我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第二章 反撃のサナフ教国

第九十話 対面と交渉?

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 赤髪の青年に連れられて通された部屋には、男女合わせて五十人近くが集まっていた。彼らは、全てではないものの、一様にどこか怯えたような目をしており、俺達の姿を見てもそれは変わらなかった。


「それで? 俺達は何のために呼ばれたんだ?」


 一番話が通じそうな赤髪の青年に問いかけると、そいつは眉間のしわをさらに深くし、重いため息を吐く。


「交渉のためだ。俺達には戦力がない」

「つまりは、俺達にミルテナ帝国の騎士達と戦う戦力になれと? レジスタンスの仲間入りをしろってことか?」


 はっきりと『レジスタンス』という単語を入れて問いかけてみれば、赤髪の青年は頭を抱えて男の子の方を見る。


「おい、色々バレてんぞ」

「知らん」

「どうすりゃ良いんだよ」

「仲間に引き入れられればそれですむ話だ」


 男の子に無下にあしらわれた赤髪の青年は、がっくりとうなだれて俺達の方へと向き直る。


「あー、確かに、俺達はレジスタンスだ。それで、仲間になってほしいんだが……えー、もし、仲間にならない場合は……そうだっ、口封じをさせてもらう、で良いんだよな?」


 明らかに交渉事に慣れていないであろう赤髪の青年の言葉に、さすがに男の子も呆れているようだったが、口には出さない。代わりに口を出してきたのは、この部屋に通されてから側に来ていた『ノルじい』と呼ばれていた老人だった。


「そこは、『口封じをさせてもらう』とはっきり断言するところだわいっ」

「おぉ、わりぃなノルじい。俺はこういうの、苦手だ」

「堂々と言うな馬鹿者っ」


 ノルじいとやらの言葉に内心、全面的に同意しながらも俺は、チラリと確認の意味を込めてラーミアとディアムに視線を送る。そして、うなずくのを確認した後、俺は未だに言い合う赤髪の青年とノルじいを視界に映す。


「レジスタンス、入るのは構わないぞ」

「「えっ?」」

「あんた、本気で言ってんの?」


 自身の事情を勘案した結果、出した結論だというのに、赤髪の青年とノルじいは固まり、男の子に至ってはうろんげな視線を寄越してくる。周りに居る他の人間達も、心なしかザワザワとしていた。


「もちろん、本気です。それに、そもそもそちらが提案したことですよね?」

「いや、そりゃあそうなんだけどよ」

「利害、一致。協力、必須」

「利害? あんたらは何をしようとしておる?」


 ディアムの言葉に引っ掛かりを覚えたらしきノルじい。しかし、今はまだ、それを教えるべきではないだろう。


「時が来れば話すさ。俺達はまだ、あんた達を信用してるわけでもないしな」

「ふんっ、それは僕達の方も同じだ。お前達は信用ならない」


 鼻を鳴らして見下すような発言をする男の子に、何だか生意気で可愛いと思いながらも、俺は一つだけ、この場で開示できそうな情報を開示する。


「あぁ、それと、俺達の仲間がお前達の仲間を五人ほど救出しているぞ」


 救出した五人は怪我人であることと、移動が難しいことを説明すると、赤髪の青年はすぐに迎えに行こうとする。


「待て。今はまだ危険だ。動くなら夜が良かろう」

「けど、そいつら、怪我してんだろ? 早く行ってやらねぇとヤバイんじゃないのか?」


 そんなことを話している間に、タロから連絡が来る。


《にゃあ(無事、治療を終えて眠らせたのだ)》

《そうか、良くやってくれた。後で、何か美味しいものを調達してきてやる》

《にゃっ(楽しみにしてるのだっ)》

《当面は、そこで待機していてくれ。多分、夜、迎えに行く》

《にゃあ(分かったのだ)》


 弾んだ声で応じるタロに苦笑しながらも、俺は、この事実を目の前の者達に伝える。


「怪我人の治療はしているようだから、心配はいらない。そこのご老人が言う通り、夜にした方が良いだろうな」


 そう言えば、赤髪の青年は素直に引き下がった。こういうところは、好感が持てそうだ。



「な、なぁ、あんたら、強いんだろ? なら、俺達を守ってくれるんだよな?」


 そうして、話に一段落ついたところで、他に居た、周りの人間が声をかけてきた。しかし、どうにもおかしな内容だ。


「守る? そんなわけないだろ? 俺達がやるのは、クーデターを成功させるために戦うことだ」

「それなら当然、レジスタンスに入ってる私達を守ってくれるものでしょ?」

「そうだそうだ」


 俺達は、あくまでも魔族に対する冤罪を晴らすため、クーデターを成功させようとしているに過ぎない。そして、クーデターを起こそうとしている人間達も、クーデターをメインに考えているはずだった。にもかかわらず、なぜか『レジスタンスの人間を守るのが当たり前』という姿勢を示され、不可解に思って赤髪の青年達、三人を見る。すると、彼らは、それぞれ険しい顔をしていた。


 なるほど、だから、『余計なこと』と言ったのか。


 彼らの表情に、俺は全てを悟る。恐らくは、俺達に守りを求めるこの人間達に、クーデターの意思はない。ただ、レジスタンスに入っている方が何かしらの利益があると思っているだけなのだろう。

 俺達に守れと言い募る声が次第に大きくなってきたところで、パンパンっとノルじいが大きく手を叩く。


「今はまだ、外に騎士が居るのだ。騒げば見つかるぞ?」


 そう告げれば、騒ぎは一気に鎮静化する。


「三人とも、詳しい話は、やはり別室で行おうと思うが、良いかの?」

「あぁ」

「えぇ」

「同意」


 そうして、俺達は元居た部屋へと逆戻りするのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


レジスタンス内部の憂いを上手く書けているだろうかと思いながら、頑張って執筆!

どんな組織も一枚岩ではないということですね。

そして、次もまた、バルディス視点でお送りする予定です。

それでは、また!
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