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第二章 反撃のサナフ教国

第六十五話 ルーグ砂漠の脅威?

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 砂漠越え。それは本来、命懸けで行われるものだ。水や食料をいかに備えていようとも、どんなに屈強な戦士であっても、砂漠の中では何もかもが尽きてしまう。
 砂塵に呑まれ、命を落とす者は数知れず。過酷な環境に適応した魔物達に襲われ、彼らの糧となった者も数知れず。

 そんな、恐ろしい場所を、我輩達は歩いていた。

 ……とても快適な状態で。


「いやぁ、それにしてもタロは便利だな」

「そうですね。砂漠越えをここまで快適にできるなんて、そうありませんわよね」

「タロ。助かった。感謝」

「に、にゃあ(う、うむ)」


 次々にかけられる声に、我輩、とっても複雑な気持ちになる。

 今、我輩は土魔法の『土蔵つちぐら』というものを用いて、周囲の砂を集め、ドーム状のかまくらみたいなものを作っていた。しかも、移動式のものを。ついでに、砂が上から落ちてこないように、風魔法の結界も張り巡らせている。
 直射日光に当たることもなく、ラーミアの水魔法によってそこそこ涼しいこの場所は、出入口として一ヶ所空けている場所から外を見なければ、ただの快適な環境の穴蔵のようだった。我輩達の移動に合わせてこの土蔵も移動するので、我輩達は砂漠を越えるために歩くだけで良いし、眠る時は土蔵を維持するだけの魔力を予め注いでおけば問題ない。
 ただし、そんな快適な環境の中で全く問題がないかといえば、そうでもない。


 グキュルルルルゥゥゥ。


 バルディスの腹から盛大なその音が響き、我輩達はいっそう、それを意識してしまう。


「……腹、減ったな」

「にゃ(そうであるな)」


 そう、食料が、今の我輩達には足りなかった。砂漠に入って二十日。持ち込んだ食料はとうに尽き、現在は口にしているのは、水魔法で生成した水を、煮沸したものだけだった。


「言ってもしかたありませんわ。砂漠に食料なんて微々たるものなんですから」


 そう言うラーミアも、やはりお腹が空いているのか腹に手をやり、辛そうな表情を浮かべる。


 我輩も、ささみが恋しいのだ。


 そんな空腹を抱えた中、ふと、ディアムが顔を上げる。


「……敵、発見。こちら、来る」


 その言葉に、我輩達はグリンっとディアムに視線を向け、ちょびっと血走りかけた目で見つめる。


「数はっ? 大きさはっ?」


 我輩達を代表して、バルディスがディアムに問いかける。


「数、三。大きさ、二~三メートル。ジャイアントスコーピオンの子供と思われる」


 そう、ディアムが言えば、全員の目がギラリと輝く。それは、狂気しょくよくを宿した物騒な目だ。


「タロ。魔法を解け。えもの倒すかるぞ」

「にゃっ。にゃふ(了解なのだっ。久々のしょくじなのだ)」

「ふふふふふっ、どう相手りょうりしましょう? 腕が、鳴りますわね」

「じゅるり」


 我輩達は、即座に臨戦態勢を整える。哀れなえものに、同情の余地はない。勇者と魔王一行という過剰戦力だろうとも、我輩達は全力でジャイアントスコーピオンを仕留めてみせる。

 そうして、視界の端にジャイアントスコーピオンが居るであろう場所を、砂煙とともに確認した瞬間、我輩達は飛び出すのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


食欲、怖い。

色々とルビが怖い。

本日は、そんな恐怖の回でした。

……ちょっと作者が遊んでいるのも否めませんが、たまにはこんな回も楽しくて良いでしょうっ。

それでは、また!
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