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第四章 騒乱のカレッタ小王国

第四百二十六話 精神侵略魔法(一)

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 『精神侵略』魔法とは、相手の精神世界に侵入し、その精神を汚染する、もしくは、回復させるための魔法である。主には、攻撃手段として用いられることの多い魔法で、立場のある者は『精神侵略』を受けないために、『精神防衛』魔法を使っていることが多い。

 『サポートシステム』のシロからもたらされた情報を頭の中で整理した私は、宿屋の一室で、ベッドの上で未だに目覚めないケルトを前に、椅子へと腰かける。


「俺達は出ていた方が良いか?」

「いや、できれば、無防備な私やケルトが害されることのないように、守りを固めておいてほしいのだ」

「分かった。とはいっても、今は俺とラーミアは役立たずだがな」


 未だにフラフラな様子のバルディスは、苦笑気味にそう告げると、タロやマギウス、ロギーに守りを固めるよう指示をしてくれる。ちなみに、アグニとはラダ族を送り返した際に別れていたらしい。アグニにもそれなりの用事はあるのだろう。


「バル、俺は?」

「ディアムは、俺達と同じで待機だ。もう、魔力もほとんど残っていないだろう?」


 そう言われたディアムは、ためらいがちにうなずく。ケルトとの戦闘は熾烈で、バルディスとラーミアだけでなく、ディアムの魔力もだいぶ削っていたらしい。帰りは、タロの『闇化』で全員帰ってきたものの、ディアムは疲れきっているようだった。


「うむ、しっかりと休んでほしいのだ。今回は一応警戒するというだけで、本当に何かあるとは思っていないのだ」

「分かった。俺、待機する」


 そうして、全員がそれぞれの配置についたとの連絡を受けた私は、早速、椅子に座ったまま魔法を発動させる。


「『精神侵略』」


 その瞬間、視界が暗転し、しばらくすると、目の前に何かが映り始めた。


「ふむ、これは、精神世界とやらなのだろうか?」


 暗く、淀んだ世界。地面は荒れ果て、植物らしいものは一つも見当たらない。空気はどこか重たく、息を吸うのも少しだけ苦しいような感覚がある。


「空は、赤紫か……まるで、魔界なのだ」


 自分の中にある魔界のイメージと似通ったその世界。私は、しばらく立ち尽くし、周囲を見渡してみる。


「……ふむ、明らかにあれが怪しいのだ」


 荒れ果てた大地が続くのみの空間に、一つだけあった異常。それは、巨大な黒い城。どこか刺々しい見た目のその城は、ただ一つだけ、そこに存在していた。


「とにかく行ってみるのだ」


 あそこに何かがある。それは、もはや確信であり、私は覚悟を決めて城の中へ足を踏み入れた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


もうちょっと、精神世界のお話は続きそうです。

それでは、また!
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