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第二章 反撃のサナフ教国
第百話 引っ越し大作戦(三)
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僕が出会った猫は、ずいぶんと丸々としていて、不思議な猫だった。そして、僕の今置かれている状況を変える猫でもあった。
「ハーグ隊長」
「いかがなさいましたか? ロッダ様?」
今、僕はレジスタンスの戦力を全てルーグ砂漠に避難させるため、殺風景な隠れ家の一つを訪れていた。そこに居るのは、レジスタンスの戦力を率いるハーグ・トラウト隊長。僕の兄の近衛だった人、らしい。
大柄で厳つい顔立ちのハーグは、極力優しい顔で応対しようと努め……失敗して恐ろしい笑顔を浮かべて僕に問いかけてくる。
「僕は、やはり旗頭でなければならないのか?」
ただ、もうその顔に慣れている僕は、特に言及することなく胸の内にある疑問を告げる。そして、その様子に、ハーグはサッと辺りを見回す。
あぁ、確かに、他の奴に聞かれるわけにはいかないだろうな。
旗頭たる僕のこんな言葉が他の者に聞かれて、広まってしまえば、士気の低下に繋がりかねない。
周りに人が居ないことを確認したハーグは、それでも声をひそめて話しかける。
「ロッダ様は、我々の希望です。あなた様以外が旗頭などあり得ない」
「……僕は要らない子供だったはずなんだがな」
そう、そのはずだ。僕は、両親の顔も、兄の顔も知らない。知っているのは、貧しくも明るい町と、そこで必死に僕を育ててくれたマリー姉だけ。
「要らないなどということはあり得ません。我らは、皆、あなた様を必要としています」
「……そうか」
双子の忌み子。それが、生まれたばかりの僕につけられた呼び名だったらしい。忌み子を嫌った両親は、僕を捨てた。それを拾ってくれたのが、マリー姉、マリー・フィズだった。
マリー姉は、僕にアーク・フィズという名前をくれた。僕を優しく、厳しく、育ててくれた。とても、暖かい心を教えてくれた。
しかし、そんなマリー姉は、今は居ない。レジスタンスが立ち上がる前日、マリー姉はミルテナ帝国の騎士に殺された。そして、それをきっかけに、僕はレジスタンスの旗頭となり、名前もサナフ教国に伝わる偉大なる名前とやらに変えさせられた。
ただ、僕はマリー姉の死が、レジスタンスの誰かが手引きしたものだと思っている。僕を、殺された教皇の唯一の血族である僕を、レジスタンスに引き込むため、誰かが、『反抗の意思を持つ凶悪な人間』としてマリー姉の名前を挙げたのだと思っている。最初は分からなかったが、徐々に分かってきたこのレジスタンスという組織の内実を知れば知るほど、僕は、その疑いを強めていった。
「にゃあ」
「もう向こうは終わったのか?」
「あぁ、タロが頑張ってくれた。あとはお前達だけだ」
僕を旗頭にと求める者は、信用できない。僕が信用できるのは、ずっと昔からの知り合いであるリリナくらいのものだろう。
迎えに来た猫とバルディスに従いながら、僕はそう考える。
ただ……。
もしかしたら、バルディス達は、信用できるのかもな。
明らかに外部の人間であるバルディス達。しかも、猫に至っては、人間の陰謀に関わっているなどとは思えない。目的が何であれ、もしかしたら、僕の助けになってくれるかもしれない。
マリー姉。僕は、国なんてどうでもいいけど、復讐のために戦うよ。
力のない僕には、何もできない。力をつけるにも時間はない。それならば、力を持つ者を引き入れれば良い。
後で、リリナにも相談しよう。
リリナは、駆け引きは苦手だが、相談相手としてはこれ以上なく頼もしい。
新たに見つけた光を掴み取るべく、僕は強い決意を胸に、歩くのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
記念すべき第百話っ!
と思っていたら、そういえば、最初が第零話にしていたから、今百一話目だと気づいた今日この頃……。
そして、感想ももらえてとても嬉しいです!
あとは……今回が作戦の始動だと言っていたのに、あまりそれっぽくなってない?
作戦が始動していることは間違いないんですけどね。
ロッダの背景をどうしても入れたくて、ここ以外だと入れにくいかなぁってことで、今回はこんな話になりました。
うーん、タイトル変えるべきだったかなぁ?
