我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第二章 反撃のサナフ教国

第百一話 引っ越し大作戦(四)

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 レジスタンス達の大移動は順調に進んだ。我輩が、何度か転移を行使したことで、三つのアジトのうち二つはすでに空っぽだ。最後はロッダが残っている少人数のアジトのみ。
 そう思って、バルディスと一緒にそのアジトへ向かってみると、ロッダは何やら辛そうにしていた。


 む? これは……我輩のチャーミングなボディで癒すべきなのだっ。


 ひとまず転移をしてしまえば、我輩、ロッダにスリスリしてみようと思い、急ぎ足で全員を集めてもらう。


「これで全員か?」

「あぁ、そうだ」


 バルディスの言葉にロッダが答え、バルディスは我輩を見てうなずく。


 うむ、『転移』なのだな?


「にゃっ(ここに居る全員、ルーグ砂漠へ『転移』なのだっ)」


 サポートシステムに対してそう告げると、体から魔力が抜けていくのを感じ、景色が変わる。殺風景な室内から、空気が歪んで見えるほどに暑い砂漠の風景へと。


「……暑いな」


 太陽の光を遮っていた室内から、いきなり砂漠に飛んで、ロッダは空を仰ぎ見る。


「あっちに土魔法が使える奴らを集めてドームを作ってる。中は、うちのラーミアが水魔法で涼しくしてくれているから、快適だぞ」

「そうか、それは助かる」


 ロッダは無表情ながらもそう言い、一目散にそちらへと向かおうとする。しかし……。


「貴様、ロッダ様に馴れ馴れしいぞっ」


 一際大柄で厳つい顔立ちの大男が、バルディスへと抗議する。ただ、大男だからといってバルディスが怯むことはない。


「それがどうした? 別に馴れ馴れしくとも問題はないだろう?」


 飄々としてそう言ったバルディスに、大男はピキピキと青筋を浮かべる。


「ロッダ様は高貴なお方! 貴様ごとき下賤の輩が馴れ馴れしく話して良いお方ではないっ!」


 大男がそう怒鳴ると、ロッダはまた、辛そうな顔になる。しかし、それに大男もバルディスも気づかない。


「そうかそうか。だったら、本人に聞くことにするさ。俺にどんな対応をしてほしいのかをな」

「きっ、貴様ぁっ、ロッダ様に話しかけるなど言語道断! やはり、お前のような者は信用「やめろ、ハーグ隊長」っ、はっ!」


 『信用ならない』とでも言いかけたであろうハーグと呼ばれた大男は、ロッダの言葉にすぐさま反応する。


「バルディスはそのままでいい」

「し、しかし、ロッダ様っ「僕自身は、偉くも何ともないんだ」そ、そのようなことは……」

「なら、このままで話させてもらうぞ。あぁ、ラーミアやディアム、タロも同様で良いか?」

「なっ、思い上がるのも「それで良い」ロッダ様!?」

「ハーグ隊長、僕が、良いと言ったんだ」

「…………はっ、承知、いたしました」


 ことごとく言葉を遮られるハーグは、ロッダの意見に心底不満のようだったが、それでもロッダに強く言われれば反論できないようだった。幼子が大男を言い負かす様は、随分とおかしなものだったが、ハーグはロッダに逆らえないことが良く分かった。
 そして、我輩は、ついでかもしれないが、バルディスが我輩のことも同様にしても良いかどうかを聞いてくれたことが嬉しくて、暑いのをものともせずにバルディスにすり寄る。


「ん? どうした? タロ」


 すり寄れば、バルディスは嫌な顔もせずに我輩を抱き上げてくれる。


「にゃにゃ(我輩のことも考えてくれて、ありがとうなのだ)」

「あぁ、それは当たり前だろ? 仲間なんだから」

「にゃあ。にゃー(その心が嬉しいのだ。ありがとうなのだ)」

「……そうか。なら、どういたしましてだな」


 そう言いながら、バルディスは砂のドームに向けて歩き出す。こうして、レジスタンスの大移動は昼に終わったのだった。そして、それが多くの命を救うことになったのだということは、翌朝、元のアジトが襲撃されたという情報により、判明することになった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


はい、これで『引っ越し大作戦』は終わりです。

あまり引っ越しっていう感じが出てないような気もしますが……『レジスタンス大移動』とかの方がタイトルとして良かったかもしれませんね。

そして、ハーグが結構鬱陶しい性格にっ。

いや、元からそのつもりではありましたけどね。

あと名前だけ出ていて、登場していないのは、ジルク副隊長ですかね。

もうちょっとしたら出しますので、よろしくお願いします。

それでは、また!
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