我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第二章 反撃のサナフ教国

第九十二話 待機は退屈

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「にゃあ……(退屈なのだ……)」


 ここは、ルーグ砂漠。つい今朝がた泊まっていた場所と同じ場所で、砂のドームを展開していた。その中に怪我人達を並べた我輩は、バルディスの言う通り、怪我人達の治療を行い、寝かせたところだった。
 ただ、そこまでしてしまうとやることがなくなる。待機するのみとなると、我輩、眠くて堪らないのだ。

 眠ってしまっても、ある程度の危険は察知できるし、我輩だけなら死ぬこともない。そう、我輩だけなら、という条件がつくのだ。この動けない人間達がどうなるかは分からない。


「にゃにゃあ(食べ物、美味しいものを持ってきてくれるのだから、頑張らねば)」


 バルディスは約束してくれた。『美味しいものを調達してきてやる』と。どんなものをくれるのかは知らないが、ささみだったら良いなぁと思いながら楽しみにしているのだ。
 だから、何がなんでもこの人間達を守り抜かなければならない。もちろん、紳士として、守らねばというのもあるが、ご褒美があるのとないのとで気合いの入れ具合が違ってくるのは仕方ないことだろう。


「にゃ? (む?)」


 じっと待機し続け、少しだけ暗くなりつつある空を眺めていると、ふいに、何かがこちらへ迫ってくるのを自慢のひげで感じ、我輩、スッと立ち上がる。


「にゃあ(これは、魔力反応、というものなのだろうな)」


 ディアムに気配察知の方法を教わっていた我輩は、ひげで察知したその魔力反応に警戒を強める。

 魔力反応は一つだけ。しかし、今まで戦ったどの魔物よりも強大な魔力反応だ。さすがに魔力を全開にしたバルディス達には叶わないだろうが、それでも強敵に違いなかった。そして、その強敵は、一直線に、我輩達の元へと迫っていた。


「にゃふぅ? (美味しい魔物、だろうか?)」


 頭の中で食欲を暴発させながら、我輩、ドームを頑強にして外に出る。人間達を巻き込むわけにはいかないため、適切な処置であろう。


《にゃにゃー(バルディス、まだこっちには来ないのであろうか?)》

《いや、もう暗くなってきたことだし、そろそろそっちに向かう》

《にゃっ。にゃあ(分かったのだっ。我輩は、ちょっと食料調達をしてくるのだ)》

《そうか、無理はするなよ?》

《にゃーっ(大丈夫なのだっ)》

《多分、あと三十分ほどでそちらに着くからな》

《にゃあ(了解なのだ)》


 迫ってくるモノへと向かって走りながら、我輩、バルディスとの念話を終える。そして、薄暗い空の下、そいつは砂煙を上げながら姿を現す。


「に、にゃあ……(こ、これは……)」


 そこに居たのは茶色の胴体に、これまた茶色の翼。鋭い眼光に大きなくちばし、真っ赤なとさかを持った十メートルほどの大きさの……。




「に、にゃあぁっ(に、鶏なのだーっ)」


 そう、それは、どこからどう見ても鶏。巨大なだけで、ちょっと目付きが悪いだけの鶏。つまりは……。


「にゃふぅ(じゅるり)」


 これを倒せばささみをゲットできるというわけだった。


「ギョーッ!」

「にゃあん! (絶対、食べるのだ!)」


 そうして、我輩は、耳障りな鳴き声を上げ、なぜか後ずさる鶏へと全力で向かうのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


どうしよう。

私がお腹空いてる時に考えた話のせいで、タロまで食欲が爆発してしまった気がする……いや、強力な魔物を出すという予定はあったし、この展開は間違いじゃないんですけどね?

……鶏になったのは、タロの食欲と私の食欲がリンクしたせいかも?

ま、まぁ、話の流れには全く問題がないので良しとしましょう。

そして、前回のバルディス視点から一転、タロ視点に戻りましたが、バルディスの方の話の続きはまたすぐに出しますね。

それでは、また!
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