我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第四章 騒乱のカレッタ小王国

第四百二十八話 精神侵略魔法(三)

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「隠し扉とは、また定番な……」


 本棚をスライドさせると、そこには隠し扉があった。ただ、まるで見つけてくれとばかりに音が鳴ったことを考えると、もしかしたら、私は何者かに誘導されているのかもしれない。ここは、気を引き締めてことに当たるべきであろう。


「ふむ、行くとするのだ」


 隠し扉を開ければ、その先には、地下へと続く階段が見える。扉を閉めれば真っ暗になるであろうと考えた私は、すかさず『光源』を使って地下へと下りていく。
 音を立てず、静かに、ゆっくりと下りていけば、次第に、その先で言い争う声が聞こえてくる。


「嫌っ、嫌だっ」

「黙れっ! デイカー家の恥さらしがっ!」


 男の声が、誰かを……いや、恐らくはケルトを怒鳴り付ける。


(デイカー? ルドラス・デイカー、か?)


 ケルトを救える『精神侵略』魔法を使える者として挙げられた人物の中に、その名前があったことを思い出した私は、思わず顔をしかめる。あの『探索』の結果から考えるに、ルドラス・デイカーは、ケルトにとって近しい血縁者であるはずだ。もしかしたら、父親かもしれない。
 私は、ケルトの叫びにつられて思わず駆け出し、その先の扉を開ける。すると、そこには狂気が広がっていた。

 地面いっぱいを濡らす赤黒い液体。積み上がった死体の山。瘴気に満ちた異常な部屋で、ケルトは苦しみもがいていた。


「ケルトっ!」


 私は、ここが精神世界であることも忘れてケルトを助けようと手を伸ばすが、その手は容易くすり抜けてしまう。


「さぁ、邪神様の復活の礎となるのだっ!」

「いや、だ……誰か、たすけ……」


 瘴気のせいか、それとも、瘴気を受けて完全に狂ったデイカー家の者だと名乗る人物を目の前にしているせいか、ケルトの声は途切れ途切れで、とても弱々しい。


「お前のような役立たずでも、邪神様のための贄になれるのだ。感謝するが良い」


 瘴気が出ているということは、すでにこの場は『邪神の眼』になりかけているということだ。ケルトは目の前の狂気に絶望の表情を浮かべる。


「くそっ! 『炎爆』、『水爆』、『雷爆』」


 私は、魔法で男を攻撃するものの、やはり、それは簡単にすり抜けてしまう。目の前で助けを求める半身が居るのに、それを助けられない。
 その事実に絶望しながらも、とにかくこの悪夢を終わらせようと魔法を使い続ける。


「『光剣』っ」


 そして、滅茶苦茶に魔法を乱発しつつ、その中で光魔法を使った瞬間、変化が現れた。
 男の視線が、ジロリと、私の方を向いたのだ。


「何者だっ!」


 そう問いかける男に、私は、攻撃手段を得たことを自覚する。


「私は、ケルトの半身なのだっ!」


 そう言って、私は男を斬り伏せるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ケルトは一度、邪神復活の生け贄にされかかったことがあると判明。

なぜ、ケルトが『恥さらし』なんて呼ばれていたのかは、もうしばらく後で判明させますね。

それでは、また!
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