我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第二章 反撃のサナフ教国

第百十四話 密会

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 できるだけ他の騎士達の目に留まらないよう、俺はそっとジルクらしき人物を追いかける。そして、どんどん路地裏の奥に入り込んでいくそいつに、不安を覚え始めた頃、そいつはようやく立ち止まる。
 俺は、すぐに声をかけようとしたが、その前に反対側から誰かが来るのを見て、曲がり角に身を隠す。


「さて、首尾はどうだ?」

「んー残念ながら、妙な横やりが入って、今はアジトが別の場所に移ってますねぇ」


 最初に聞こえた声に覚えはないが、もう一つの声は、明らかにジルクのもので、俺は頭の中で警鐘が鳴るのを感じる。


 誰と、話してんだ?


 アジトを移ったことを知らない仲間は居ないはずだ。そうとなれば、相手はレジスタンスの仲間ではない誰か。敵か、味方か、どちらかも分からない存在。


「そうか。なら、その場所を教えろ。無事に根絶やしにできた暁には、相応の役職を用意してやる」


 そう、知らない声が言ったのを聞いて、俺は、今がどんなに危険な状況か理解する。ジルクが、敵側の人間だったことに、気づいてしまう。


「場所といっても、目印がないんで難しいんですがね……」

「目印がない?」

「えぇ、なんと連中、ルーグ砂漠に拠点を作って、しかも幻術でそれを隠すなんてことをしましてですねぇ」

「……ならば、方角を教えろ。そして、その幻術を発動している者を殺してこい」

「ははっ、そりゃあ無茶ってもんですよ。相手は、そちらの大将を倒した竜ですよ?」


 おどけた様子で話すジルクは、どんどん情報を敵に流していく。そして、俺は気づく。このままでは、あの作戦も、セイクリア教国に助けを求めに行くという作戦も、漏れてしまうのではないかと。


 力じゃ敵わねぇ。人数も、向こうが上。今の俺がどうにかできることじゃねぇな。


 ジルクは、あんなのでも元サナフ教国の騎士団の副隊長だ。ただの庶民でしかない俺に、どうこうできる相手ではない。となると、今は、ジルクの裏切りを仲間に知らせるため、ここから逃げなければならないわけだ。

 ソロリ、ソロリと、俺は後退する。ここで気づかれれば、きっと俺の命はないだろう。


「……ならば、その竜を誘き出せ。何としても討伐してみせる」

「了解っ」


 明るく告げるジルクの声に恐怖を抱きながら、俺は、そっと下がり続ける。しかし……。


 ゴンッ。


「……」

「……」


 運の悪いことに、俺は、ゴミ箱を蹴飛ばしてしまったのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


さぁっ、リリナの運命やいかにっ!!

本当は、タロ視点も書けたらなぁと思っていましたが、思った以上に長い文章になったので、タロの登場は次回になります。

それでは、また!
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