103 / 574
第二章 反撃のサナフ教国
第百二話 窮状を伝える者(一)
しおりを挟む
ロッダとハーグ達をルーグ砂漠へ連れて来たばかりの頃、土魔法使いが交代制でドームを維持し、水魔法使いが周囲の温度を下げる役割を果たしたことで、ひとまずの環境は整った。後は、我輩が『幻術』でこのドーム群を見えなくすれば良いだけとなった。
「タロ、『幻術』を頼めるか?」
「にゃっ(もちろんなのだっ)」
サポートシステムに話しかけ、我輩はすぐさま幻術を行使する。ただし、今回はキングコッコーの時とは少し違う『幻術』だ。
キングコッコーの時は、キングコッコーそのものが見えなくなるように本体へと『幻術』をかけたのだが、それをしてしまうと中に居る人間がドームから出た途端、どこにドームがあるのか分からなくなってしまう。それを避けるべく、我輩、『幻術』を結界として、ドーム群を覆うようにかけることにする。結界の外に出ると『幻術』でドームが見えなくなるものの、結界の内側ならばドームが見えるといった仕様だ。
そうして『幻術』をかけ終え、我輩達はレジスタンスの幹部が集まる一際大きなドームへと向かう。
「お疲れ様、まさか、こんなに早くに終わるとは思っていなかったわ」
「あぁ、俺ももう少しかかるかと思っていたが、案外統率されていたからな。手間がなくて良かった」
出迎えてくれたリリナとそんな言葉を交わしていると、中からディアムが顔を出す。
「これから、会議。今後の方針、決める」
「あら、そうだったわね。さぁ、バルディスもタロちゃんも行くわよ」
タ、タロちゃん?
我輩、初めて呼ばれるその呼び方に困惑するものの、誰一人、それを気にした様子はない。……いや、バルディスだけは、我輩から視線を逸らして肩を震わせていたが……。
「……にゃあ(……ちゃんづけはやめてほしいのだ)」
そう密かに抗議するものの、それはバルディスの肩の震えを大きくするのみで、誰一人、その様子に気づいてくれない。
そうして、仕方ないと諦めた我輩は、会議の場へとバルディス達とともに赴いた。
「これで揃ったわよ」
「なっ、なぜこんなどこの馬の骨ともしれぬ奴らがここに居る! これは、我らの運命を決める会議なのですぞっ!」
「僕が呼んだ」
「ロッダ様!?」
入って早々に、ハーグが喚き散らすが、それをロッダが冷静にたしなめる。
「ふむ、呼ばれておいてなんだが、本当に俺達はここに居て良いのか?」
「良いわけが「良い」ロッダ様!? 何故ですか!」
自分の意見をことごとくロッダに却下され、ハーグは若干涙目だ。しかし、厳つい大男が涙目になっても可愛くも何ともない。
「まぁまぁ、落ち着いてくださいな、隊長。ロッダ様がお決めになったんなら、それに従うんが僕らの仕事でしょ?」
と、ハーグが怒鳴っている様子に新たに割って入ったのは、ヒョロッとした優男。薄い唇に笑みを浮かべて独特なイントネーションでたしなめるその姿は、どうもハーグの様子を笑っているようにしか見えない。
「ぐぬぬぬぬっ」
「ほぉら、隊長。そんなに怖い顔してたら、ただでさえ怖い顔が凶器じみたもんになっちゃいますよ?」
「ふんっ、よけいなお世話だっ」
「さて、ロッダ様。この通り、僕が隊長を抑えておきますんで、心置きなくそこの人達の紹介をお願いします」
そうして、我輩達の自己紹介が簡潔にすまされ、ついでに、あの優男がジルク副隊長だということまで判明したのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
よっし、ジルク副隊長が今回出せました!
わーパチパチパチ。
そして、最近は(一)とかの番号がつくタイトルが多いような……?
すぐにまとまる話ばかりではないから、仕方ないんですけどね。
それでは、また!
「タロ、『幻術』を頼めるか?」
「にゃっ(もちろんなのだっ)」
サポートシステムに話しかけ、我輩はすぐさま幻術を行使する。ただし、今回はキングコッコーの時とは少し違う『幻術』だ。
キングコッコーの時は、キングコッコーそのものが見えなくなるように本体へと『幻術』をかけたのだが、それをしてしまうと中に居る人間がドームから出た途端、どこにドームがあるのか分からなくなってしまう。それを避けるべく、我輩、『幻術』を結界として、ドーム群を覆うようにかけることにする。結界の外に出ると『幻術』でドームが見えなくなるものの、結界の内側ならばドームが見えるといった仕様だ。
そうして『幻術』をかけ終え、我輩達はレジスタンスの幹部が集まる一際大きなドームへと向かう。
「お疲れ様、まさか、こんなに早くに終わるとは思っていなかったわ」
「あぁ、俺ももう少しかかるかと思っていたが、案外統率されていたからな。手間がなくて良かった」
出迎えてくれたリリナとそんな言葉を交わしていると、中からディアムが顔を出す。
「これから、会議。今後の方針、決める」
「あら、そうだったわね。さぁ、バルディスもタロちゃんも行くわよ」
タ、タロちゃん?
我輩、初めて呼ばれるその呼び方に困惑するものの、誰一人、それを気にした様子はない。……いや、バルディスだけは、我輩から視線を逸らして肩を震わせていたが……。
「……にゃあ(……ちゃんづけはやめてほしいのだ)」
そう密かに抗議するものの、それはバルディスの肩の震えを大きくするのみで、誰一人、その様子に気づいてくれない。
そうして、仕方ないと諦めた我輩は、会議の場へとバルディス達とともに赴いた。
「これで揃ったわよ」
「なっ、なぜこんなどこの馬の骨ともしれぬ奴らがここに居る! これは、我らの運命を決める会議なのですぞっ!」
「僕が呼んだ」
「ロッダ様!?」
入って早々に、ハーグが喚き散らすが、それをロッダが冷静にたしなめる。
「ふむ、呼ばれておいてなんだが、本当に俺達はここに居て良いのか?」
「良いわけが「良い」ロッダ様!? 何故ですか!」
自分の意見をことごとくロッダに却下され、ハーグは若干涙目だ。しかし、厳つい大男が涙目になっても可愛くも何ともない。
「まぁまぁ、落ち着いてくださいな、隊長。ロッダ様がお決めになったんなら、それに従うんが僕らの仕事でしょ?」
と、ハーグが怒鳴っている様子に新たに割って入ったのは、ヒョロッとした優男。薄い唇に笑みを浮かべて独特なイントネーションでたしなめるその姿は、どうもハーグの様子を笑っているようにしか見えない。
「ぐぬぬぬぬっ」
「ほぉら、隊長。そんなに怖い顔してたら、ただでさえ怖い顔が凶器じみたもんになっちゃいますよ?」
「ふんっ、よけいなお世話だっ」
「さて、ロッダ様。この通り、僕が隊長を抑えておきますんで、心置きなくそこの人達の紹介をお願いします」
そうして、我輩達の自己紹介が簡潔にすまされ、ついでに、あの優男がジルク副隊長だということまで判明したのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
よっし、ジルク副隊長が今回出せました!
わーパチパチパチ。
そして、最近は(一)とかの番号がつくタイトルが多いような……?
すぐにまとまる話ばかりではないから、仕方ないんですけどね。
それでは、また!
10
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる