我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第二章 反撃のサナフ教国

第百五話 謁見

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 長い廊下を通り抜け、辿り着いた謁見の間。私は、部屋の中央まで来ると、そこでひざまづく。……ちょっと足がプルプルするのは、この際無視です。


「陛下におかれましては、ご機嫌麗しく」

「ふむ、デイブ・デッカー。かの有名なデッカー商会の会長が何用だ?」


 ゼペル城の主、セルバス・フォン・アルトルム。 栗色の癖っ毛に、翡翠の瞳、健康的な褐色の肌を持つ精悍な王。彼を前に、私は恐縮しながらも、あの約束を忘れることはない。バルディス達との、大切な約束を。


「はっ、この度は、元サナフ教国の現状をお伝えするとともに、我が恩人よりの伝言を届けようと参った次第であります」

「サナフの現状については分かるが、恩人の伝言、とな?」


 恩人であるバルディス達からの伝言は、さすがに予想外なのでしょう。陛下は表情を崩すことはしないものの、訝しげでした。


「はい。 『猫を連れた三人の男女がサナフへ向かった』と伝えれば分かると聞きましたが」

「猫に、三人の男女……」


 私の伝言を聞いた陛下は、どこか心当たりがある様子。そして、側に控えていた白髪に蒼の瞳、ヤギのような白い髭の老人が陛下に耳打ちをすると、陛下は大きくうなずく。


「もしや……その者達は、男二人に女一人、紳士服を着た白猫が一匹という構成だったか?」

「はいっ、そうでございます。バルディスさんとディアムさん、ラーミアさんに猫のタロでした」


 そう名前を出すと、陛下は目を輝かせる。


「おぉっ、そうかそうかっ! 彼らは息災であったか?」

「はい。私達を追っていたジャイアントスコーピオンをいとも容易く倒してくださいました」


 そう、いとも容易く倒して、私達の窮地を救ってくれたバルディス達には感謝でいっぱいです。ただ…………どうか、そろそろ膝が限界だということに気づいていただきたい。この体勢はとても辛いのです。

 そう強く念じていると、その念が通じたのか、陛下からようやく『楽にせよ』とのお言葉をいただける。……けして、けっして、私の声が震えていたからとか、顔が真っ赤になって汗だくになりはじめていたからとかいう理由ではないと思いたい。


「そうか、彼らはサナフに……では、その元サナフ教国の現状の報告を願えるか?」

「はっ、もちろんでございますっ」


 そうして、私は陛下へと元サナフ教国の窮状をお伝えするのでした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


デイブの体型で果たしてまともにひざまづけるのだろうか、という疑問はあるものの、きっと、何とかひざまづけたんでしょう。

プルプル震えて、汗だくになって、随分可哀想な状態にはなったみたいですが……。

私の王への謁見のイメージがひざまづかなきゃならないっていうのが不味かったかもしれませんが、当分、デイブがひざまづく事態はないはず!

それまでに、ダイエットが必要ですかねぇ。

それでは、また!
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