我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第二章 反撃のサナフ教国

第百十二話 赤い夜

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 レジスタンスのメンバーのルーグ砂漠への移動が完了し、セイクリア教国へ使者を向かわせるということで合意を得たその日の夜、事件は起こった。


「おいっ、見ろっ! 国で煙が上がってるぞっ!」


 元サナフ教国の中に家がある者は、一度そこに転移で帰しているため、このドーム群で休む人間は少ないものの、そこそこの人数は居る。恐らく、異常に気づいたのは、外で見張りをしていた誰かだろう。

 そんな声に叩き起こされた私は、ロッダが側で身を起こすの気配を感じ、外を確認してくるから待つよう告げる。
 タロちゃんのおかげで砂漠の中でもそれなりに快適な環境は整っているものの、やはり夜は寒い。見張りをいつでも交代できるように枕元に置いていたコートを羽織ると、手元も見えない暗がりの中、素早くドームから出る。

 最初に感じたのは、どこか煤けたような臭い。そして、夜に似つかわしくない、空を染める赤い光。


「火事!?」


 『国が燃えている』と、認識するには、少し時間がかかったが、それを理解すれば、自ずと頭が働く。


「まさか、誰かがしびれを切らして……?」


 もしかしたら、別れたレジスタンスの面々が、早まった行動を起こしたのかもしれない。そう思えば、いくら駆け引きが苦手な私でもそれがどんな結末を生むのか、理解できた。


「現状は、今、ディアムに探らせに行かせた。まだ結論を出すのは早計だぞ」


 半ばパニックになった頭で考えていると、いつの間にか、私の隣にはバルディスが立っていた。


「でもっ、もしも私達の仲間が早まったとしたらっ」

「落ち着いてください。その可能性もありますが、騎士達の攻撃の可能性もあります。今は、情報収集が先です」

「そうだの。リリナはまず、この混乱を収めるのを手伝うことからしてもらわねばの」


 ラーミアやノルじいにそう言われて、私はようやく自分の役目を思い出す。


 そうだ。今は、この混乱を収めなきゃならない。


「分かった。とりあえず、騒いでる奴らを収めてくる。ノルじいはロッダ様を頼む」


 男の声に戻して応じれば、ノルじいは大きくうなずく。

 ここからは、女の身では舐められる。男として活動した方が効率的だ。


「おらっ、静かにしやがれっ。騎士どもに見つかりてぇのかっ」


 手早く着替えて、男、リリナになると、私……いや、俺は次々に騒いでいる連中をドームに押し込めていく。

 ただ……。


「あっ? そういやぁ、ジルクの奴はどこ行ったんだ?」


 今日、ここにはジルク副隊長が待機していたはずだ。しかし、一緒にこの混乱を収めるべき立場のそいつが、今は見当たらない。……何か、嫌な予感がした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


本日、タロ不在回です。

まぁ、前回までが散々タロ視点だったし、今回のリリナ視点はどうしても外せなかったしで、仕方ないんですけどね。

それでは、また!
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