我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第一章 アルトルム王国の病

第三十三話 先代魔王とは

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 バルディスから、ここに来た経緯を聞ける。そう、我輩は思っていたのだが……。


「それじゃあ、タロはこちらで大人しくしていましょうね?」

「にゃっ!? (えっ、我輩も話を聞きたいのだが!?)」


 そんな我輩の抗議も虚しく、我輩、ラーミアに抱き上げられ、離れた場所に捕まったままになってしまった。ちなみに、チャーはいつの間にかディアムが抱いていたのた。

 そうして、話が終わるまで隔離され、少し不貞腐れそうになったが、もちろん、紳士たる者がそのようなことをするわけにはいかない。もちろん堪えた。しかし……。


「キューン(ご、ご主人、大変だったんだねーっ)」


 グズグズと鼻をすすって泣くリツを見ていると、話の内容が気になって仕方がない。どんな波乱万丈があったのかと、とてもとても気になる。


「もう泣き止め。終わったことだし、泣くことでもないだろう?」

「キューッ、キューン(でも、でもぉっ)」


 とても、とてもとても、気になる。しかし、教えてもらえないということは、我輩が知るべきことではないのだろう。


「ところで、なぜお前達はそんなに離れたところに居るんだ?」


 リツをなだめるバルディスは、ふと、我輩達の距離感を言及してくる。


「いえ、聞かせられない話があってはいけないと思いましたので」

「そうか。だが、チャーはともかく、タロにはしゅを掛けているから聞いても良かったとは思うんだが?」

「にゃっ!? (我輩、聞いても良かったのか!?)」


 そんな、こんなことって……ショックなのだっ。


 ガックリとうなだれ、尻尾をヘニャっと垂らした我輩は、ラーミアにもう少し抗議をすれば良かったと反省する。


「まぁ、後で話してやるから、そんなに落ち込むな」

「にゃっ! にゃあんっ(本当かっ! 絶対なのだぞっ)」


 約束なのだっ。絶対なのだっ。


「あぁ、分かった」


 そうして、我輩達はリツを加えて、またパクの花を探しに歩き出す。


「にゃあにゃ? (ところで、先代魔王とはどのような者だったのだ?)」

「あぁ、先代魔王か……。先代魔王は、その姿も、性別も、年齢も、全てが謎に包まれた存在で、俺も多くは知らない」


 そんな前置きから始まる説明は、とても不思議なものだった。


「先代魔王は賢王として知られている。瘴気が溢れていたファルシスを、どういった方法を用いたのか、浄化したことや、暗黒鳥による作物の被害を無くしたことが有名だな」

「先代魔王は、武にも優れていましたわよ。長年に渡り交戦を続けていた南端の戦闘部族を平定し、我がファルシスの傘下に下したことは歴史に残る偉業ですわ」

「俺達、隠密部隊。先代が、創設した。感謝している」


 そんなそれぞれの話を聞くに、先代魔王というのは中々に良き王だったらしい。しかし、それだけ動いていながら、肝心の王の姿を誰も知らないというのは随分と不思議だった。


「にゃにゃ? (偉い人物は、その姿を誇示するものではないのか?)」

「あぁ、普通はそうなんだがな。噂では、酷い火傷の痕があるだとか、とんでもない不細工なのだとかはあるが、どれも推測の域を出ない」

「……前隠密部隊隊長、何か、知ってるかも?」

「前隠密部隊隊長って……アリオクか?」

「可能性、ある。けど、断定、できない」

「それなら、私の父も何か知っているかもしれませんわね。何せ、父は先代魔王の側近でしたから」

「あぁ、確かに」


 繰り広げられる話の内容は、すでに我輩が知らない人物の話になってきてしまっている。そのため、我輩、先代魔王のことはひとまず頭の隅に追いやり、パクの花を探すことに集中して……。


「キューン(パクの花って、これー?)」


 手柄はリツに取られたのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

またまたお待たせしました。

夏バテを起こしてしばらく体調がよろしくなかったので、更新が遅くなりました。

多分、もう大丈夫です。

三日に一度の更新に戻れます!

それでは、これからもよろしくお願いします。
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