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第四章 騒乱のカレッタ小王国
第三百七十三話 地獄の始まり
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振り下ろされる凶刃。呆然とした表情の弟。混乱し、戦いへと発展したその場所は、確かにある種の地獄だった。しかし、本当の地獄はその後に……次に目を覚ました時にやってきた。
『フルル? 誰だ? それは?』
『第六王子、ですか? ミアト殿下は弟がほしいのですね』
『記憶? 別におかしいことはないが……?』
誰も、誰も、覚えていない。僕の弟を。僕の大切なフルルを。城に居る者達は、誰一人として覚えていなかった。
「どうしてっ! フルル、フルルっ!」
あの凶刃に晒された出来事は、皆覚えていた。ただし、その時僕はザルト兄上と二人で行動をしていて、僕一人が店に入ったことになっていた。なかなか帰らない僕を心配したザルト兄上が店に行った時、ちょうど中の店員が不審者と交戦中で、慌ててザルト兄上も対抗し、結局相手を殺してしまったという話だ。そこに、フルルの姿は一欠片も存在していない。
「フルルは、無事なんだろうか? どうして、僕だけが覚えている? どうして、皆、忘れてしまったんだ?」
殺風景な自室で一人、僕はベッドに腰かけたまま頭を抱える。
何度も、何度も考えた。何度も、何度も悩んだ。もしかしたら、フルルは僕が作り出した幻想なのかもしれないとまで思うようになって、胸が痛くて仕方がなかった。
まるで、フルルの存在そのものがなかったかのように振る舞う城の者達に、僕が拒絶の声を上げるのはそう遠くはなかった。
「もう、あの日から一週間以上立つんだよね……」
刺された場所は、今はもう何もなかったかのように綺麗な状態だ。ザルト兄上に城へ担ぎ込まれてすぐに、治癒魔法使いが対応してくれたからだ。
「僕の中ではフルルの記憶が根付いてるというのに……どこに行ったんだ? フルル?」
苦しい、悔しい、悲しい、辛い。そんな言葉を尽くしてもどうにもならないくらいに渦巻く感情は、僕を飲み込んでは苦しめる。大切な家族が忘れられ、その安否すら掴めないなんて、兄としては最悪だ。
「フルル……」
フルルの部屋は、確かに存在した。そして、フルルが使っていたそのままの状態で整えられていたが、翌日になるとその部屋は僕の部屋以上に殺風景なものへと変貌していた。
どんどん、フルルの痕跡がなくなっていく……。
今ではもう、本当にフルルという弟が居たのか、自分の中でも分からなくなっている。ただ、今だけは、フルルを忘れた家族に会いたくなどない。
勇者殿との晩餐会を開くという話だったが、そんな場所に行く元気などなかった。
ポスッと枕の上に倒れ込んだ僕は、呆然と何を見るともなしに前を見る。
フルルに会いたい。
望むのはただ一つ。最愛の弟に会いたいということだけだ。
段々と部屋が暗くなる中、僕はぼんやりとし続けて、いつしか眠りに落ちるのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
実は一人だけ覚えていましたというお話。
でも、周りの人間が全て忘れている存在を、自分だけが覚えているという状況に、随分心をすり減らしております。
早く再会できるようにしたいところですね。
それでは、また!
『フルル? 誰だ? それは?』
『第六王子、ですか? ミアト殿下は弟がほしいのですね』
『記憶? 別におかしいことはないが……?』
誰も、誰も、覚えていない。僕の弟を。僕の大切なフルルを。城に居る者達は、誰一人として覚えていなかった。
「どうしてっ! フルル、フルルっ!」
あの凶刃に晒された出来事は、皆覚えていた。ただし、その時僕はザルト兄上と二人で行動をしていて、僕一人が店に入ったことになっていた。なかなか帰らない僕を心配したザルト兄上が店に行った時、ちょうど中の店員が不審者と交戦中で、慌ててザルト兄上も対抗し、結局相手を殺してしまったという話だ。そこに、フルルの姿は一欠片も存在していない。
「フルルは、無事なんだろうか? どうして、僕だけが覚えている? どうして、皆、忘れてしまったんだ?」
殺風景な自室で一人、僕はベッドに腰かけたまま頭を抱える。
何度も、何度も考えた。何度も、何度も悩んだ。もしかしたら、フルルは僕が作り出した幻想なのかもしれないとまで思うようになって、胸が痛くて仕方がなかった。
まるで、フルルの存在そのものがなかったかのように振る舞う城の者達に、僕が拒絶の声を上げるのはそう遠くはなかった。
「もう、あの日から一週間以上立つんだよね……」
刺された場所は、今はもう何もなかったかのように綺麗な状態だ。ザルト兄上に城へ担ぎ込まれてすぐに、治癒魔法使いが対応してくれたからだ。
「僕の中ではフルルの記憶が根付いてるというのに……どこに行ったんだ? フルル?」
苦しい、悔しい、悲しい、辛い。そんな言葉を尽くしてもどうにもならないくらいに渦巻く感情は、僕を飲み込んでは苦しめる。大切な家族が忘れられ、その安否すら掴めないなんて、兄としては最悪だ。
「フルル……」
フルルの部屋は、確かに存在した。そして、フルルが使っていたそのままの状態で整えられていたが、翌日になるとその部屋は僕の部屋以上に殺風景なものへと変貌していた。
どんどん、フルルの痕跡がなくなっていく……。
今ではもう、本当にフルルという弟が居たのか、自分の中でも分からなくなっている。ただ、今だけは、フルルを忘れた家族に会いたくなどない。
勇者殿との晩餐会を開くという話だったが、そんな場所に行く元気などなかった。
ポスッと枕の上に倒れ込んだ僕は、呆然と何を見るともなしに前を見る。
フルルに会いたい。
望むのはただ一つ。最愛の弟に会いたいということだけだ。
段々と部屋が暗くなる中、僕はぼんやりとし続けて、いつしか眠りに落ちるのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
実は一人だけ覚えていましたというお話。
でも、周りの人間が全て忘れている存在を、自分だけが覚えているという状況に、随分心をすり減らしております。
早く再会できるようにしたいところですね。
それでは、また!
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