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第一章 アルトルム王国の病
第三十一話 大岩の正体
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バルディスらの元に戻り、チャーの話を伝えた我輩は、今、とても困っていた。そのわけは……。
「パクの花、本当にないな」
そう、パクの花。あの、病とされている毒の解毒に必要なパクの花が、全く見つからないのだ。
「そもそも、見つけたとしても、私達では調薬できませんわよ?」
「それは分かってるが……見つけておくにこしたことはないだろう?」
我輩達は、今、街に戻るのではなく、そのままエルブ山脈の麓へと足を運んでいた。それもこれも、エルブ山脈ならパクの花があるだろうとメリムに聞いていたため来てみたのだが、見事なまでに見つからない。
ただ、この事態には一つだけ、心当たりがある。きっと、それはバルディスらも気づいていることだろう。
「これは、やはり、あの噂か……」
「エルブ山脈に向かう者が何者かに襲われている、ですか?」
「あと、大岩、道を塞いでいる」
「にゃあにゃ(岩はまだ向こうらしいが、襲われたというのは恐らく、あの仮面の者が関係しているのだろうな)」
「にゃー! (師匠、頭良いです!)」
ちなみに、チャーはこのまま帰すと、また拐われる、もしくは、殺される危険性があるとのことで、今は檻をディアムに壊してもらって、一緒に行動中なのだ。我輩、すぐ隣から尊敬のオーラを受けて、とても居心地が悪いのだ。
「あぁ、岩も見えてきたな」
「これ、人為的なものだとして、どうやって運んだのかしら?」
ディアムによると、仮面の者は、ミルテナ帝国に所属するもので、アルトルム王国を疲弊させ、侵略を容易にするために毒を流したのだと言う。それ以上の詳しいことは教えてもらえなかったが、国ぐるみでの計略となれば、解毒をさせないために徹底することも想像に難くない。
解毒のために必要なパクの花は、きっと、この大岩を越えなければ見つからないのだろう。
「にゃあ。にゃっ(我輩、まだ見えないのだ。バルディス、抱っこなのだっ)」
「あぁ……まぁ、いいか」
バルディスは、我輩の言葉に一瞬微妙な表情を浮かべたものの、ちゃんと抱っこして、岩を見せてくれる。
……『勇者に使われる魔王とか、何なんだろうな』なんて切ない呟きが聞こえたのは、知らないふりなのだ。我輩、別に魔王を討伐する勇者ではないのだから、良いではないか。
「にゃっ(師匠、ずるいですっ)」
「……ラーミア、そっちの猫も抱き上げてやれ。岩を見たいらしい」
「えぇ、分かりましたわ」
視界がグンッと上がり、我輩、心が浮き立つ。飼い主には、良く抱っこしてもらっていたので、こういうのは悪くないのだ。
そうして、広がった視界の先に写ったのは、真っ白な大岩だった。
「にゃあ……(白くて綺麗なのだ……)」
ホゥッとため息が出そうなほどに、その大岩は美しかった。岩肌はゴツゴツとしているものの、光の反射で時々七色に輝くそれは、大きな宝石のようにも見え、どこか現実離れした美しさを醸し出していた。
「あぁ、確かに綺麗だな……いや、待てよ? 俺はこれに似たものを見たことがあるような…?」
「似たもの、ですか?」
「……バル、見たことあるなら……魔物?」
「「にゃっ!? (魔物っ!?)」」
あの大岩が魔物? いやいや、そんなはずはないのだ。別にあの大岩から息遣いを感じ……る、ような気が……? いやいや、別にあの大岩が動くとか………『ズズッ』………今、動いたような? ……………………うむ、目が合ったのだ。
大岩、もとい、魔物は、その巨体を小さく鳴らし、二つのつぶらな瞳を覗かせる。
「あぁっ、そうだった。確か、あれは」
「にゃーっ。にゃっにゃにゃーっ(バ、ババババ、バルディスっ。今、今っ、目が合ったのだーっ)」
