我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第四章 騒乱のカレッタ小王国

第四百二十七話 精神侵略魔法(二)

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 漆黒の城の中は、意外と趣味の良い調度品が所々に点在していた。城の造りそのものはゴシック調で威圧感のあるものではあったが、それはどこか心踊る格好いいものでもあった。


「むぅ、この世界の美術品には詳しくはないが、これらの価値は相当なものなのであろうな」


 長い廊下の途中。ガラスで作られた美しい青の壺を前にして唸っていると、廊下の先の方で、何か音がする。


「む?」


 何かが割れるような音。その音につられるようにして、私はその音源の元へと歩き出す。すると、今度は女性のヒステリックな叫び声が聞こえてくる。


「どうしてっ、あんたなんか、生まれて来なければよかったのよっ!」


 パシンッと誰かを叩いたような音に、私は、嫌な予感とともに走り出す。音はすぐそこで聞こえているというのに、なぜか走っても走っても距離が縮まらないことに焦れた私は、魔法で『身体強化』を使って一気にその扉へと駆け寄り、それを開け放つ。
 そこには、黒い影達に囲まれた、幼い子供が。私に良く似た、ケルトらしき者が、膝を抱えていた。


「ケルト……?」


 恐る恐る声をかけてみると、ケルトはゆっくり顔を上げる。その黒い瞳は濁りきり、頬は痩せこけ、暴力の痕が全身に残っているような状態だった。


「失せろ」


 ただ一言、そう命じられた瞬間、私は城の外に居た。


「これは、いったい……?」


 ケルトに遠ざけられたことに、思いの外、ショックを受けながら、私は今起こった現象を必死に分析する。


「あれは、ケルトの過去、なのか?」


 あのヒステリックな女性の叫び声や虐待の痕が、ケルトの過去であるとするならば、恐らくは邪神はそこにつけこんで、ケルトを捕らえたのだろう。あの頑なな様子では、簡単に話を聞いてもらうことはできそうにない。ケルトは私の半身だというのに、声が届かないことがもどかしくて仕方がない。


「もう一度、行ってみるのだ」


 今、届かないのであれば、何度でも届くように声をかければ良い。こういう時は、体当たりが一番だと分かっている私は、もう一度城の中に入る。ただし、今度は手がかりを集めるために、先ほどとは別の場所を探索することにする。


「やはり、質の良い調度品が多いのだ。ケルトは、貴族か何かだったのであろうか? 魔王になるためには実力がなければならないと聞いた覚えはあるが、家柄も重要なのではないだろうか?」


 バルディスに魔王の条件に関して少し聞いていたことを思い出しながら、私は様々な部屋へと足を運ぶ。しかし、そのどれもが閑散としていて、手がかりらしい手がかりが見当たらない。


「むぅ」


 そうして唸っている時だった。本棚の辺りで、カタリと音がしたのは。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


意外と平和な精神世界の探索になっておりますが、ここからはちょっとばかり大変かも?

それでは、また!
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