我輩は紳士である（猫なのに、異世界召喚されたのだが）

第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇

第四百六十三話 ついていくのは

　バルディスが沈黙するのを見て、我輩、ふわぁっとあくびをする。


　レディの父親に会うくらいなら、何も問題はないのだ。


　バルディスは礼儀正しいし、人当たりも良い。きっと、レディの父親もバルディスのことを信用してくれるはずなのだ。


「少し聞くが、俺の顔、どう思う？」

「えっ？　えっと、その……？」

「正直に言ってくれ。怒ったりはしない」

「えっと……ち、ちょっと、怖い、かなぁ？　なんて……」

「そうか、かなり怖いか」

「っ！？　ちょっとですよ？　ちょっと……」


　のんびりとバルディスが動くのを待っていると、なぜか、バルディスは自分の顔について尋ねる。


「にゃあ？　（何の問題があるのだ？）」

《少し黙っていような？》

《にゃ？　にゃあ（うむ？　分かったのだ）》


　バルディスの言葉に、我輩、了承を伝えて話の展開を見守る。


「この、かなり怖い顔の俺が、ヨナの父親に会ったとする」

「は、はい」

「そこで見える未来は、三通り。卒倒するか、怯えられるか、警戒されるかだ」

「……はい」

「参考までに聞く。ヨナは、どれだと思う？」

「えっと……卒倒か警戒辺り、でしょうか……」

「それでも、俺を父親に会わせたいのか？」

「……」


　黙り込んでしまったヨナに、バルディスは急かすこともなくただ待つ。


　ううむ、我輩、バルディスの渋い感じという願いを叶えたはずなのだがなぁ……何がいけなかったのか。


　さすがに、何かが不味いらしいことは分かるのだが、具体的には良く分からない。我輩、人間の美醜にはどうしても疎いのだ。


「えっと、天使様にお越しいただくとか、は？」

「マギウスか……まぁ、確かに妥当だろうな」

「じ、じゃあっ」

「本人がどこまで交渉力を持っているかは知らないが、任せられるとしたらマギウスくらいしか居ない。とりあえず、マギウスを説得するぞ」

「はいっ」


　なぜか、バルディスはヨナの父親とは会わないことを決めて、マギウスを待つことになる。しばらくすれば、食事を終えたマギウスが部屋へと戻ってきて、バルディスが事の次第を説明した後、父親と会うという依頼を了承していたのだった。


「俺は？」

「ディアム、お前も十分不審者だからな？」


　ディアムもついていこうとしたようだったが、バルディスのそんな一言で同行はできないこととなる。マギウスが動くのは、明日。我輩は、ヨナがちゃんと父親を説得できることを祈りつつ、微睡みの中に落ちるのだった。


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バルディスは、賢い選択をした模様。

……イロモノ集団の中で、唯一まともそうなのが男の娘なマギウスだなんて……末期かも？

それでは、また！