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第四章 騒乱のカレッタ小王国

第四百三十一話 精神侵略魔法(六)

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 私は繰り返した。何度も、何度も繰り返した。ケルトの危機を、何度も救い続け、何度もケルトの質問に揺るがぬ答えを出し続けた。すると、とうとう変化が表れる。


「ここは……」


 繰り返すうちに、デイカーを名乗っていた男がルドラス・デイカーであったことも、ユフという名前だった女性がユフ・フラジアであったことも、そして、彼らがケルトの両親であったことも分かってきた。
 暴力を奮うルドラスからケルトを助け、また質問に答えた私は、一度見たことのある真っ白な空間に疑問符を浮かべる。


「ここは、あの神とやらと出会った場所なのか?」


 真っ先に思うのは、召喚される際、セイクリアに呼ばれた空間だ。もし、ここが私の思っている通りの場所で、セイクリアが呼んだのだとしたら、適当な理由であれば容赦はしないつもりだった。
 しかし、私の予想は大きく外れる。


「っ、ケルト!?」


 ふいに背後に気配を感じて振り向くと、そこには、現実世界と同じように年を取った姿のケルトが立っていた。


「なぜ、助ける? 私は、忌み嫌われる魔族だぞ?」


 もう何度目ともしれないその問いに、私は間髪入れずに答える。


「何度だって答えるのだ。私は、ケルトが好きなのだ。好きな相手を助けることは、自然なことであろう?」


 すると、目の前のケルトは、先程までとは違う反応を見せる。


「そう、か……」


 どこか泣きそうな。それでも、嬉しそうな表情をしたケルト。私は、つい、手を伸ばして、そんなケルトを抱き締める。


「貴方の名前は、何というのだ?」

「私か? 私は、飼主犬斗。いや、こちらでの並べ方ならば、ケント・カイヌシとなるな」

「そうか、ケント。ありがとう。私を救ってくれて、ありがとう」


 腕の中で、いつの間にか少年の姿になったケルトは、ポロポロと涙を溢す。


「当然なのだ。ケルトは、私の半身なのだ。とても大切な者なのだ」

「半身……あぁ、確かに、半身だ。やっと、会えた」

「うむ、さぁ、そろそろこんな目が潰れそうなほどに白い場所からは抜け出すのだ。そして、起きたら私の仲間を紹介させてほしいのだ。あぁ、ケルトのために、マギウスやロギーも必死になっていたのだぞ?」

「仲間……マギウスとロギーも……? そう、か……そうだな。戻ろう、私達の場所へ」

「うむ」


 顔を上げたケルトを抱き寄せれば、辺りは強い光に包まれる。そして……。


「にゃあっ! (飼い主っ!)」


 目が覚めた瞬間、そこにあったのは、ただでさえ大きい、タロのドアップな顔だった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


おい、最後!

と、誰かに突っ込まれそうだなぁと思いながら、とりあえずタロが最後の最後で登場です。

次からは、ケルトも仲間に加えて、冒険再開ですよ!

魔王に勇者二人に、四天王、隠密部隊隊長、元四天王、先代魔王、ついでに、悪神……どんな過剰戦力?と思わないでもないですけどね。

それでは、また!
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