我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第二章 反撃のサナフ教国

第百四話 タプンタプンは辛いよ

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 サンドホースを繋いだ馬車は、ようやく目的地に辿り着きました。長い砂漠の旅も終わりだと思えば、ホッとします。
 そんな辛い旅ではありましたが、辛いだけあって、私は自分のタプンタプンな腹回りが少しだけスリムになったような気がして、ニンマリとします。やはり、痩せるということは良いことです。


「おとーしゃん、フカフカーっ」


 アルトルム王国の門を潜り、今までとは違い、ゆっくりと馬車を走らせていると、娘のソフィアが私の腹に飛び込んでキャッキャと笑いました。


「おぉ、ソフィア……そんなにお父さんの腹はフカフカか?」

「うんっ、フカフカー」


 痩せたと思った直後の娘からの容赦ない精神攻撃に、私、ちょびっと涙が出そうです。


「そうね。お父さんはずっとフカフカだもんねー」

「ねー」


 しかも、愛する妻、ニーナからも追撃され、私はとうとう、直視したくない現実を見ることとなります。


「あの、ニーナ? 私、砂漠越えで痩せたりとかは……」

「あら? 運動もしていませんし、食料はバルディスさん達にいただいたものが日持ちして困りませんでしたし、特に変わる要素はありませんよ?」


 …………お願いします。私の名前はデイブなので、真ん中の文字を取って罵倒はしないでください。


 何となくそんな祈りを捧げながら、私は完全に意気消沈して馬車を走らせました。





 アルトルム王国の王城に辿り着いたのは、その日の夕方になってからでした。宿屋の手配や、同じ行商人仲間への挨拶、食料の買い込みなどを先に行っていると、どうしてもそんな時間になってしまったのです。ニーナとソフィアは宿屋に残し、私は単身、王城の前に居ました。


「ここはアルトルム王国王城、ゼペル城である。身分と用件の提示を願う」


 二人居る門番のうちの一人にそう言われ、私はここまで歩いて来たことによって流れる汗を拭きながら答える。


「私の名前はデイブ・デッカー。デッカー商会の会長です。用件は、サナフ教国における現状を伝えるための国王への謁見です。どうか、お取り次ぎをお願いします」

「ふむ、予定にはないな。とりあえず、今日、謁見が叶うかは分からぬが、取り次ごう。おいっ、客人を案内しろ」

「はっ!」


 元々、今日すぐに謁見できるとは思っていないものの、私の身分ならば無下には扱われないことくらいは分かっていた。だから、私は案内してくれる門番に、タプンタプンと腹を揺らして着いて行きます。


 ちょっ、息が苦しいので、もう少しゆっくり……え? それなりにゆっくり歩いてるつもりだった? これは失敬、ですが、もう少しだけ、ゆったりと歩いていただけると助かります。


 そんなやり取りをしながら私は客間へと通されます。


 ううむ、それにしても、何やら忙しそうですね。何かあったのでしょうか?


 この時、町にドMな人間がはびこっていて、それによって起こる問題がアルトルム王国国王を悩ませていたのだが、私がそれを知るのはもう少し後のこと。


「デイブ・デッカー殿。陛下より謁見の許可が降りました。これよりご案内いたします」


 ようやく息が落ち着き、出された紅茶や茶菓子に舌鼓を打っていたところ、ビシッと格好を整えた執事が現れ、私に声をかけてきました。


「分かりました。案内をお願いします」


 私は、物理的に重い腰を上げて、そうお願いするのでした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


はい、今回は、なんとなんと、デイブ視点!

デイブ、真ん中の文字を抜いてはいけないデイブ。

再登場ですっ。

そして、読み返していたら、前の投稿の部分で何やら娘のソフィアの名前が一部間違えていたので修正しました。

デイブは覚えやすいんですけどねー。

さて、次回も引き続きデイブ視点です。

それでは、また!
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