変えるとしたら、『引っ越し大作戦(一)』から変えなきゃいけない気がします。
とりあえずは、このままにしておいて、後になっても引きずるようだったら変えることにしますね。
それでは、また!
「ハーグ隊長」
「いかがなさいましたか? ロッダ様?」
今、僕はレジスタンスの戦力を全てルーグ砂漠に避難させるため、殺風景な隠れ家の一つを訪れていた。そこに居るのは、レジスタンスの戦力を率いるハーグ・トラウト隊長。僕の兄の近衛だった人、らしい。
大柄で厳つい顔立ちのハーグは、極力優しい顔で応対しようと努め……失敗して恐ろしい笑顔を浮かべて僕に問いかけてくる。
「僕は、やはり旗頭でなければならないのか?」
ただ、もうその顔に慣れている僕は、特に言及することなく胸の内にある疑問を告げる。そして、その様子に、ハーグはサッと辺りを見回す。
あぁ、確かに、他の奴に聞かれるわけにはいかないだろうな。
旗頭たる僕のこんな言葉が他の者に聞かれて、広まってしまえば、士気の低下に繋がりかねない。
周りに人が居ないことを確認したハーグは、それでも声をひそめて話しかける。
「ロッダ様は、我々の希望です。あなた様以外が旗頭などあり得ない」
「……僕は要らない子供だったはずなんだがな」
そう、そのはずだ。僕は、両親の顔も、兄の顔も知らない。知っているのは、貧しくも明るい町と、そこで必死に僕を育ててくれたマリー姉だけ。
「要らないなどということはあり得ません。我らは、皆、あなた様を必要としています」
「……そうか」
双子の忌み子。それが、生まれたばかりの僕につけられた呼び名だったらしい。忌み子を嫌った両親は、僕を捨てた。それを拾ってくれたのが、マリー姉、マリー・フィズだった。
マリー姉は、僕にアーク・フィズという名前をくれた。僕を優しく、厳しく、育ててくれた。とても、暖かい心を教えてくれた。
しかし、そんなマリー姉は、今は居ない。レジスタンスが立ち上がる前日、マリー姉はミルテナ帝国の騎士に殺された。そして、それをきっかけに、僕はレジスタンスの旗頭となり、名前もサナフ教国に伝わる偉大なる名前とやらに変えさせられた。
ただ、僕はマリー姉の死が、レジスタンスの誰かが手引きしたものだと思っている。僕を、殺された教皇の唯一の血族である僕を、レジスタンスに引き込むため、誰かが、『反抗の意思を持つ凶悪な人間』としてマリー姉の名前を挙げたのだと思っている。最初は分からなかったが、徐々に分かってきたこのレジスタンスという組織の内実を知れば知るほど、僕は、その疑いを強めていった。
「にゃあ」
「もう向こうは終わったのか?」
「あぁ、タロが頑張ってくれた。あとはお前達だけだ」
僕を旗頭にと求める者は、信用できない。僕が信用できるのは、ずっと昔からの知り合いであるリリナくらいのものだろう。
迎えに来た猫とバルディスに従いながら、僕はそう考える。
ただ……。
もしかしたら、バルディス達は、信用できるのかもな。
明らかに外部の人間であるバルディス達。しかも、猫に至っては、人間の陰謀に関わっているなどとは思えない。目的が何であれ、もしかしたら、僕の助けになってくれるかもしれない。
マリー姉。僕は、国なんてどうでもいいけど、復讐のために戦うよ。
力のない僕には、何もできない。力をつけるにも時間はない。それならば、力を持つ者を引き入れれば良い。
後で、リリナにも相談しよう。
リリナは、駆け引きは苦手だが、相談相手としてはこれ以上なく頼もしい。
新たに見つけた光を掴み取るべく、僕は強い決意を胸に、歩くのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
記念すべき第百話っ!
と思っていたら、そういえば、最初が第零話にしていたから、今百一話目だと気づいた今日この頃……。
そして、感想ももらえてとても嬉しいです!
あとは……今回が作戦の始動だと言っていたのに、あまりそれっぽくなってない?
作戦が始動していることは間違いないんですけどね。
ロッダの背景をどうしても入れたくて、ここ以外だと入れにくいかなぁってことで、今回はこんな話になりました。
うーん、タイトル変えるべきだったかなぁ?
変えるとしたら、『引っ越し大作戦(一)』から変えなきゃいけない気がします。
とりあえずは、このままにしておいて、後になっても引きずるようだったら変えることにしますね。
それでは、また!
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