我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇

第五百八話 地面の下で

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 我輩がやったことはいたって簡単なこと。すなわち、地面に潜ることなのだ。もちろん、その際に空洞を作っておくことは忘れていない。
 急に消失した地面、そして、砂の触手によって悲鳴を上げることもできずに引き込まれたバルディス達を見ながら、我輩も地面の中に潜る。『土蔵』の魔法によって、地面の下は四角い小部屋のような空間になっており、そこそこに快適だ。小さな『光源』も発動させれば、その全体像がしっかり見える。


「これは……なるほど」

「タロ、ナイス」

「ぬぅ、これなら、見つかる心配はないか」

「確かに」

「そうみたいですね」

「我輩、頑張ったのだっ」


 これならば、海を泳ぐ魚人達に見つかる心配はない。そう思って待機していれば、次第に上が騒がしくなる。


「居たか?」

「いや、こちらには居ない」

「くそっ、何だったんだ、あの激流はっ」

「被害は軽微ですが、そちらの対処もしなければなりませんね」

「もしかして、遺跡の魔物が復活したのか?」

「おいっ、滅多なことを言うんじゃねぇっ」

「遺跡の魔物……でも、最近、黒くて凶暴な巨大魚が居るって話だよな」

「おいおい、そんなのがここに来たら、それこそ街中が戦場になっちまうぞ?」


 じっと息を潜めてそんな話を聞く我輩達。もしかしたら、ここでラーミアの情報も得られるかもしれないと、少しだけドキドキする。


「というか、その巨大魚討伐に三つも部隊を出したのに、どの部隊も帰ってきてないってのは本当なのか?」

「本当らしいぜ。そんで、そろそろまた、別の部隊にお呼びがかかるって話だ」

「そうか……俺達の部隊じゃなければ良いが……」

「そこは、どうにも分からないよな」

「こらっ、そこっ! しっかり探せ!」

「「「ははっ!」」」


 興味深い話を一生懸命聞いていると、魚人達をまとめているらしい者からの叱責で、彼らは話をやめてしまう。


 うぅむ、残念なのだ。


 巨大魚の話は、何とも食欲がそそられるものだったため、その巨大魚がどこに居るのかだけでも知りたかったのだが、仕方ない。
 しばらくすれば、魚人達の気配が遠ざかり、静寂が訪れる。


「さすがに、簡単にラーミアの情報が入ることはないよな」

「当たり前です。簡単に情報が手に入るなら、情報屋なんていりませんっ」


 そう言うバルディスに、ヨナが反論する。何か、気に障ることでもあったのかもしれない。


「とりあえず、この方法で身を隠しながら進んでみよう」

「うむ? ならば、このまま地面の下を移動するのも良いと思うのだが?」

「……なら、それで頼む」

「分かったのだっ!」


 我輩、役に立てることに喜びながら、引き続き魔法を行使するのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


今回は珍しく、タロがまともに活躍中。

……あれ?

珍しく……?

……タロ、どんだけまともに活躍してなかったんだろう?

そ、それでは、また!
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