我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇

第四百四十四話 ナージャ様の旅(十)

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「カレッタ小王国、ですか……」


 バルディスが真っ直ぐファルシス魔国に向かうとするならば、恐らくは、このカレッタ小王国を経由しているはずだと考えたナージャは、様々な種類の建物が立ち並ぶカレッタ小王国へと訪れていた。


「ナージャ様。本当に、本当にっ、お願いしますから、行く先々で伝説を残すようなことはなさらないでくださいっ」


 お供に連れているのは、毎度のことながらリリアンヌだ。彼女は、その赤い瞳に色濃く残る疲労を滲ませて、街を歩きながら懇願する。


「おーほほほほっ、私は、存在そのものが目立ちますのよ? そんなの、無理に決まっているでしょう?」

「無理でもなんでもっ、その存在感を隠してくださいっ。今回は本当に不味いんですからっ!」


 焦ったようにそう告げるリリアンヌ。その言葉には、確かに意味があった。


「この国は、勇者召喚に成功したとの噂なんですよっ!? もし、勇者に見つかって、正体がバレてしまえば、殺されかねませんっ!」

「おーほほほっ、私も勇者は見てみたいと思っていましたのよ。……大丈夫ですわ。そんなヘマはしませんから」


 ナージャの言葉に、ジトっとした目を向けたリリアンヌ。ナージャもさすがに気まずくなったのか、一応は従う姿勢を見せる。


「勇者を見物に行くのもなしですからね」

「分かりましたわ」


 神妙にうなずくナージャを見て、リリアンヌはひとまず納得する。多分、きっと、今回くらいは忠告を聞き入れてくれるだろうと。

 何せ、相手は勇者。魔王に匹敵する力を持つ化け物だ。物語の中では、勇者は必ず魔王を倒す宿命を背負うため、今回もそういうものなのだと考えられた。


「なら、私は情報を集めるために一旦離れます。……良いですか? 本当に、本当にっ、目立つ行動は控えてくださいよ?」

「分かりましたわ。今回は、リリアンヌの言う通りにしましょう」


 そう請け負ったナージャを見て、リリアンヌは周りに人が居ないことを確認して影に潜る。これから、バルディスの行方と、勇者の動向についてを調べるのだ。


「ふぅ、目立つなと言われてしまえば、何をして良いのか分かりませんわね……」


 そう、一人呟くナージャは、あてどもなく街を歩き続ける。


「そこのレディ。少し話をしたいのだが、良いだろうか?」


 と、そんな時、どこか品の良さそうな、黒目黒髪の男が声をかけてくる。


「私、ですの?」

「うむ、そうなのだ。すまないが、少しだけ時間をもらえないだろうか?」


 ナンパだろうかと思ったものの、それならそれで下僕にしてしまえば良い。
 そう判断したナージャは、ケントと名乗ったその男についていくことにした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


お待たせしました。

さぁ、今回、ナージャ様は、勇者を見物するどころか、いきなり接触しちゃってます(笑)

そろそろ、バルディス達とナージャ様達を合流させたいところです。

それでは、また!
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