「ふにゃあ……(ま、もの……)」
「にゃーっ!? にゃーっ(チャーっ!? しっかりするのだーっ)」
あまりに巨大過ぎる魔物を前に、我輩は取り乱し、チャーは気絶してしまう。しかし、そんな中でもバルディスはのんびりとしているように見えた。
「あぁ、なるほど、そういうことでしたか」
「納得」
「あー、タロ。取り乱す必要はないぞ? こいつは――――」
バルディスが何かを言いかけている合間にも、それは、鎌首をもたげる。そして……。
「キュオーンッ(ごっ主人ーっ)」
そう、嬉しそうに鳴いて、こちらへと迫ってきた。
「ふしゃーっ。にゃおーんっ! (で、でかいのが来たのだーっ。猫流奥義、クルクルアタックっ!)」
そうして、我輩、つい、バルディスの腕から飛び出て、その魔物にタックルを食らわせてしまったのだ。よくよく考えると、言葉が理解できたにもかかわらず……。
「グギュゥウ(い、痛いー)」
「えっ? はっ?」
「竜にダメージを与える猫って……どうなってるんですか?」
「タロ、すごい」
「ふしゃーっ。……にゃ? にゃあ? (くぅ、硬いのだっ。……あれ? 言葉が分かる?)」
頭を抱え込み、また元の岩のような状態に戻った魔物と、混乱するバルディス、遠い目をするラーミアに、なぜか、キラキラとした目で我輩を見つめるディアム。そして、我輩は、あの魔物の言葉が分かることにようやく気づき、動きを止めた。
「あー、タロ、あれは、敵じゃない。それと、久しぶりだな。白竜、リツ」
「キュキューン。キュルルゥ(ご主人ーっ。痛かったーっ)」
なぜか親しげに話すバルディスと魔物を見て、我輩、ようやく間違ってしまったことに気づく。
「に、にゃあっ(ご、ごめんなさいなのだっ)」
そうして、我輩は、一も二もなく、謝罪するのであった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
さぁさぁ、新キャラ登場ですっ!
白竜のリツ。
岩だと思われていた正体でございます。
これから先、活躍してくれる、はずなので、これから、よろしくお願いしますね。
「パクの花、本当にないな」
そう、パクの花。あの、病とされている毒の解毒に必要なパクの花が、全く見つからないのだ。
「そもそも、見つけたとしても、私達では調薬できませんわよ?」
「それは分かってるが……見つけておくにこしたことはないだろう?」
我輩達は、今、街に戻るのではなく、そのままエルブ山脈の麓へと足を運んでいた。それもこれも、エルブ山脈ならパクの花があるだろうとメリムに聞いていたため来てみたのだが、見事なまでに見つからない。
ただ、この事態には一つだけ、心当たりがある。きっと、それはバルディスらも気づいていることだろう。
「これは、やはり、あの噂か……」
「エルブ山脈に向かう者が何者かに襲われている、ですか?」
「あと、大岩、道を塞いでいる」
「にゃあにゃ(岩はまだ向こうらしいが、襲われたというのは恐らく、あの仮面の者が関係しているのだろうな)」
「にゃー! (師匠、頭良いです!)」
ちなみに、チャーはこのまま帰すと、また拐われる、もしくは、殺される危険性があるとのことで、今は檻をディアムに壊してもらって、一緒に行動中なのだ。我輩、すぐ隣から尊敬のオーラを受けて、とても居心地が悪いのだ。
「あぁ、岩も見えてきたな」
「これ、人為的なものだとして、どうやって運んだのかしら?」
ディアムによると、仮面の者は、ミルテナ帝国に所属するもので、アルトルム王国を疲弊させ、侵略を容易にするために毒を流したのだと言う。それ以上の詳しいことは教えてもらえなかったが、国ぐるみでの計略となれば、解毒をさせないために徹底することも想像に難くない。
解毒のために必要なパクの花は、きっと、この大岩を越えなければ見つからないのだろう。
「にゃあ。にゃっ(我輩、まだ見えないのだ。バルディス、抱っこなのだっ)」
「あぁ……まぁ、いいか」
