我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇

第五百九話 行き詰まり

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 我輩は進む。ズンズン進む。穴を掘り掘り、地面を固め、あっちへチョロチョロ、こっちへチョロチョロ……。


「おい、タロ、どこに向かっているんだ?」


 楽しく楽しく穴掘りをしていた我輩は、ふいに、後ろからついてきていたバルディスに声をかけられて振り返る。


「うむ? 知らないのだ」

「……そんなことだろうとは思っていたが……やっぱりか」


 ガックリとうなだれるバルディスに、我輩、首をかしげながらまた穴を掘り進める。


「気配、多いところ、情報、集まる」

「そうですね。まずは、色々な会話が聞ける場所に行くべきです」


 ディアムとヨナの言葉に、我輩、辺りの気配を探ってみる。


「うむ、ちょうど、この先に気配が大量にあるのだ。行ってみるのだっ」

「よし、それじゃあ、任せた」

「うむっ!」


 バルディスに任されて、我輩、張り切って進んでいく。すると、気配が多く感じられた場所が近づき、話し声もしっかり聞こえてくる。


「フィリア様は、まだ見つからないのかねぇ?」

「そうみたいよ。心配ねぇ」

「人間に連れ去られたってことは、地上だろう? そうなると、俺らは長くは生きられないから、もう……」

「こりゃっ、滅多なことを言うもんじゃないよっ! きっと、フィリア様は生きておられるさっ!」


 そこは、どうやら一般市民が集まっている場所らしく、しばらく会話を色々聞いていると、そんな内容が聞こえてくる。


「フィリア……」


 ヨナが、その名前を悲しげに呼ぶ。やはり、フィリアは人間達に連れ去られたと思われているらしい。


「うぅむ……色々、行き詰まったような気がするのだ」

「そうだな……」


 今回は、どうにも手がかりが集まらない。その後も、一生懸命情報収集に努めたものの、やはり、何も分からないままであった。


「ボスティア海国に来れば、何か分かるかと思ってたのに……」


 ヨナの方も、中々情報が集まらない状態に、悔しそうだった。
 『土蔵』で作った空間の中、長い沈黙が続く。


「……こんな時は、食べて、寝るのだっ!」


 悩んだ時、行き詰まった時、きっと、それが次のために必要なこととなる。そう思って、思いきって声を上げれば、真っ先にマギウスが賛成してくる。


「そうだね。このままじゃ煮詰まっちゃう」

「ぬ、確かに」


 それでもなお、バルディスとディアム、ヨナは黙り込んでいたものの、我輩が食材を出し、猫の姿に戻ってすり寄れば、仕方がないなといった様子でこちらを見てくる。


「分かった。今日はもう、休もう」


 そうして、我輩達は、食事を摂って、しばしの休息に身を委ねるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


中々情報が集まらないタロ達。

さぁ、次は、ちょっと別視点を予定しております。

それでは、また!
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