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第四章 騒乱のカレッタ小王国
第四百三十話 精神侵略魔法(五)
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全速力で走って、手頃な客室らしき部屋へと入った私は、鍵を閉め、カーテンも閉めきって、ケルトをベッドに横たえさせる。
「ぐ、ぅ……」
ケルトは、瘴気の影響か、まだ意識を失ったままうなされている。そっと額に触れてみれば、かなりの熱もあった。
「『水球』」
とりあえず、私は適度な温度の額を覆えるだけの『水球』を出すと、それをケルトの額に固定しておく。
「ケルト……」
そう呟けば、いきなり、ケルトの目がパチリと開く。
「なぜ、助ける? 私は、忌み嫌われる魔族だぞ?」
体調の悪さを感じさせないはっきりとした問いかけに、私は、この世界が精神世界であることを改めて認識しながら答える。
「私は、ケルトが好きなのだ。だから、助けた。それだけなのだ」
「私が、好き? 私を好く者など、誰も居るものか」
すると、次の瞬間には、目の前に居たはずのケルトは消え、場所も屋敷の廊下に戻っていた。
「これは……」
目の前には、先程の隠し扉があった部屋の扉がある。私は、迷わずその扉を開け、次の瞬間、絶句した。
「あなたは何も考える必要なんてないの。ただのお人形よっ。だから、これからすることを誰かに言いつけることは禁止します」
そこには、幼いケルトと高飛車に見える赤髪の魔族の女性が居た。……しかも、女性は裸で、ケルトに迫っている。
「はい、ユフ様」
ユフ・フラジア、か?
光のない瞳で応えるケルトを見ながら、私はようやく働いた頭で、彼女がケルトに『精神侵略』魔法をかけられるはずだったもう一人なのではないかと推測する。そして、この許しがたい状況に、私は再び『光剣』を作って、彼女に斬りかかる。
「ぎゃあぁぁぁあっ!」
悲鳴を上げる女を横目に、私は目を見開いたケルトの手を取って、とにかくその場から離れる。きっと、この時予感があったのだ。女が、死なないということを。ゾンビのように、何度でも私を、ケルトを追いかけようとするだろうということを。
ルドラス・デイカーも、ユフ・フラジアも、何者かは分からない。しかし、もし、あの男と女がそうであるのだとすれば……私は、ケルトを救う役目を誰にも譲りはしないっ。
小さな手を引きながら、またしても手頃な部屋へと入ると、先程と同じ質問をケルトは投げ掛ける。
「なぜ、助ける? 私は、忌み嫌われる魔族だぞ?」
「何度だって助けてみせる。私は、ケルトが好きなのだから」
「……私を好く酔狂な者など、居るはずがない」
そうして、またしても、私は廊下に戻される。目の前には扉。きっと、何度だってケルトは地獄を味わうのだろう。そして、私は何度だって、ケルトを助ける。
それを覚悟した私は、再び扉を開けるのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
救われなかったケルトを救い続けること。
それが、この精神世界で飼い主がやるべきことですね。
タロが出てこなくて寂しいですが、もうちょっとお付き合いください。
それでは、また!
「ぐ、ぅ……」
ケルトは、瘴気の影響か、まだ意識を失ったままうなされている。そっと額に触れてみれば、かなりの熱もあった。
「『水球』」
とりあえず、私は適度な温度の額を覆えるだけの『水球』を出すと、それをケルトの額に固定しておく。
「ケルト……」
そう呟けば、いきなり、ケルトの目がパチリと開く。
「なぜ、助ける? 私は、忌み嫌われる魔族だぞ?」
体調の悪さを感じさせないはっきりとした問いかけに、私は、この世界が精神世界であることを改めて認識しながら答える。
「私は、ケルトが好きなのだ。だから、助けた。それだけなのだ」
「私が、好き? 私を好く者など、誰も居るものか」
すると、次の瞬間には、目の前に居たはずのケルトは消え、場所も屋敷の廊下に戻っていた。
「これは……」
目の前には、先程の隠し扉があった部屋の扉がある。私は、迷わずその扉を開け、次の瞬間、絶句した。
「あなたは何も考える必要なんてないの。ただのお人形よっ。だから、これからすることを誰かに言いつけることは禁止します」
そこには、幼いケルトと高飛車に見える赤髪の魔族の女性が居た。……しかも、女性は裸で、ケルトに迫っている。
「はい、ユフ様」
ユフ・フラジア、か?
光のない瞳で応えるケルトを見ながら、私はようやく働いた頭で、彼女がケルトに『精神侵略』魔法をかけられるはずだったもう一人なのではないかと推測する。そして、この許しがたい状況に、私は再び『光剣』を作って、彼女に斬りかかる。
「ぎゃあぁぁぁあっ!」
悲鳴を上げる女を横目に、私は目を見開いたケルトの手を取って、とにかくその場から離れる。きっと、この時予感があったのだ。女が、死なないということを。ゾンビのように、何度でも私を、ケルトを追いかけようとするだろうということを。
ルドラス・デイカーも、ユフ・フラジアも、何者かは分からない。しかし、もし、あの男と女がそうであるのだとすれば……私は、ケルトを救う役目を誰にも譲りはしないっ。
小さな手を引きながら、またしても手頃な部屋へと入ると、先程と同じ質問をケルトは投げ掛ける。
「なぜ、助ける? 私は、忌み嫌われる魔族だぞ?」
「何度だって助けてみせる。私は、ケルトが好きなのだから」
「……私を好く酔狂な者など、居るはずがない」
そうして、またしても、私は廊下に戻される。目の前には扉。きっと、何度だってケルトは地獄を味わうのだろう。そして、私は何度だって、ケルトを助ける。
それを覚悟した私は、再び扉を開けるのだった。
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救われなかったケルトを救い続けること。
それが、この精神世界で飼い主がやるべきことですね。
タロが出てこなくて寂しいですが、もうちょっとお付き合いください。
それでは、また!
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