我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第四章 騒乱のカレッタ小王国

第四百三十二話 小さな嫉妬

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 飼い主が目を覚ました途端、我輩、飼い主の顔を覗き込んで声を上げ……顔をしかめられた。


「重いのだ、タロ」

「に、にゃあ(ご、ごめんなさいなのだ)」


 『重い』という言葉にダメージを受けつつも、我輩、飼い主の上から下りる。


「良かった。目が覚めたのだな」


 と、そこに、ケルトが飼い主の側に膝をついて、横たわっている飼い主を眺める。


「ケルトの方が先に目を覚ましていたか」

「あぁ、ケントのおかげで、戻ってこれた。感謝する」


 飼い主そっくりなケルトが飼い主に笑いかけると、飼い主は我輩でも稀にしか見られない穏やかな笑顔を浮かべる。


 む、やるのだ。ケルト。


 それに感心していると、飼い主はさらに我輩の想像を超えたことをする。


「ケルト……」


 飼い主はゆっくり起き上がったかと思えば、ケルトをギュッと抱き締める。


「にゃっ!? にゃあっ! (にゃにっ!? そこは我輩の居場所なのだっ!)」


 飼い主に抱き締められるのは、我輩の特権だったはずなのだ。今日出会ったばかりであるはずのケルトを抱き締めるなんてこと、あってはならないのだ。


「にゃっ、にゃっ(飼い主っ、飼い主っ)」


 いくら飼い主に似ているからとはいえ、我輩、ケルトが抱き締められたまま、抵抗の一つもしないことにモヤモヤした気持ちになる。


「ケント、お前の猫が鳴いているぞ?」

「大丈夫なのだ。もうしばらく、このままで……」


 しっかりと抱き締め合う二人の姿に、我輩、絶望する。


 飼い主を、盗られたのだ……。


 大切な飼い主が、どこの馬の骨とも知れない……わけではないが、先代魔王のケルトに盗られてしまったことを悟った我輩は、一人涙目になる。


「タロ。しばらくは二人にしてやれ」


 我輩と飼い主のやり取りを見ていたバルディスにそう言われて、我輩、耳を垂らした状態でとぼとぼとバルディスの足元へと向かう。


「にゃー……(飼い主……)」


 そして、一度振り返ってみたものの、そこには先程と変わらない、二人が抱き締め合う光景しかなかった。


「にゃあぁ(バルディスぅ)」

「おぉ、よしよし、寂しかったな」


 バルディスに抱き上げられた我輩は、とにかくひとしきりバルディスに甘え続けるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


今回は、タロの嫉妬の回。

いやぁ、ケルトが出てきた時点で、タロはこうなる運命でしたね。

次回はちゃんと持ち直して話が進みます。

それでは、また!
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