我輩は紳士である（猫なのに、異世界召喚されたのだが）

第四章 騒乱のカレッタ小王国

第二百八十八話 遭遇

「ふむ、竜の森か……しかし、ドラゴンではなく、恐竜か」


　カレッタ小王国首都、ルトから離れ、この竜の森に来たのは、召喚されて六日目のことだった。召喚された直後は大いに歓待を受けたものの、早くタロを見つけ出したいのと、日本での自分がどうなったのか分からないのとで早々に切り上げてもらい、水が来なくなった原因の調査に乗り出したのだ。
　竜の森に来て一日目は、借り受けた剣でどこまで戦えるものかを試して……簡単に恐竜達を両断できることを知った。
　そして、二日目の今日は、川がどこにあるのかを探して……一組の男女が恐竜に襲われているところに遭遇した。


「むっ、危ないっ！」


　そこに居た黒髪の男と紫の髪の女性に危険を知らせると、私は一気に恐竜との距離を詰める。


「えっ」

「ちょっ！？」


　私の出現に驚いた様子の二人だったが、私は振り返ることなく、ティラノサウルスらしき恐竜の頭まで駆け上がると、一気に脳天へ剣をめり込ませ、離脱する。


「グギャアァァァ」


　そうして、断末魔を上げた恐竜は、そのままズシンと倒れるのだった。


「……一撃、すごい」

「えぇ、ですが……獲物の横取りは感心しませんわよ？」

「むっ？　逃げていたのではなかったのか。それは、申し訳ないことをしたのだ」


　女性の言葉に、私は判断を間違えたらしいことに気づいて、即座に謝罪する。しかし、そうして振り返った直後、その二人は信じられないものを見たとばかりに表情を凍らせ、一気にそれぞれの武器を構える。


「先代魔王がなぜこんなところに居るんですの？」

「ラーミア、時間、稼ぐ、逃げろ」

「嫌です」

「むっ？　先代魔王？　何のことなのだ？」


　ただならぬ緊張感に包まれた空間で、私は一人、状況が分からずに首をかしげる。そうして、どうにも動きづらい中をじっと見つめ合うこと数十秒。


「紋様がありませんわね」

「雰囲気も、違う」

「他人のそら似、でしょうか？」


　何やら話し出した二人をじっと観察していると、誤解が解けたらしく、武器を下ろしてくれる。


「申し訳ありません。少し、因縁のある知り合いに似ていたもので、警戒してしまいましたわ」

「すまない」

「いや、こちらこそ、急に貴女方の獲物を横取りしてしまって申し訳なかった」


　そうしてお互いに謝ると、次は自己紹介となる。


「私はラーミア。こちらはディアムです。貴方の名前は何と言うのですか？」

「これはご丁寧にどうも。私は、犬斗という」

「ケント、ですね。こちらには何の用でいらしたのですか？」

「ふむ、私は、この場所から流れる水がどうして流れて来なくなったのかの調査に来た者なのだ」

「む、目的、一緒？」

「そのようですね」


　話をしてみると、どうやらこのラーミアという女性とディアムという男性も同じ目的で来ているらしかった。


「おぉっ、では、迷惑でなければ、ご一緒させていただいても構わないだろうか？　私はこの場所に疎くてな。戦力にはなれると思うから、どうであろうか？」


　そうして、私はこの二人の男女と行動を共にすることとなったのだった。


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タロの前にラーミア達と会ってる飼主さん。

タロはホームシック中だから、早く会わせてあげたいところですね。

それでは、また！