我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第二章 反撃のサナフ教国

第百二話 窮状を伝える者(一)

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 ロッダとハーグ達をルーグ砂漠へ連れて来たばかりの頃、土魔法使いが交代制でドームを維持し、水魔法使いが周囲の温度を下げる役割を果たしたことで、ひとまずの環境は整った。後は、我輩が『幻術』でこのドーム群を見えなくすれば良いだけとなった。


「タロ、『幻術』を頼めるか?」

「にゃっ(もちろんなのだっ)」


 サポートシステムに話しかけ、我輩はすぐさま幻術を行使する。ただし、今回はキングコッコーの時とは少し違う『幻術』だ。
 キングコッコーの時は、キングコッコーそのものが見えなくなるように本体へと『幻術』をかけたのだが、それをしてしまうと中に居る人間がドームから出た途端、どこにドームがあるのか分からなくなってしまう。それを避けるべく、我輩、『幻術』を結界として、ドーム群を覆うようにかけることにする。結界の外に出ると『幻術』でドームが見えなくなるものの、結界の内側ならばドームが見えるといった仕様だ。

 そうして『幻術』をかけ終え、我輩達はレジスタンスの幹部が集まる一際大きなドームへと向かう。


「お疲れ様、まさか、こんなに早くに終わるとは思っていなかったわ」

「あぁ、俺ももう少しかかるかと思っていたが、案外統率されていたからな。手間がなくて良かった」


 出迎えてくれたリリナとそんな言葉を交わしていると、中からディアムが顔を出す。


「これから、会議。今後の方針、決める」

「あら、そうだったわね。さぁ、バルディスもタロちゃんも行くわよ」


 タ、タロちゃん?


 我輩、初めて呼ばれるその呼び方に困惑するものの、誰一人、それを気にした様子はない。……いや、バルディスだけは、我輩から視線を逸らして肩を震わせていたが……。


「……にゃあ(……ちゃんづけはやめてほしいのだ)」


 そう密かに抗議するものの、それはバルディスの肩の震えを大きくするのみで、誰一人、その様子に気づいてくれない。

 そうして、仕方ないと諦めた我輩は、会議の場へとバルディス達とともに赴いた。


「これで揃ったわよ」

「なっ、なぜこんなどこの馬の骨ともしれぬ奴らがここに居る! これは、我らの運命を決める会議なのですぞっ!」

「僕が呼んだ」

「ロッダ様!?」


 入って早々に、ハーグが喚き散らすが、それをロッダが冷静にたしなめる。


「ふむ、呼ばれておいてなんだが、本当に俺達はここに居て良いのか?」

「良いわけが「良い」ロッダ様!? 何故ですか!」


 自分の意見をことごとくロッダに却下され、ハーグは若干涙目だ。しかし、厳つい大男が涙目になっても可愛くも何ともない。


「まぁまぁ、落ち着いてくださいな、隊長。ロッダ様がお決めになったんなら、それに従うんが僕らの仕事でしょ?」


 と、ハーグが怒鳴っている様子に新たに割って入ったのは、ヒョロッとした優男。薄い唇に笑みを浮かべて独特なイントネーションでたしなめるその姿は、どうもハーグの様子を笑っているようにしか見えない。


「ぐぬぬぬぬっ」

「ほぉら、隊長。そんなに怖い顔してたら、ただでさえ怖い顔が凶器じみたもんになっちゃいますよ?」

「ふんっ、よけいなお世話だっ」

「さて、ロッダ様。この通り、僕が隊長を抑えておきますんで、心置きなくそこの人達の紹介をお願いします」


 そうして、我輩達の自己紹介が簡潔にすまされ、ついでに、あの優男がジルク副隊長だということまで判明したのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


よっし、ジルク副隊長が今回出せました!

わーパチパチパチ。

そして、最近は(一)とかの番号がつくタイトルが多いような……?

すぐにまとまる話ばかりではないから、仕方ないんですけどね。

それでは、また!
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