我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第二章 反撃のサナフ教国

第百二十話 裏切り者は?

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 タロの呑気な声に、俺は戦闘体勢を解く。


「……?」


 そんな俺の様子に、ジルクは怪訝な表情をしていたが、それよりもタロのことが先だ。


《今、どこに居る?》

「にゃあ(ここなのだ)」

「「「タロっ」」」

「「猫っ」」


 念話で問いかければ、後ろから声がする。タロは、どうやら無事に帰ってきたらしかった。

 しかし…………タロの声が聞こえた瞬間、ギョッとしたような表情をしたジルクが、少し気にかかる。その表情はすぐにいつもの飄々とした笑顔に変わったものの、あれは絶対に気のせいなどではない。先程まで、タロ達の救出に反対されていたこともあり、俺はジルクへの警戒を強める。


「随分と遅かったから、心配してたんだ。無事で良かった」

「にゃ? にゃあ(む? それはすまないことをしたのだ)」


 ペタンと耳を横にして鳴くタロは、もう充分に反省しているようで、説教する必要はなさそうだ。


「まったく……どこに居たのですか?」


 そうラーミアが問いかけると、タロは説明のために口を開こうとしたが、その前に、遮る者が居た。


「待ってくれっ。リリナは、リリナは一緒じゃないのか?」


 悲痛な声で、ロッダが叫ぶ。確かに、タロの側にはリリナの姿はない。ただ……。


「にゃっ(リリナなら、ドームで寝かせてきたのだ)」


 リリナと脱出したというタロの言葉を聞いていた俺は、そんなタロの言葉に納得する。


「リリナは無事だそうだ」

「本当かっ! なら、今、どこに居るんだっ?」


 心配そうに尋ねるロッダに、俺は少し困る。ジルクが信用できない以上、あまり情報を話したくはない。

 チラリとラーミアに視線を送れば、ラーミアは怪訝な表情をしながらもどうにか俺の意思を汲み取ろうと口を開く。


「タロのことですから、リリナは今、安全な場所で休憩しているのではないですか?」

「あぁ、そうだな。タロの説明じゃあ、場所が良く分からないが、安全ではあるらしいぞ」

「にゃにゃ? (リリナはドームの中なのだが?)」


 タロにはさすがに俺の真意は伝わっていないが、ラーミアのおかげで少しは時間稼ぎになる。


「なら、僕にその曖昧な場所を教えてくださいよ。もしかしたら、敵の情報を持ってるかもしれませんしね」

「ふむ、そうだの。ジルクならばリリナ一人くらい守れるだろうしの。バルディス、その猫から詳しい情報を引き出してはくれんかの」


 ……これは、ジルクだけじゃなく、ノルディも怪しい、か……。


 ジルクに同調したノルディを見て、俺は、そう考えを改める。もしも、二人が潔白だったとしても、今の段階では判断できそうにない。つまりは、どうにかして、リリナの居場所を隠す必要があるということだ。


「にゃーにゃ? (バルディス、さっきから、どうしてリリナのことを教えないのだ?)」

「あぁ、そうか……周りに建物……それ以外、何かないか?」《この中に裏切り者が居るかもしれないんだ。もし、そいつにリリナの居場所が知れたら、リリナが危険かもしれない》

「にゃっ(なんとっ)」

「後は、煤臭い? 火事のせいか?」《リリナの姿を今、幻術で隠すことはできるか?》

「……にゃ(……やってみるのだ)」

「……マウマウが近くで巣を作ってるって……そうか、それ以外は分からないんだな」《頼む》

「にゃ(できたのだ)」


 念話を駆使してタロと会話を成立させた俺は、なに食わぬ顔で嘘の情報を流し、相手の様子を見る。

 ジルクは表情を崩さず、ノルディはもらった情報に頭を抱え、ロッダはオロオロとしている。この中で一番嘘臭いのは誰かと聞かれれば、迷いなくジルクと答えるだろうが、まだ真相は分からない。


「本当に、それだけしか情報がないのかの?」


 そう言われて、俺はタロに何か言うように視線を投げる。


「にゃあにゃ? (では、『リリナのバー』の近くということにしたらどうだろうか?)」

「どうやら、『リリナのバー』の近くらしい」


 タロの提案に、俺は即座に乗った。すると、ジルクがほんの少しだが、喜んだような気がした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


バルディスは上手く裏切り者を炙り出せるのでしょうかっ!

とっても、駆け引きが行われてます。

いやぁ、私、駆け引きは苦手なんですよねー。

上手く書けるかどうか、ちょっと心配ですが、頑張って書いていきますね。

それでは、また!
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