我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第四章 騒乱のカレッタ小王国

第二百八十九話 非常識な男

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 バルディス達と別れ、ディアムと二人っきりの調査に少し浮かれていた私だったが、竜の森に入った直後、乱入してきた男によってそんな気分も霧散した。
 先代魔王に良く似た男。ケントと名乗った彼は、とんでもなく非常識な男だった。


「よっこいしょ」


 そんな掛け声とともに、倒した竜を持ち上げて運んだり。


「『解体魔法』」


 と言って、見たことも聞いたこともない魔法で竜を解体してしまったり。


「これ、全部必要なのだろうか?」

「いえ、食料として、少しもらおうかと思っただけですので、これだけいただきますわ。残りはどうぞご自由に」

「ふむ、ならば、『収納』」


 タロと同等かとも思える馬鹿容量の『収納』を展開したりと、そろそろ驚くことに疲れてきた。


「カレッタ小王国は、こんな人材を持っていたのですね」

「かなり、脅威」


 あまりにも強く、非常識な男の姿に、私達は警戒心をさらに引き上げる。こんな人材が居て、今まで竜の森を調査してこなかったというのは何とも腑に落ちない。つまりは……。


 勇者、かもしれませんわね。厄介なことになりましたわ。


 タロと同等。いや、もしかしたら、それ以上の化け物が目の前に居るかもしれない状況に、否応なく緊張感は高まる。


「それにしても、ラーミア殿もディアム殿もお強いな」

「いえ、それほどでもありませんわ」

「まだ、修行、必要」


 竜を撃退しながら進むと、さすがに私達の実力にも気づいたらしく、ケントは手放しで褒め称えてくる。


「しかし、貴女方のような強者が居ながら、なぜ私に調査を命じられたのだろうか?」

「……私達は流浪の旅人です。今回は、興味を持って独自に動いているだけです」


 ふぅむと考え込むケントに、私はとりあえずの言い訳を話しておく。


「私達は権力者と関わりたくはないので、もし、調査で何か分かったとしても、その結果は噂で流すくらいしかしない予定でした」

「むっ、そうであったか。では、貴女方と協力したことは、上には黙っておくとしよう」

「よろしくお願いしますわ」


 少し匂わせるだけで、察して対処するケントに好感を持ちつつ、しかし、将来的に敵対する可能性も考えて慎重になる。


「ケントは、どのような命令の下、動いておられるのか、聞いても?」


 そう尋ねれば、ケントはしばらくためらった後、少しだけ話してくれる。


「むぅ、私は、水が枯渇した原因の追及と、その原因の排除を命じられている」

「まぁっ、では、世間で噂されている魔王を倒すのですか?」

「いや、魔王を倒す予定はない」


 ここで、言い淀むか、肯定するかをしてくれれば、私はケントが勇者であると判断できた。しかし、ケントははっきりと魔王討伐を否定する。


「そもそもの原因が分からないというのもあるが、その役目は勇者様のものだ」

「申し訳ありません。ケントがあまりに強かったので、もしかしたら、ケントが勇者様なのかと思ってしまいましたわ」


 さらっと言い訳をしながら、ケントの目をじっくり見てみるものの、どうやら心の内を読ませないようにする技術に長けているらしい。その瞳からは、何も読み取れず、中途半端に核心に至れずにやきもきする。


 後で、たっぷりと調査するべきですね。


 会話から情報を引き出すことを諦めた私は、その後、大人しく引いて、機会を伺うことにするのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


飼主はさすがに全てを語ることはありませんでしたね。

次回も、おそらくラーミア視点か、もしかしたら飼主視点になるかもです。

それでは、また!
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