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第二章 反撃のサナフ教国

第六十四話 ナージャ様の旅(三)

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 ようやく活気を取り戻したアルトルム。しかし、だからといって治安が悪くないというわけではない。むしろ、ついこの前まで病が蔓延していたここでは、人々が病で抵抗できないのを良いことに、強盗や殺人が横行していた。
 現在は、騎士の巡回も復活し、ある程度抑えられてきてはいるが、まだまだ警戒が必要な人間は多く居た。そして、その中に、今回の不幸の二人も居たのだった。


「おう、姉ちゃん、ぶつかっておいて謝罪もなしか? あぁん?」

「あら? ぶつかってきたのはそちらではなくて?」


 アルトルムの大通りの一角。そこでは、いかにもゴロツキと言える二人の男が、一人の美女、町娘の格好をしていてもなお目立つナージャに絡んでいた。


「あぁ? 俺は姉ちゃんのせいで肩外れちまったんだよっ!」

「そりゃ大変だ、ダイル。こりゃあ、この姉ちゃんに、たーっぷり慰謝料もらわねぇと。もちろん、体で、なぁ?」


 下卑た笑いを浮かべる男達を、ナージャはキョトンと見つめ、すぐに艶やかな笑みを浮かべる。


「あら、肩が外れただなんて大変ですわねぇ。でも、本当に肩が外れるとは、こういうことですのよっ」


 その瞬間、ナージャは目にも止まらぬ速さで男の肩に手をかけて、ゴリッという嫌な音を立てる。


「あ……? ぐあぁぁぁあっ!! て、てめぇっ」

「ダイルっ! こ、このアマァっ!」


 本当に肩を外された男は悲鳴を上げて憤り、それを見ていた男の方は、拳を振り上げてナージャを殴ろうとする。しかし……。


「唾を吐かないでもらえるかしら? 私、汚いものは嫌いなの」


 拳は届かない。男の拳は、透明な結界に弾かれ、その反動で男は後ろに後ずさる。


「あぁ、でも、役に立つなら多少は我慢してあげるわ。さぁ、少ししつけましょうね」


 どこから取り出したのか、鞭を片手に持つナージャは、それをピシッと地面に打ち付ける。
 実力差を理解できていない二人は、なおもナージャへと襲いかかろうとしたものの、宙を舞った鞭が容赦なく男達を打ち据える。

 そして、三十分後……。


「おーほほほほほほっ、私に言いがかりをつけた慰謝料を、その体で払いなさい」

「「はいぃぃいっ」」


 ナージャは、人力車をズタボロになった二人のゴロツキに引かせていた。そして、二人のゴロツキは、どこか恍惚とした表情をしている。


「遅いわよっ」


 鋭くナージャがそう告げると、ビシッと鞭が舞い、二人の男の背中に直撃する。すると……。


「「あふんっ」」


 二人は、頬を赤らめてビクッと震え、少しだけ速く移動を始める。


「さぁ、いけない子達をしつけにいきますわよ。そうして、バル様を見つけ出すのです」


 ナージャの目的がなぜか追加されているが、それを指摘する者はここには居ない。何度も言うようだが、ストッパーになり得たリリアンヌは、今、ここには居ないのだ。


「そうね。まずは、あなた達の知り合いからしつけてあげるわ。感謝なさい」

「「あ、ありがとうございますぅぅ」」

「足を止めないっ」


 ビシッ!


「「あふんっ」」


 以後、アルトルムの治安は劇的に改善される。しかし、その弊害として、ドMの変態が量産されることとなったのは、きっと誰も予想し得なかっただろう。この国の王、セルバスは、その変態の対処に頭を抱えることとなったのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


とりあえず、ここでナージャ様の旅はいったん終わりです。

次からはタロ達の方へと戻ります。

果たして無事に砂漠を越えられるのかっ!

そして、ちょっと明日は更新できるかどうか分かりませんので、また明後日ということで。

それでは、また!
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