我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇

第四百七十三話 港防衛戦(二)

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 タコの全貌があらわになった影響で押し寄せる波を、我輩はどうにか『結界』で防ぐ。バルディス曰く、ここまでの大きさは予想外とのことだった。

 黒い靄に包まれたタコは、それから何本もある足の一本を伸ばして、おもむろにそこかしこに停泊していた船を横凪ぎにする。

 バチィッ、という音とともに、タコの足は『結界』に阻まれたものの……我輩から見て、これは不味いと思えた。


「にゃにゃっ(バルディスっ、『結界』の強度が足りないのだっ)」

「っ、とにかく早く倒すぞっ」

「にゃっ(うむっ)」


 あれを何度も受ければ、『結界』の方が壊れてしまうであろう予感に、我輩、バルディスとともに駆け出したのだが……。


「ぐっ」

「にゃあっ!? (バルディスっ!?)」


 少し進んだところで、バルディスは真っ青になって膝をつく。


「く、そっ。瘴気さえなければ……」


 そんなバルディスの言葉に、我輩、瘴気は人体に有害なものであったということを思い出す。例外は、我輩と飼い主のみで、普通は近寄ることもままならないのだと思い出す。
 そうこうしているうちに、タコはどうやら、我輩達の存在に気づいたらしい。


「オォォォォォォォッ」


 どこから発せられているのか分からない重厚な声が響き、その足が我輩達の方へと振り下ろされる。


「ふにゃあっ。にゃーっ(『軽量化』っ。逃げろーっ)」


 真っ青なまま動けなくなっているバルディスに、我輩、咄嗟に『軽量化』の魔法を使ってバルディスを軽くすると、バルディスの服の端をくわえて素早くそこから離脱する。

 ズウゥンッという音とともに、港の地面がクレーターを作る。


「タロっ、俺を『転移』でラーミア達のところへ」

「にゃあっ。にゃっ(分かったのだっ。『転移』っ)」


 詳しく説明されずとも、バルディスが言いたいことは分かった。ここからは、我輩の戦いだ。バルディスは、このままでは危険であるため、避難させなければならないのだ。
 バルディスを『転移』で恐らくラーミア達が居るであろう港町の一角へと送ると、我輩、タコを睨み付ける。


「にゃあっ(今度こそ、食べるのだっ)」


 実は、まだ日本に居た頃、我輩、飼い主と一緒にタコを見たことがある。しかし、飼い主はタコは食べてはいけないと言って、我輩にはくれなかったのだ。


「にゃ……にゃあ(大きいから……きっと、満腹になるのだ)」


 そう、えものへ強烈な視線を向ければ、タコはブルリと体を震わせる。


「にゃっ(行くのだっ)」


 そうして、我輩は飛び出したのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


かつて、砂漠でジャイアントスコーピオンと対峙したのと似た展開になって参りました。

……でも、黒い靄を纏っているタコって……美味しそうには思えない。

タロがお腹を壊さないことを祈りましょう。

それでは、また!
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