我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第二章 反撃のサナフ教国

第百二十一話 互いの事情(一)

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 ひとまず、ジルクはリリナを捜しに街へ、俺達はそれぞれのドームに待機となり、タロに慌ててリリナは俺達のドームに居るのかの確認を取った後、戻ってきた。そして、ドームに入るや否や、俺は『防音結界』を張る。


「タロ。リリナにかけてる『幻術』を解いてくれ」

「にゃあ(分かったのだ)」


 俺の言葉に、ラーミアとディアムは何かを感じ取ったのか、黙ってことの次第を眺める。そして、『幻術』が解かれて現れたのは……。


「うぅ……」


 仰向けに倒れて呻くだけのリリナ(男性バージョン)だった。


「……タロ。リリナは怪我でもしているのか?」

「にゃ。にゃあ(怪我はしていないのだ。ただ、なぜか動けないみたいなのだ)」


 怪我をしていたら治せたはずだと思いながら聞いてみると、やはり怪我はないらしい。となると……。


「麻痺していますわね」


 ラーミアがリリナの側に座り込み、様子を確認してそう告げてくる。きっと、リリナは麻痺毒でも嗅がされたのだろう。


「そうなるか。ラーミア、頼めるか?」

「はい。この後、しっかり説明をしてもらいますからね」


 毒であれば、ラーミアの出番だ。毒の種類に精通しているラーミアならば、単純な麻痺毒の解毒くらいは容易いはずだ。薬そのものを持っていなくとも、調合するだけの材料は常に持ち歩いているらしいから、よほど特殊な毒……あの、アルトルム王国を襲ったマリス毒のようなものでない限り問題はないだろう。


「リリナ。これを飲んでください。解毒薬です」

「……あ」


 思うように口が動かないリリナは、それでもラーミアの言葉に従って素直に口を開く。そこに、ラーミアは緑色のトロリとした液体入りの瓶を持っていき、中身を口の中にゆっくりと流し込んでいく。


「んぐっ、うぐっ……ぐぅぅん」


 飲む度にリリナの表情が歪むのは、きっと、薬がかなり苦いせいに違いない。昔、俺もラーミアの解毒薬に世話になったことがあるが、その時の苦味はもはやトラウマものだ。

 そっとリリナに同情しながら眺めていると、どうにかその苦行は終わったらしい。リリナの目は、水を求めて切羽詰まっていたので、すぐにコップに水を満たして飲ませてやる。


「んくっ、んくっ、んくっ……はぁっ」


 まだ言葉は話せないようではあったが、リリナの目は感謝を伝えてきていた。やはり、よっぽど苦かったのだろう。俺も、ラーミアの解毒薬の世話にならないよう気をつけなければなるまい。


「五分程で麻痺はなくなるはずです。ですので、その間に状況の説明を願えますか?」

「あぁ、そうだな」


 真剣な表情で尋ねてくるラーミアに、俺は、先程のタロの説明と、考えている危惧についてを話すのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ラーミア薬店の薬は、普通のものより十倍苦く仕立てております。

一時間くらいは舌が使い物にならなくなるレベルのものですが、効果は抜群っ!

種類も多く取り揃えておりますので、どうぞご贔屓にっ。

……うん、怖くて買いたくないですね。

カプセルとか、錠剤とかで薬を飲める現代は、きっと恵まれてますね。

それでは、また!
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