、すみません。
ちょっと体調が悪いので、明日の更新をお休みしますね。
また明後日から、更新していきます。
それでは、また!
「ハルム公爵。貴殿は、税金の横領、及び、闇組織との違法奴隷の取引、子女殺害の罪に問われております。ご同行を」
私の父親だった人が犯していた罪。それには、母親も、多くの使用人も関わっていて、ある日、突然来たファルシス魔国の暗黒騎士達によって全員が連れていかれた。私の側仕えだった者も、乳母も、皆、皆。
「どうして……」
罪を犯した父親達は、爵位は剥奪され、処刑となった。
「どうして……」
罪を犯した側仕えや乳母、それ以外の使用人達も、処刑となった。
「どうして……」
そうして、残ったのは、たった一人。あの屋敷で、罪を犯していなかったのは、私一人だった。
「もう、なにも、ない……」
まだ幼子であるということから、連座で罪に問われることはなかった。魔王の忠臣であるネクロ公爵家へと引き取られることになった私は、すっかり心を閉ざしてしまった。もう、誰も信用できなかった。
「ラーミアお嬢様。ご主人様がお呼びです」
暗い部屋で、何も手をつけることができずにボーッとしていることが多かった私は、名前も覚えていない私付きの侍女にそう呼ばれ、ノロノロと準備をする。
(もしかしたら、こんなごくつぶし、いらないっておはなしかもしれませんわね)
生きる気力なんてなかった。希望なんて、何も残っていなかった。ただただ、私の周りに居た人達は犯罪者で、私はその子供という事実が、重く心にのしかかって、離れてくれなかった。
(もう、ディーにもあえない……)
自分の罪ではなくとも、顔向けなんてできない。きっと、ディーも、犯罪者の娘なんかと仲良くしたくはないはずだ。
着替えをすませ、侍女に導かれるままにアルバート・ネクロ公爵が居る書斎へと向かう。
「しつれいします。およびときき、ラーミア・ネクロ、ただいままいりました」
「入れ」
中から入室の許可が出て、もうどうにでもなれと、投げやりになりながら扉を開く。
そこには、優しい顔立ちの青年姿をした魔族が居た。御年三百七十歳のアルバートは、私の姿を見てニッコリと微笑む。
「やぁ、気分は……まだ良くなさそうだけど、ちょっとはマシになったかな?」
そんな前置きをして、アルバートは私にもう少し近くに寄るようにと告げた。
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多分、後一話くらいでラーミアの過去は終わりの予定です。
そして、すみません。
ちょっと体調が悪いので、明日の更新をお休みしますね。
また明後日から、更新していきます。
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