我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第四章 騒乱のカレッタ小王国

第三百八十九話 夢の中で(二)

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「ボクは、ロンド」


 我輩の自己紹介に対して、男はしっかりと応えてくれる。どうやら、我輩の言葉が理解できる者らしい。そうと分かれば、やることはただ一つ。ここから元の場所に戻るのだ。


「にゃー? (ここはどこなのだ?)」

「ここ、は……多分、邪神の領域」

「……にゃ? (……邪神?)」

「邪悪なる神、封印された神、破滅をもたらす神」


 いや、我輩、邪神が何か分からなかった訳ではないのだ。ただ、あまりにも予想外の言葉を聞いたというか……もしかして、ここはとんでもなく危険な場所なのではなかろうか?


「にゃ? (ここに、邪神が居るのか?)」

「今は、居ない」


 首を軽く横に振ったロンドは、そのまま大きくため息を吐く。


「ただ、今だけだ。……きっと、もうすぐ戻ってくる」

「にゃっ!? (も、戻ってくるっ!?)」


 それは不味いのだ。邪神を倒すのは、飼い主に課せられた役目。つまりは、飼い主でなければならない理由があるはずなのだ。だから、我輩だけで勝てる見込みなどない。

 どこかに隠れるべきかとアワアワしていると、ロンドは、その金の瞳をすぅっと細める。


「なるほど、キミは、ボクの悪戯で召喚された猫、だね?」

「にゃ? (悪戯?)」


 何のことか分からず、首をかしげると、ロンドは瞳を閉じて、何かをブツブツと呟き出す。


「これなら……力……見つからな……はず……」


 断片的に聞き取れる言葉では、何が言いたいのか全く分からない。

 ここから逃げた方が良いのか、逃げるにしても、どこに逃げたら良いのかと考えていると、どうやらロンドの考え事は終わったらしい。


「うん、力をあげるから、これでボクを助けて」

「にゃ? (何の話なのだ?)」


 意味の分からないことを言われて、我輩尋ねてみるものの、答えてくれるつもりはないらしい。


「時間がない。『悪食』をボクに使ってみて」

「にゃっ……(そ、そんなことをすれば、ロンドが……)」

「大丈夫、改良したから、ボクは死なない。さぁ、急いで」


 そうは言われても、会ったばかりの人間を殺すのは忍びない。ただ、時間がないというのは本当らしく、どこからか嫌な気配が漂い始めていた。


「『悪食』を使えば、ここから出られる」


 その言葉が、決定打だった。我輩、意を決して、『悪食』を発動させるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


明日で、多分この『夢の中で』は終わりです。

それでは、また!
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