我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

文字の大きさ
473 / 574
第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇

第四百七十二話 港防衛戦(一)

しおりを挟む
 船にいちいち『結界』を張るのではなく、港そのものを『結界』で守った方が楽なのではないかと思った我輩だったが、その質問をバルディスにしてみると、それだと化け物がどこを狙うか分からなくなってしまうとのことだった。
 敵がボスティア海国だとしても、ミルテナ帝国だとしても、一番狙いたい場所はこの、最も大きな港だろうという話で、我輩、それ以上詳しいことは良く分からなかったが、そんなものなのだろうと納得する。襲わせる余地を残すことで、化け物を誘き出すというやり方の斬新さに感心しながら、我輩、チマチマと結界を張り続けていく。
 今の我輩は、バルディスの指示を聞きながら、どの船に『結界』を張るのかを見定めて、それぞれに『結界』を張っていた。
 ラーミア達は、この船の持ち主にどんな説明をしているのかといえば、ヨナの父親の力を借りて、この港で軍事演習が行われるということにしてしまったらしい。そこで、船が傷つかないように『結界』を張らせてほしいとお願いしていっているのだ。


「後は、近くの建物にも『結界』を張っておいてくれ。こちらは、もう確認を取ってある」

「にゃっ(分かったのだっ)」


 しっかりがっつり、我輩、港を『結界』だらけにしていく。そして、最後の船に『結界』を張って、次は別の港へ向かおうということになった時、異変は起きた。


「海が、黒い?」


 そんなバルディスの視線を辿れば、そこには海……があるはずなのだが、いかんせん、我輩の低い視界にはわずかしか海が見えない。


「にゃっ(抱っこなのだっ)」

「あぁ、ほら」


 抱き上げてもらって、高くなった視界でバルディスが見ていた方向を向けば、なるほど、確かに海が黒かった。


「にゃあ? (海とは黒ずむこともあるのか?)」

「いや、そんな現象は知らないが……」


 お互いに不思議現象に首をかしげていると、それは、唐突に起こった。
 黒い海から、黒いナニカが……いや、海を黒く見せるほどの巨体を持つナニカが、ゆっくりと這い上がる。


「にゃ……(バルディス……)」

「あぁ」


 その正体の片鱗を見て、我輩もバルディスも戦く。


「にゃあ(タコなのだ)」
「瘴気だな」


 同時に言った言葉に、我輩達、お互いを見つめ合う。


「タコ?」

「にゃ? (瘴気?)」


 確かに、よくよく見てみると、そのタコは黒い靄に覆われている。むしろ、黒い靄がメインのようにも見える。


「にゃー(確かに、瘴気なのだ)」

「タコ、だな」


 お互いに感心し合っていると、瘴気を纏ったタコがその全貌をあらわにする。


「にゃっ(戦闘開始なのだっ)」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


なぜタロがタコを知っているかというと、飼い主と一緒に海で見たことがあったからなんですけどね。

でも、猫にタコは与えちゃいけないので、タロはタコを食べられなかった記憶が強そうですが……。

それでは、また!
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...