バルディスは、我輩の言葉に一瞬微妙な表情を浮かべたものの、ちゃんと抱っこして、岩を見せてくれる。
……『勇者に使われる魔王とか、何なんだろうな』なんて切ない呟きが聞こえたのは、知らないふりなのだ。我輩、別に魔王を討伐する勇者ではないのだから、良いではないか。
「にゃっ(師匠、ずるいですっ)」
「……ラーミア、そっちの猫も抱き上げてやれ。岩を見たいらしい」
「えぇ、分かりましたわ」
視界がグンッと上がり、我輩、心が浮き立つ。飼い主には、良く抱っこしてもらっていたので、こういうのは悪くないのだ。
そうして、広がった視界の先に写ったのは、真っ白な大岩だった。
「にゃあ……(白くて綺麗なのだ……)」
ホゥッとため息が出そうなほどに、その大岩は美しかった。岩肌はゴツゴツとしているものの、光の反射で時々七色に輝くそれは、大きな宝石のようにも見え、どこか現実離れした美しさを醸し出していた。
「あぁ、確かに綺麗だな……いや、待てよ? 俺はこれに似たものを見たことがあるような…?」
「似たもの、ですか?」
「……バル、見たことあるなら……魔物?」
「「にゃっ!? (魔物っ!?)」」
あの大岩が魔物? いやいや、そんなはずはないのだ。別にあの大岩から息遣いを感じ……る、ような気が……? いやいや、別にあの大岩が動くとか………『ズズッ』………今、動いたような? ……………………うむ、目が合ったのだ。
大岩、もとい、魔物は、その巨体を小さく鳴らし、二つのつぶらな瞳を覗かせる。
「あぁっ、そうだった。確か、あれは」
「にゃーっ。にゃっにゃにゃーっ(バ、ババババ、バルディスっ。今、今っ、目が合ったのだーっ)」
「ふにゃあ……(ま、もの……)」
「にゃーっ!? にゃーっ(チャーっ!? しっかりするのだーっ)」
あまりに巨大過ぎる魔物を前に、我輩は取り乱し、チャーは気絶してしまう。しかし、そんな中でもバルディスはのんびりとしているように見えた。
「あぁ、なるほど、そういうことでしたか」
「納得」
「あー、タロ。取り乱す必要はないぞ? こいつは――――」
バルディスが何かを言いかけている合間にも、それは、鎌首をもたげる。そして……。
「キュオーンッ(ごっ主人ーっ)」
そう、嬉しそうに鳴いて、こちらへと迫ってきた。
「ふしゃーっ。にゃおーんっ! (で、でかいのが来たのだーっ。猫流奥義、クルクルアタックっ!)」
そうして、我輩、つい、バルディスの腕から飛び出て、その魔物にタックルを食らわせてしまったのだ。よくよく考えると、言葉が理解できたにもかかわらず……。
「グギュゥウ(い、痛いー)」
「えっ? はっ?」
「竜にダメージを与える猫って……どうなってるんですか?」
「タロ、すごい」
「ふしゃーっ。……にゃ? にゃあ? (くぅ、硬いのだっ。……あれ? 言葉が分かる?)」
頭を抱え込み、また元の岩のような状態に戻った魔物と、混乱するバルディス、遠い目をするラーミアに、なぜか、キラキラとした目で我輩を見つめるディアム。そして、我輩は、あの魔物の言葉が分かることにようやく気づき、動きを止めた。
「あー、タロ、あれは、敵じゃない。それと、久しぶりだな。白竜、リツ」
「キュキューン。キュルルゥ(ご主人ーっ。痛かったーっ)」
なぜか親しげに話すバルディスと魔物を見て、我輩、ようやく間違ってしまったことに気づく。
「に、にゃあっ(ご、ごめんなさいなのだっ)」
そうして、我輩は、一も二もなく、謝罪するのであった。
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さぁさぁ、新キャラ登場ですっ!
白竜のリツ。
岩だと思われていた正体でございます。
これから先、活躍してくれる、はずなので、これから、よろしくお願いしますね。
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